SES転職の種類と特徴
SESに関する転職には、キャリアの方向性によって大きく3つのパターンが存在します。それぞれの転職パターンには異なる目的と特徴があり、自分がどの方向を目指すのかを明確にすることが転職成功の第一歩となるでしょう。
SES転職の主なパターンとして、以下の3つがあります。これらは転職の目的や現在の状況によって選択が変わります。
- SESからSESへの転職
- SESからSES以外への転職
- 未経験からSESへの転職
各転職パターンについて、以下で詳しく解説していきます。
SESからSESへの転職
現在SES企業で働いているエンジニアが、別のSES企業への転職を検討するパターンです。同じ業態であるため転職のハードルは低く、働き方を大きく変えずに環境だけを改善できるという特徴があるでしょう。
主な転職理由としては、待遇面の改善や案件の質向上、評価制度への不満などが挙げられます。特に多重下請け構造の下流にいる企業から、元請けに近い優良SES企業への転職によって、年収が40万円から120万円程度アップするケースも少なくないでしょう。
SESからSES以外への転職
SES企業から自社開発やSIer、社内SEなど異なる業態の企業へ転職するパターンです。キャリアアップや働き方の変革を目的とした転職で、最も多くのエンジニアが検討する転職パターンとなるでしょう。
このパターンでは上流工程への参画や年収の大幅アップ、客先常駐からの脱却など、現在の環境では実現できない目標を達成することが主な目的となります。ただし転職先によって求められるスキルや経験が異なるため、事前の準備と戦略的な転職活動が必要でしょう。
未経験からSESへの転職
他業種からIT業界へのキャリアチェンジとして、SESエンジニアを目指すパターンです。IT業界の慢性的な人手不足により、未経験者でも研修制度が整ったSES企業であれば採用される可能性が高いという特徴があるでしょう。
自社開発企業やSIerへの直接転職は未経験者には難易度が高いため、まずSESで実務経験を積んでから次のステップを目指すという王道のキャリアパスとなっています。実際に2030年までにIT人材が45万人不足すると予測されており、未経験者にとってチャンスの大きい状況が続くでしょう。
SESから転職する主な理由
SES企業で働くエンジニアの多くが転職を考える背景には、キャリアや待遇に関する明確な課題があります。客先常駐という働き方ゆえに、自身の成長や将来設計に不安を感じることが少なくありません。
SESから転職を考える理由として、以下の4つが挙げられます。それぞれに共通するのは、現在の環境では実現できない目標があることです。
- キャリアアップの機会が限られている
- 給与や待遇に不満がある
- 労働環境を改善したい
- 正当な評価を受けたい
各理由について、以下で詳しく解説していきます。
スキルアップの機会が少ない
SESでは客先常駐が中心となるため、配属先によって携われる業務内容が大きく異なります。下流工程のテストや運用保守に長期間配属されると、上流工程の経験を積む機会が限られてしまうでしょう。
プロジェクトごとに技術スタックが変わるため、特定の分野で専門性を高めることが難しく、最新技術に触れる機会も少ない傾向があります。このような状況が続くと、市場価値の向上が見込めず、将来的なキャリアに不安を感じることになるでしょう。
給与水準が低く昇給が見込めない
SES企業ではクライアントに支払われる契約単価に対して、エンジニア本人への還元率が低く抑えられるケースが多く見られます。多重下請け構造の下流に位置する企業ほど、中間マージンが大きくなり、エンジニアの手取りが少なくなる傾向です。
残業や休日出勤をしても適切に評価されず、年齢を重ねても給与がほとんど上がらないという状況に直面することもあるでしょう。実際に転職によって年収が100万円以上増えたという事例も多く、適正な評価を求めて転職を決意するエンジニアは少なくありません。
客先常駐による環境変化のストレス
客先常駐という働き方では、配属先ごとに職場環境やルールが異なるため、新しい現場に行くたびに人間関係を一から構築する必要があります。作業環境も常駐先によって大きく異なり、古い設備や狭いスペースで作業を強いられることもあるでしょう。
