SES業界で働く際、「一次請け」「二次請け」「三次請け」という言葉を耳にする機会が多いでしょう。これらは、発注元から数えて何番目の下請け企業かを示す用語で、エンジニアの給与水準やキャリアに大きく影響します。
しかし、自分が所属する企業や配属される現場が何次受けなのか、それぞれの違いが何なのかを正確に理解している方は少ないです。何次受けかによって、単価や業務内容、スキルアップの機会が大きく変わるため、転職やキャリア形成を考える上で重要な判断材料となります。
この記事では、SESにおける一次請け・二次請け・三次請けの違いを詳しく解説し、各次数で働くメリットやデメリット、そして何次受けかを見分ける具体的な方法について説明していきます。
SESで何次受けかを見分ける方法
SES企業に就職や転職を検討する際、その企業が何次受けかを事前に見分けることは非常に重要です。ここでは、何次受けかを見分ける具体的な方法を3つに分けて解説します。
- 契約書や取引先企業を確認する
- 面接時に直接質問する
- 求人情報から判断する
それぞれの方法を組み合わせることによって、より正確に判断できます。何次受けかを把握してから企業選びをすることで、入社後のミスマッチを防げるでしょう。
それでは各項目について、詳しく解説していきます。
契約書や取引先企業を確認する
SESで何次受けかを見分ける最も確実な方法は、自社の契約書や取引先企業を確認することです。入社前であれば採用ページや企業説明会で、入社後であれば実際の契約書を見ることによって、取引関係を把握できます。
確認すべきポイントは、以下の通りです。
- 取引先企業の名前と業態
- 契約相手がエンドクライアントか他のSES企業か
- 企業ホームページの取引実績欄
- パートナー企業一覧の内容
取引先が大手IT企業や事業会社であれば一次請けの可能性が高く、取引先がSES企業ばかりであれば二次請け以降の可能性が高いです。ただし、企業によっては一次請けと二次請けの両方の案件を扱っているケースもあるため、配属される案件ごとに確認する必要があります。
面接時に直接質問する
SESで何次受けかを見分けるもう一つの方法は、面接時に採用担当者や面接官に直接質問することです。「何次請けの案件が多いですか」「クライアントと直接契約していますか」と率直に聞くことによって、企業の実態を把握できます。
面接で質問する際のポイントは、以下の通りです。
- 一次請けの案件が全体の何割を占めるか
- 配属される可能性が高い案件は何次請けか
- プライム案件への配属を希望できるか
- 今後一次請け案件を増やす計画があるか
優良なSES企業であれば、何次請けかについて正直に答えてくれます。逆に、質問をはぐらかしたり、曖昧な回答しかしなかったりする企業は、二次請けや三次請けの案件が多い可能性が高いため注意が必要です。
求人情報から判断する
SESで何次受けかを見分ける方法として、求人情報の記載内容から推測することもできます。求人票や企業ホームページに書かれている文言や取引先情報を注意深く読むことによって、ある程度の判断が可能です。
| 記載内容 | 判断 |
|---|---|
| 「プライム案件多数」「元請け案件中心」 | 一次請けの可能性が高い |
| 「大手企業と直接取引」「エンド直案件」 | 一次請けの可能性が高い |
| 「様々なプロジェクトに参画」「幅広い案件」 | 二次請け以降の可能性がある |
| 取引先が明記されていない | 二次請け以降の可能性が高い |
求人情報だけで完全に判断することは難しいですが、明らかに一次請けを強調している企業とそうでない企業の違いは見えてきます。複数の情報源を組み合わせて総合的に判断することが重要です。
SESにおける一次請け・二次請け・三次請けの違い
SES業界では、発注元のクライアント企業から数えて何番目の受注企業かによって、一次請け・二次請け・三次請けという区分があります。ここでは、それぞれの違いを3つに分けて解説します。
- SESの一次請けとは
- SESの二次請けとは
- SESの三次請けとは
それぞれの次数には明確な違いがあり、エンジニアの待遇や業務内容に直接影響します。多重下請け構造の中で、自分がどの位置にいるかを理解することで、キャリアの方向性を判断しやすくなるでしょう。
それでは各項目について、詳しく解説していきます。
SESの一次請けとは
SESの一次請けとは、クライアント企業から直接業務を受注する企業のことです。エンドユーザーや発注元企業と直接契約を結び、プロジェクト全体の管理や要件定義などの上流工程を担当します。
一次請けの主な特徴は、以下の通りです。
- クライアント企業と直接契約を結ぶ
- プロジェクト全体の進行管理を行う
- 上流工程から下流工程まで幅広く関与する
- 中間マージンが発生しないため単価が高い
プライム案件とも呼ばれ、SES業界では最も有利なポジションとされています。発注元と直接やり取りできるため、要件変更や仕様の調整もスムーズに進められ、エンジニアとしての裁量も大きくなります。
SESの二次請けとは
SESの二次請けとは、一次請け企業から業務を受注する企業のことです。クライアント企業と直接の契約関係はなく、一次請け企業を通じてプロジェクトに参画します。
二次請けの主な特徴は、以下の通りです。
- 一次請け企業から業務を受注する
- 設計や開発などの中流工程を担当することが多い
- 一次請け企業の指示に従って業務を進める
- 一次請けの中間マージン分、単価が下がる
クライアント企業との距離があるため、プロジェクトの全体像が見えにくく、意思決定にも関われないケースが多いです。ただし、一次請けに比べると責任の範囲が限定的で、特定の技術領域に集中して業務を進められる側面もあります。
SESの三次請けとは
SESの三次請けとは、二次請け企業からさらに業務を受注する企業のことです。クライアント企業から見ると3番目の下請けとなり、多重下請け構造の中でも下層に位置します。
