SESで"やめとけ"と言われる理由
SESで働くことを検討している方の中には、インターネット上で"やめとけ"という意見を目にして不安を感じている方も多いでしょう。SESの働き方には特有の課題があり、これらが"やめとけ"と言われる理由となっています。
SESで"やめとけ"と言われる主な理由として、以下の3つが挙げられます。これらの理由を理解することによって、自分に合った働き方かどうかを判断できるようになります。
- 給与が上がりにくい多重請負構造
- 案件選択の自由度が低い
- 環境や人間関係の変化が激しい
各理由について、詳しく解説していきます。
給与が上がりにくい多重請負構造
SESの給与体系では、多重請負構造が原因で給与が上がりにくい傾向があります。多重請負構造とは、クライアント企業から一次請け企業、二次請け企業、三次請け企業と段階的に案件が委託される仕組みのことです。
各段階で中間マージンが発生するため、下請け企業になるほどエンジニアへの還元率が低くなります。仮にクライアント企業が月額100万円を支払っていても、三次請けのSES企業に所属するエンジニアには50万円から60万円程度しか支払われないケースも珍しくありません。
| 請負の段階 | エンジニアへの還元率 |
|---|---|
| 一次請け(プライム案件) | 70%から80%程度 利益率が高く給与還元も期待できる |
| 二次請け・三次請け | 50%から60%程度 中間マージンが多く還元率が低い |
スキルや経験を積んでも、多重請負構造の下層に位置するSES企業では昇給幅が限定的です。成果を出しても単価交渉が難しく、長期的な給与アップが期待しづらい点が課題となっています。
案件選択の自由度が低い
SESにおける案件選択の自由度は、エンジニアの希望よりも企業側の都合が優先されやすい傾向があります。SES企業はクライアント企業からの依頼に応じて人材を配置する仕組み上、利益確保や人員の数合わせが目的となるケースも存在します。
希望する技術スタックやキャリアプランとは異なる案件にアサインされることも多く、以下のような問題が生じます。
- フロントエンド希望でもバックエンド案件に配置される
- 開発経験を積みたいのにテスト工程ばかり担当させられる
- スキルミスマッチによるモチベーション低下
- 市場価値を高めるチャンスを逃す
案件を断りにくい雰囲気や、エンジニアの希望が後回しにされる企業文化も存在します。やりたい業務に従事できない環境では、キャリア設計がうまくいかず、働く意欲を失ってしまうリスクがあります。
環境や人間関係の変化が激しい
SESで働く場合、プロジェクトごとに常駐先が変わるため、環境や人間関係が頻繁に変化します。案件終了のたびに職場環境が一新され、新しいチームや上司、業務ルールに適応する必要があります。
環境変化による主な課題として、以下の4つが挙げられます。
| 課題 | 詳細 |
|---|---|
| 人間関係の構築 | 毎回ゼロから信頼関係を築く必要がある コミュニケーションコストが高い |
| 業務ルールの習得 | 常駐先ごとに異なる業務フローを覚える 適応期間が頻繁に発生する |
| 孤独感 | 自社の同僚と会う機会が少ない 相談相手が見つかりにくい |
| 精神的負担 | 環境変化のストレスが蓄積する 安定した職場を求める人には不向き |
環境の変化に柔軟に対応できる人にとってはメリットにもなり得ますが、安定した環境で腰を据えて働きたいと考える人にとっては大きなストレスに繋がります。人間関係を一から築く負担や孤独感が、SESで"やめとけ"と言われる理由のひとつとなっています。
SESにおける派遣との違いと見分け方
SESと派遣は似た働き方に見えますが、法律上の契約形態や指揮命令権の所在において明確な違いがあります。この違いを理解していないと、契約内容や労働条件で誤解が生じる可能性があります。
SESと派遣を正しく見分けるために、以下の3つのポイントを押さえておく必要があります。それぞれの違いを理解することによって、自分がどの働き方で契約しているのかを判断できるようになります。
- 指揮命令権の所在で見分ける
- 契約形態の違いで見分ける
- 偽装請負のリスクを理解する
各ポイントについて、詳しく解説していきます。
指揮命令権の所在で見分ける
SESと派遣を見分ける最も重要なポイントは、指揮命令権がどこにあるかという点です。指揮命令権とは、労働者に対して業務指示や命令を行う権限のことであり、この権限の所在によって契約形態が異なります。
| 契約形態 | 指揮命令権 | 業務指示 |
|---|---|---|
| SES(準委任契約) | SES企業にある | SES企業の上司や営業担当から受ける クライアント企業は直接指示できない |
| 派遣契約 | 派遣先企業にある | 派遣先企業の担当者から直接受ける 派遣先の業務命令に従う |
SESエンジニアはクライアント企業のオフィスで常駐して働きますが、業務命令や勤怠管理は所属するSES企業が行います。クライアント企業から直接的な指示を受けた場合、契約違反や偽装請負に該当する可能性があります。
契約形態の違いで見分ける
SESと派遣では、企業間で締結される契約の種類が異なります。契約形態の違いによって、報酬の対象や契約期間の制限も変わってきます。
主な違いとして、以下の4つが挙げられます。
| 項目 | SES | 派遣 |
|---|---|---|
| 契約形態 | 準委任契約 | 労働者派遣契約 |
| 報酬の対象 | 業務の遂行(作業工数) | 労働時間 |
| 成果物 | 完成義務なし | 完成義務なし |
| 契約期間 | 制限なし 長期プロジェクトにも参画可能 |
最長3年 同一事務所・部署での制限あり |