クライアント都合での急な残業や休日対応も発生しやすく、自分でコントロールできない働き方にストレスを感じる方も多くいます。腰を据えて同じチームで働ける環境を求めて、転職を検討するケースが増えています。
成果が正当に評価されにくい
SESでは自分の成果がクライアント企業に帰属するため、どれだけプロジェクトに貢献しても所属企業での評価に直結しにくい側面があります。常駐先での働きぶりが見えにくいため、昇進や昇給の判断材料が不足することも少なくないでしょう。
明確な評価基準がない企業も多く、自分の頑張りが報酬に反映されないことへの不満から転職を考えるエンジニアが増えています。成果が適切に評価される環境で働きたいという思いは、転職を決意する大きな動機となるでしょう。
SESからSESへ転職する場合
同じSES企業への転職は、最も難易度が低く実現しやすい選択肢です。しかし環境を改善するためには、転職先の企業選びが極めて重要となります。
SESからSESへの転職を成功させるポイントとして、以下の4つがあります。これらを押さえることで、同じ失敗を繰り返さずに済むでしょう。
- 優良SES企業の見極め方を理解する
- 取引先企業の確認を徹底する
- 評価制度と給与体系を確認する
- 案件選択の自由度を確認する
各ポイントについて、以下で詳しく解説していきます。
優良SES企業の特徴を理解する
優良SES企業とブラックSES企業には明確な違いがあり、転職前にしっかりと見極める必要があります。単価公開制度や還元率の高さ、福利厚生の充実度など、複数の指標から総合的に判断することが大切でしょう。
| 項目 | 優良SES企業の特徴 |
|---|---|
| 還元率 | 70%以上が目安 80%や90%を超える企業も存在する |
| 案件選択 | 100%自分で案件を選べる制度がある 希望する技術スタックや勤務形態を選べる |
| 取引先 | エンド直や元請け直の案件が多い 大手企業との直接取引がある |
| 評価制度 | 単価評価制度など透明性が高い スキルに応じた正当な給与 |
| 研修制度 | 技術研修や資格取得支援が充実 学習費用を会社が負担 |
新SESと呼ばれる新しいタイプのSES企業が増えており、従来のSESとは異なる魅力的な制度を導入しています。これらの企業への転職によって、同じSESでありながら働き方や待遇を大きく改善できる可能性があるでしょう。
取引先企業の階層を確認する
SES企業を選ぶ際には、どの階層のクライアントと取引しているかが最重要ポイントとなります。多重下請け構造の上流に位置するほど、エンジニアの単価も高く、携われる案件の質も向上するでしょう。
公式サイトや求人情報で取引先を公開している企業は、透明性が高く信頼できる傾向があります。逆に取引先を明かさない企業や、他のSES企業を取引先としている企業は、多重下請け構造の下流に属している可能性が高く、避けるべきでしょう。
評価制度の透明性を確認する
評価制度が明確で透明性の高い企業を選ぶことで、自分の成果が適切に報酬に反映される環境を手に入れることができます。面接時には評価基準や昇給のタイミング、給与決定のプロセスについて具体的に質問することが重要でしょう。
単価評価制度を導入している企業では、クライアントからの契約単価をオープンにし、それに基づいて給与が決まるため、納得感のある報酬体系となっています。自分のスキルと市場価値が可視化されることで、キャリアプランも立てやすくなるでしょう。
案件選択の自由度を確認する
案件を自分で選べるかどうかは、SES企業選びにおいて極めて重要な要素です。会社都合で一方的に案件を割り当てられる企業では、希望しない技術スタックや労働環境での作業を強いられる可能性があるでしょう。
100%案件選択制を導入している企業であれば、自分のスキルアップに繋がる案件や、ワークライフバランスを重視したリモート案件など、希望に合わせて選ぶことができます。案件を断っても評価に影響しない制度があるかどうかも、確認しておくべきポイントでしょう。
SESからSES以外へ転職する場合
SESから別の業態へ転職することで、キャリアアップや働き方の変革を実現できます。転職先によって求められるスキルや難易度が大きく異なるため、自分の目標に合わせた選択が重要でしょう。
代表的な転職先として、以下の5つがあります。それぞれに異なるメリットと特徴があり、自分の優先順位に応じて検討する必要があります。
- SIerへの転職
- 自社開発企業への転職
- 社内SEへの転職
- フリーランスとしての独立
- ITコンサルや営業への職種転換
各転職先について、以下で詳しく解説していきます。
SIerへの転職
SIerは受託開発を行う企業で、クライアント企業のシステム開発案件をプロジェクト単位で請け負います。SESとの違いは、エンジニア個人が派遣されるのではなく、企業対企業の契約でチームとして開発を進める点にあるでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 平均年収 | 600万円から900万円程度 大手SIerでは1,000万円を超える企業もある |
| 転職難易度 | 中程度 SESでの経験を活かしやすい |
| メリット | 上流工程に携わる機会が増える 年収アップが期待できる プロジェクトマネジメント経験を積める |
| 求められるスキル | 開発経験3年以上が目安 上流工程の経験があると有利 コミュニケーション能力が重視される |
SESから最も転職しやすい選択肢の一つで、これまでの経験を活かしながら年収アップとキャリアアップを同時に実現できる可能性があります。特に大手SIerでは要件定義や設計など上流工程に関わる機会が多く、技術力だけではなくマネジメントスキルも磨けるでしょう。
自社開発企業への転職
自社開発企業は自社でサービスや製品を企画し、開発から運用まで一貫して行う企業です。WebサービスやスマホアプリなどのBtoCサービスを提供する企業が多く、SESエンジニアに人気の転職先となっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 平均年収 | 500万円から800万円程度 ベンチャー企業ではストックオプションも |
| 転職難易度 | 高い 技術力と主体性が強く求められる |
| メリット | 開発に集中できる環境 サービスの成長を実感できる 同じチームで継続的に働ける |
| 求められるスキル | 応募先企業の技術スタックとのマッチング 主体的に動ける行動力 ポートフォリオや個人開発の実績 |
内定率が低く、50社以上応募して数社の内定を得るという状況も珍しくありません。ただしユーザーの反応を直接感じながら開発できるため、やりがいを実感しやすい環境です。SESから自社開発を目指す場合は、業務外での学習や個人開発の実績が重要な評価ポイントとなるでしょう。
社内SEへの転職
社内SEは事業会社の情報システム部門で、自社の業務システムやインフラの企画から運用まで幅広く担当します。メーカーや金融、物流など様々な業界で需要があり、安定志向のエンジニアに適した選択肢となっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 平均年収 | 500万円から700万円程度 大手企業では800万円以上も |
| 転職難易度 | 中程度 企業規模や業界によって異なる |
| メリット | 残業が少なくワークライフバランスが良い 客先常駐がない 長期的に同じ組織で働ける |
| 求められるスキル | 幅広いIT知識 社内調整やコミュニケーション能力 ベンダーコントロールのスキル |
定時で帰宅できる企業が多く、プライベートの時間を確保しやすい環境です。ただし技術者として最前線で開発を続けたい方には物足りなく感じられる可能性もあるため、自分のキャリアプランと照らし合わせて検討する必要があるでしょう。
フリーランスとしての独立
十分な実務経験とスキルを積んだエンジニアにとって、フリーランスとして独立するという選択肢もあります。会社員を辞めて個人事業主になることで、働き方の自由度と収入面での可能性が広がるでしょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 想定収入 | 月額60万円から100万円程度 スキル次第で年収1,000万円以上も可能 |