派遣契約では派遣法により、同一の派遣先事業所において最長3年までしか働けない制限があります。一方、SESには契約期間の法律上の規制がないため、数年単位の大規模プロジェクトにも継続して携わることができます。
偽装請負のリスクを理解する
SESにおける偽装請負とは、実態は労働者派遣であるにも関わらず、準委任契約や請負契約のように偽装する違法行為のことです。偽装請負が発覚した場合、SES企業には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課されます。
偽装請負に該当する可能性がある状況として、以下のケースが挙げられます。
- クライアント企業から業務に関する直接的な指示を受けている
- クライアント企業が独断で契約外の業務を追加する
- SES企業の管理者が現場に不在で業務管理が行われていない
- クライアント企業の勤怠システムで出退勤を管理されている
エンジニア自身が偽装請負の状況に置かれていることに気づかないケースも少なくありません。クライアント企業から直接指示を受けている場合や、契約内容と実態が異なると感じた場合は、所属するSES企業に相談することが重要です。
SESの優良企業とブラック企業の見分け方
SES企業を選ぶ際には、優良企業とブラック企業を見分ける目を持つことが非常に重要です。間違った企業選びをしてしまうと、キャリア形成に悪影響を及ぼしたり、労働環境に悩まされたりする可能性があります。
優良企業とブラック企業を見分けるために、以下の4つのポイントを確認する必要があります。これらのポイントを押さえることによって、安心して働けるSES企業を選べるようになります。
- プライム案件を保有しているか確認する
- 研修制度と評価制度を確認する
- 口コミや離職率を確認する
- 経歴詐称や無関係案件への派遣がないか確認する
各ポイントについて、詳しく解説していきます。
プライム案件を保有しているか確認する
プライム案件とは、企業が直接顧客からシステム開発などを請け負う案件のことであり、一次請けや元請けとも呼ばれます。プライム案件を多く保有しているSES企業は、優良企業である可能性が高いと判断できます。
プライム案件を保有するSES企業のメリットとして、以下の4つが挙げられます。
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 給与還元率が高い | 中間マージンが少なく利益率が高い エンジニアへの給与還元が期待できる |
| 技術力と信頼性 | 高い技術力がないと獲得できない 顧客との長期的な関係を築いている |
| 上流工程の経験 | 要件定義や基本設計に携われる プロジェクトマネジメント能力を磨ける |
| 案件の安定性 | 継続的な案件受注が可能 待機期間が発生しにくい |
採用ページや会社説明会では、どのような取引先を持っているか、プライム案件の比率はどれくらいかを確認することが重要です。二次請けや三次請けの案件が中心のSES企業では、給与や労働環境で不利になる可能性があります。
研修制度と評価制度を確認する
優良なSES企業を見分けるためには、研修制度と評価制度の充実度を確認することが不可欠です。特に未経験や経験の浅いエンジニアにとって、教育体制の質は将来を大きく左右します。
確認すべき研修制度と評価制度として、以下の内容が挙げられます。
- 入社後の技術研修の期間と内容
- 資格取得支援制度の有無と補助金額
- オンライン学習ツールの提供状況
- メンター制度やキャリアカウンセリング
- 評価基準の明確さと昇給ルール
- スキルマップの運用状況
優良なSES企業では、プログラミング言語やフレームワーク、データベース、クラウド技術など幅広い分野をカバーする研修制度を設けています。また、定期的な面談やフィードバック、明確な評価基準により、エンジニアの成長過程を把握できる仕組みが整っています。
口コミや離職率を確認する
SES企業を選ぶ際には、転職系口コミサイトやSNSに投稿された評判を必ず確認することが重要です。実際に働いている人や過去に在籍していた人の口コミは、表には出てこない内部のリアルを知る手がかりになります。
信頼できるSES企業に多く見られる口コミの特徴として、以下の内容が挙げられます。
| 評価項目 | 優良企業の特徴 |
|---|---|
| キャリア支援 | 親身にキャリア相談に乗ってくれる 希望する案件を考慮してくれる |
| 研修・教育 | 研修が丁寧で未経験でも安心できる 技術的なサポートが手厚い |
| 労働環境 | 残業や休暇取得に柔軟に対応 常駐先とのトラブル対応が素早い |
| 離職率 | 10%以下の低い離職率 平均勤続年数が長い |
反対に「放置される」「希望と異なる案件に飛ばされる」「離職率が30%を超える」などの声が多ければ、職場環境やサポート体制に問題がある可能性が高いです。複数の口コミサイトで情報を比較し、企業の実態を客観的に把握することが大切です。
経歴詐称や無関係案件への派遣がないか確認する
ブラックSES企業の中には、エンジニアに経歴詐称をさせたり、エンジニア業務とは無関係な案件に派遣したりするケースが存在します。このような企業は絶対に避けるべきであり、事前に確認することが非常に重要です。
注意すべきブラックSES企業の特徴として、以下の4つが挙げられます。
経歴詐称は違法行為であり、発覚した場合はSES企業だけでなく、指示に従ったエンジニア自身も責任を問われる可能性があります。顧客からの信頼を失墜させるだけでなく、エンジニア自身のキャリアにも深刻な悪影響を及ぼします。
面接時には、配属先の業務内容や案件の種類を具体的に質問し、少しでも不透明な回答があれば入社を避けることをおすすめします。優良なSES企業であれば、エンジニアのスキルや経験を正当に評価し、適切な案件にアサインする体制が整っています。