| 転職難易度 | 高い 十分な経験と人脈が必要 |
| メリット | 高単価案件で大幅な収入アップが可能 働く時間や場所を自由に選べる 案件を自分で選択できる |
| 必要な準備 | 実務経験3年以上が目安 安定した案件獲得ルートの確保 確定申告など事務処理の理解 |
SESからいきなりフリーランスになるのではなく、まず転職で経験を積み、十分な実績とスキルを築いてから独立する方が現実的です。案件獲得の見込みが立ってから独立することで、リスクを最小限に抑えることができるでしょう。
ITコンサルや営業への職種転換
エンジニアの技術知識を活かしながら、ITコンサルタントや技術営業へキャリアチェンジする選択肢もあります。開発現場での経験が強みとなり、クライアントへの提案力や折衝力を発揮できる職種でしょう。
インセンティブ制度のある企業であれば、成果に応じて収入が大きく増える可能性があります。ただしエンジニアとは異なるスキルセットが求められるため、営業力やプレゼンテーション能力を磨く必要があるでしょう。
未経験からSESへ転職する場合
他業種からIT業界へのキャリアチェンジとして、SESを選択するケースが増えています。未経験者にとってSESは、IT業界に入るための現実的な入口となるでしょう。
未経験からSESへの転職を成功させるために、以下の4つのポイントがあります。これらを理解することで、スムーズなキャリアチェンジが可能になります。
- 未経験からSESを選ぶメリットを理解する
- 研修制度が充実した企業を選ぶ
- 明確なキャリアプランを持つ
- 転職エージェントを活用する
各ポイントについて、以下で詳しく解説していきます。
未経験者にSESが適している理由
IT業界では実務経験が重視されるため、未経験者が自社開発企業やSIerに直接転職するのは極めて難しい状況です。しかしSESであれば、研修制度を整えている企業が多く、未経験者でも採用される可能性が高いでしょう。
| 項目 | 未経験者にとってのメリット |
|---|---|
| 採用のハードル | ポテンシャル採用が多く採用されやすい IT業界の慢性的な人手不足が追い風 |
| 研修制度 | 3ヶ月程度のプログラミング研修がある企業も 資格取得支援や学習費用の会社負担 |
| 実務経験 | 様々なプロジェクトで幅広い経験を積める 下流工程から段階的にスキルアップできる |
| 収入の安定性 | 時間給で収入が安定しやすい 成果報酬型と異なり給与が保証される |
2030年までにIT人材が45万人不足すると予測されており、未経験者を積極的に採用する企業は今後も増えていくでしょう。SESで2年から3年の実務経験を積めば、次のキャリアステップとして自社開発やSIerへの転職も現実的になります。
研修制度の充実度を確認する
未経験からSESに転職する際には、入社後の研修制度が充実しているかどうかが最重要ポイントとなります。研修期間が短い企業や、OJTのみで体系的な学習機会がない企業は避けるべきでしょう。
優良なSES企業では、3ヶ月から6ヶ月程度のプログラミング研修を用意しており、基礎から段階的にスキルを習得できる環境が整っています。研修中に資格取得を目指す企業もあり、全員が研修中に資格を取得できるようサポートしている企業も存在するでしょう。
キャリアプランを明確にする
未経験からSESに転職する場合、将来的なキャリアプランを明確にしておくことが極めて重要です。SESは下請け構造の最下層にあたるため給与が低くなりがちで、キャリアアップを前提にしておかないと不満を溜めるばかりになるでしょう。
現時点でのスキル不足を認識しながらも、3年後にはSIerへ転職する、5年後にはフリーランスとして独立するなど、具体的な目標を持つことが大切です。今はスキルや経験を積み重ねる期間だと割り切ることができれば、SESでの待遇に不満を感じても前向きに働き続けられるでしょう。
優良企業を見極めるポイント
未経験者の場合、SES企業の良し悪しを判断することが難しいため、転職エージェントの活用が効果的です。IT業界に詳しいアドバイザーであれば、ブラック企業を避け、研修制度が整った優良企業を紹介してくれるでしょう。
2次請け以降の企業は多重下請け構造の下流に位置するため避けるべきで、エンド直や元請け直の案件を多く持つ企業を選ぶことが重要です。求人票に記載されていない実態を知るためにも、転職エージェント経由で情報を得ることをおすすめします。
SESから転職できない理由と対策
SESからの転職活動において、思うように内定が取れないというケースは少なくありません。転職が難しいと感じる背景には、いくつかの共通した理由があります。
転職できない主な理由として、以下の5つが挙げられます。これらを理解することで、自分の状況を客観的に見直し、適切な対策を講じることができるでしょう。
- 担当業務のレベルが低く市場価値が高まっていない
- スキルに汎用性がなく他社で活かしにくい
- 年齢とスキルのバランスが合っていない
- 主体性が不足しコミュニケーション能力が低い
- 志望動機が明確ではなく浅い
各理由とその対策について、以下で詳しく解説していきます。
下流工程中心で技術力が向上していない
SESではテストや運用保守といった下流工程の案件に長期間配属されることがあり、このような業務では高度な技術力を必要としません。与えられた指示通りに作業を進めるだけで完結するため、技術的な成長機会が限られてしまうでしょう。
開発経験が豊富なエンジニアと比較すると、年齢を重ねてもスキルレベルが上がらず、転職市場での評価が低くなる傾向があります。特に30代でテストや改修しか経験していない場合、即戦力を求める企業からは採用されにくくなるでしょう。
対策としては、現職で上流工程に携われる案件へのアサインを希望する、業務外で自主的に学習を続ける、資格取得やポートフォリオ作成によって技術力を可視化することが挙げられます。20代のうちに行動を起こすことで、ポテンシャル採用の機会を活かすことができるでしょう。
使用技術が古く他社で通用しない
常駐先で使用しているシステムや技術スタックが古い場合、どれだけその技術に精通していても転職市場では評価されにくい傾向があります。例えばレガシーシステムの保守に長年携わっていても、現代的な開発環境では応用が難しいでしょう。
社内での評価が高くても、市場価値とは必ずしも一致しないという点を理解しておく必要があります。部署内での評価と転職市場での評価が乖離していることに気づかず、面接で苦戦するケースも少なくないでしょう。
対策としては、需要の高い技術スタックを学習する、クラウドやモダンなフレームワークの経験を積む、個人開発で最新技術に触れるといった方法があります。転職エージェントに相談して、市場で求められているスキルを把握することも有効でしょう。
年齢に見合ったスキルが身についていない
転職市場では年齢に応じた技術力やマネジメント経験が求められるため、30代であればチームリーダー経験や上流工程の経験が期待されます。しかしSESでは年齢を重ねても下流工程に留まることがあり、年齢とスキルのバランスが釣り合わなくなるでしょう。
ルーティンワーク中心の業務を続けていると、目的意識のないまま年齢だけが上がってしまい、転職活動で不利になります。20代はポテンシャル採用があるものの、30代以降は即戦力としての実力が厳しく問われることになるでしょう。
対策としては、できるだけ早いタイミングで転職活動を始める、現職でリーダー経験を積む機会を作る、業務外でマネジメントやアーキテクチャ設計について学ぶことが挙げられます。ポテンシャル採用が可能な20代のうちに行動することが重要でしょう。
受け身の姿勢で主体性が欠けている
SESでは指示された作業をこなすことが中心となるため、自ら考えて行動する機会が少なく、受け身の姿勢が身についてしまうことがあります。問題が発生しても発注元が解決するため、主体的に動く必要がない環境で働き続けると、アウトプット力やコミュニケーション能力が磨かれにくいでしょう。
多くの企業では主体性のある人材を求めており、特に自社開発企業では仕事を自ら作り出すことが求められます。技術力が高くても受け身の姿勢が目立つと、面接で不採用となるケースが少なくないでしょう。
対策としては、現職で積極的に提案や改善活動を行う、チーム内でリーダーシップを発揮する機会を作る、技術ブログやコミュニティ活動を通じて情報発信するといった方法があります。主体的な行動を面接でアピールできるよう、具体的なエピソードを用意しておくことが大切でしょう。
転職の目的が曖昧で志望動機が弱い
SESでは様々な現場を転々とするため、自分のキャリアを主体的に築いてきたという印象を持たれにくい傾向があります。そのため面接で志望動機を聞かれた際に、明確な目的やストーリーを語れず、自社開発をしたいや安定した企業に入りたいといった抽象的な理由になりがちでしょう。
志望動機が浅いと判断されると、企業側に熱意が伝わらず、内定を獲得することが難しくなります。なぜその企業なのか、なぜそのポジションなのかを具体的に説明できなければ、採用担当者の心に響かないでしょう。
対策としては、転職の軸を明確にする、応募企業について徹底的に研究する、自分の経験とスキルをどう活かせるかを具体的に考える、企業でどう成長したいかをストーリーとして準備することが挙げられます。転職エージェントに相談して志望動機を添削してもらうことも有効でしょう。
SES転職を成功させる方法
SES転職を成功させるには、転職の方向性に応じた戦略的な準備と計画的な行動が不可欠です。やみくもに応募するのではなく、自分の強みを最大限にアピールできるよう準備を整えることが重要でしょう。
転職成功のための方法として、以下の5つのステップがあります。これらを順序立てて実行することによって、内定獲得の確率を大きく高めることができます。
- 職務経歴書を効果的に作成する
- 面接対策を入念に行う
- 転職エージェントを活用する
- 転職のタイミングを見極める
- 複数の企業に並行して応募する
各方法について、以下で詳しく解説していきます。
プロジェクト経験を具体的に記載する
職務経歴書ではSESで携わったプロジェクトごとに、どのような技術を使ってどのように貢献したかを具体的に記載することが重要です。単に業務内容を羅列するのではなく、自分の役割や工夫した点、成果を数字で示すことによって、採用担当者に実務能力の高さを伝えることができるでしょう。
応募先企業の募集要件に合わせて、関連性の高いスキルや経験を優先的に記載することも効果的です。例えばAWSの経験者を募集している企業であれば、クラウド環境での構築経験を詳しく書くことによって、マッチ度の高さをアピールできるでしょう。
退職理由を前向きに伝える
面接では必ずと言っていいほど退職理由を聞かれますが、現職への不満ばかりを語ることは避けるべきです。客先常駐では実現が難しかった目標を転職先で達成したいという前向きな姿勢で伝えることによって、好印象を与えることができるでしょう。
SES経験を強みに変換することも大切で、様々な現場で適応してきた柔軟性や対応力は高く評価されます。異なる環境で多様な人と仕事をした経験から磨かれたコミュニケーション能力を、具体的なエピソードとともに伝えることが効果的でしょう。
IT専門の転職エージェントを利用する
転職エージェントを活用することによって、非公開求人の紹介や職務経歴書の添削、面接対策など、転職活動を総合的にサポートしてもらえます。IT業界に特化したエージェントであれば、市場動向や企業の内部事情にも精通しており、的確なアドバイスを受けることができるでしょう。
複数のエージェントに登録することで、それぞれが持つ独自の求人情報にアクセスでき、選択肢が広がります。担当者との相性もあるため、2社から3社程度に登録して、自分に合ったアドバイザーを見つけることが転職成功の鍵となるでしょう。
契約更新のタイミングを狙う
SESでは客先との契約期間が3ヶ月単位となっているケースが多く、契約更新のタイミングで退職することで円満に退社できます。具体的には3月末、6月末、9月末、12月末のいずれかが退職日として適しており、2ヶ月前に退職の意向を伝えることで、会社側も対応しやすくなるでしょう。
契約継続の手続きが始まる前に退職を申し出ることによって、常駐先とSES企業の双方に迷惑をかけずに済みます。転職活動は在職中に始め、内定獲得後に退職のタイミングを調整することで、収入が途切れるリスクを避けることができるでしょう。
複数企業に同時並行で応募する
1社ずつ順番に応募するのではなく、複数の企業に同時並行で応募することによって、選考スケジュールを効率的に進めることができます。比較検討する選択肢が増えることで、本命企業の良し悪しも客観的に判断できるでしょう。
自社開発企業への転職を目指す場合、内定率が低いため50社以上に応募する必要があることも珍しくありません。数をこなすことを前提に、書類選考の通過率を上げるための工夫や、面接での受け答えを繰り返し練習することが成功への近道となるでしょう。
SES転職の成功事例
実際にSES転職を成功させたエンジニアの事例を知ることによって、自分の転職活動の参考にすることができます。先輩たちがどのような理由で転職を決意し、どのような結果を得たのかを理解することで、転職後のイメージも具体的になるでしょう。
代表的な成功事例として、以下の4つのパターンがあります。それぞれ異なる転職理由と転職先を選んでおり、多様なキャリアパスがあることがわかります。
- SESからSIerへ転職して年収アップ
- SESから社内SEへ転職してワークライフバランス改善
- SESから自社開発へ転職してスキルアップ
- SESからSESへ転職して待遇改善
各事例について、以下で詳しく紹介していきます。
SIer転職で年収が100万円以上アップ
30代前半の男性エンジニアは、SES企業で主に金融系システムの保守を担当していましたが、技術志向が強く、このままではスキルが伸ばせないと感じて転職活動を開始しました。大手SIerへの転職に成功した結果、年収が100万円以上アップし、賞与や昇給制度も整っている環境を手に入れることができたそうです。
明確な評価基準の下で仕事ができるようになり、成果を出せば昇進や昇給に直結する環境のため、大きなやりがいを感じているとのことです。生活と将来設計に余裕ができ、自己投資にも資金を回せるようになったことで、さらなるスキルアップにつながっているでしょう。
社内SE転職で労働環境が劇的に改善
20代後半の女性エンジニアは、新卒からSES企業に勤め、複数の客先で開発業務に携わってきましたが、常駐先ごとに異なるルールや度重なる残業に疲弊していました。長く続けるには環境を変えなければと転職を決意し、従業員数百名規模の事業会社で社内SEポジションへの転職に成功したそうです。
自社の綺麗なオフィスで最新設備を使って働けるようになり、周囲も顔なじみの社員ばかりなので質問や相談もしやすい雰囲気になったとのことです。毎回人間関係を一から構築するストレスがなくなり、勤務時間も適切に管理されるようになったことで、平日にジムに通ったり週末も趣味を楽しめるようになったでしょう。
Web系ベンチャー転職でスキルが大幅に向上
20代後半の男性エンジニアは、SESとして2社目の常駐案件を終えた頃、自分が携わったシステムが世の中に出ても名前が残らないことに寂しさを感じていました。自分のサービスを成長させたいという思いから、Web系ベンチャー企業へ転職し、自社Webサービスの開発チームに加わったそうです。
少人数ゆえにフロントエンドからサーバサイド、インフラまで幅広く経験することになり、最初は戸惑ったものの、すべての工程を任せてもらえることで劇的にスキルが伸びたとのことです。自分の書いたコードがプロダクトの成長に直結する醍醐味を味わい、毎日が充実していると語っています。年収は転職前と同程度でしたが、ストックオプション制度や裁量労働制など、ベンチャーならではの魅力も感じているでしょう。
優良SESへ転職して年収と環境を改善
20代前半の男性エンジニアは、多重下請け構造の下流にいるSES企業で、テストと運用保守ばかりの業務に不満を感じていました。同じSESでも環境が良い企業があることを知り、単価公開制度と案件選択制度を導入している優良SES企業への転職を決意したそうです。
転職後は年収が50万円程度アップし、自分で案件を選べるようになったことで、希望する技術スタックの案件に携われるようになったとのことです。リモートワーク可能な案件も多く、ワークライフバランスも大きく改善されたと語っています。同じSESでも企業選びによってここまで変わることに驚いたそうです。