三次請けの主な特徴は、以下の通りです。
- 二次請け企業から業務を受注する
- テストや運用保守などの下流工程を担当することが多い
- 複数の企業を経由するため指示系統が複雑になる
- 中間マージンが複数発生し単価が大幅に下がる
四次請け、五次請け、さらにはそれ以上の下請けが存在するケースもあり、次数が下がるほど単価や労働条件は悪化する傾向があります。スキルアップの機会も限られるため、長期的なキャリア形成の観点からは避けたいポジションと言えるでしょう。
SESの一次請けで働くメリット
SESの一次請けで働くことには、給与面やキャリア面で大きなメリットがあります。ここでは、一次請けで働く主なメリットを3つに分けて解説します。
- 高い単価で給与水準が上がる
- 上流工程のスキルが身につく
- プロジェクト全体の裁量を持てる
それぞれのメリットは、エンジニアとしての市場価値を高めることに直結します。一次請けで働くことによって、二次請けや三次請けでは得られない経験やスキルを獲得できるでしょう。
それでは各項目について、詳しく解説していきます。
高い単価で給与水準が上がる
SESの一次請けで働く最大のメリットは、中間マージンが発生しないため単価が高く、給与水準が上がることです。クライアント企業から受け取った売上が、ほぼそのままエンジニアへの報酬に反映されます。
| 次数 | クライアント単価 | 中間マージン | エンジニア単価 |
|---|---|---|---|
| 一次請け | 100万円 | なし | 70万円〜80万円 |
| 二次請け | 100万円 | 一次請けが20万円 | 50万円〜60万円 |
| 三次請け | 100万円 | 一次・二次で40万円 | 30万円〜40万円 |
同じスキルレベルのエンジニアでも、一次請けと三次請けでは年収に200万円以上の差が生まれることも珍しくありません。還元率の高い一次請け企業であれば、20代で年収600万円以上を実現できるケースもあり、経済的な安定とキャリアアップを両立できます。
上流工程のスキルが身につく
SESの一次請けでは、要件定義や基本設計などの上流工程に携わる機会が多く、プロジェクトマネジメントやクライアントとの折衝スキルが身につきます。上流工程とは、システム開発の初期段階で、何を作るかを決める重要なフェーズのことです。
上流工程で身につくスキルは、以下の通りです。
- 要件定義や仕様策定の経験
- クライアントとの直接的なコミュニケーション能力
- プロジェクト全体を俯瞰する視点
- チームマネジメントやリーダーシップ
これらのスキルは、フリーランスとして独立する際や、SIerや自社開発企業への転職を目指す際にも高く評価されます。コードを書くだけではなく、ビジネス視点でシステムを設計する能力は、エンジニアとしての市場価値を大きく高めるでしょう。
プロジェクト全体の裁量を持てる
SESの一次請けでは、クライアント企業と直接やり取りできるため、プロジェクトの進め方や技術選定において大きな裁量を持てます。二次請けや三次請けのように、上位企業の指示を待つ必要がなく、自分の判断で業務を進められることが特徴です。
裁量を持つことのメリットは、以下の通りです。
- 技術選定や設計方針を自分で決められる
- 仕様変更や改善提案を直接クライアントに伝えられる
- プロジェクトの成功に直接貢献できる実感がある
- 自律的に働くスキルが身につく
自分のアイデアや提案がプロジェクトに反映されやすく、仕事のやりがいも感じやすい環境です。裁量を持って働くことによって、エンジニアとしての判断力や問題解決能力も磨かれていきます。
SESの二次請け・三次請けで働くデメリット
SESの二次請けや三次請けで働くことには、給与面やキャリア面で大きなデメリットがあります。ここでは、二次請け・三次請けで働く主なデメリットを3つに分けて解説します。
- 単価が低く給与が上がりにくい
- 下流工程の業務が中心になる
- 意思決定に関われない
それぞれのデメリットは、長期的なキャリア形成において不利に働く要素です。二次請けや三次請けで働くことによって、スキルアップの機会が限られ、市場価値を高めることが難しくなるでしょう。
それでは各項目について、詳しく解説していきます。
単価が低く給与が上がりにくい
SESの二次請けや三次請けでは、中間マージンが複数発生するため単価が低く、給与が上がりにくいことが最大のデメリットです。クライアント企業が支払う金額のうち、エンジニアに還元される割合が大幅に減少します。
中間マージンの影響は、以下の通りです。
- 一次請け企業が20%から30%のマージンを取る
- 二次請け企業がさらに20%から30%のマージンを取る
- 結果として元の単価の30%から40%しか還元されない
- スキルアップしても給与が上がりにくい構造になる
同じスキルを持つエンジニアでも、一次請けと三次請けでは月給に20万円以上の差が生まれることもあります。長期的に見ると、二次請けや三次請けで働き続けることは、経済的に大きな機会損失となるでしょう。
下流工程の業務が中心になる
SESの二次請けや三次請けでは、テストや運用保守などの下流工程の業務が中心となり、上流工程に関わる機会がほとんどありません。下流工程とは、設計が完了した後の実装やテスト、保守を行うフェーズのことです。
| 工程 | 一次請け | 二次請け・三次請け |
|---|---|---|
| 要件定義 | 担当する | 担当しない |
| 基本設計 | 担当する | 一部担当する場合あり |
| 詳細設計 | 担当する | 担当する |
| 実装・テスト | 担当する | 主に担当する |
下流工程のみを担当し続けると、システム全体を設計する力や、クライアントと要件を調整する力が身につきません。将来的にフリーランスとして独立したり、より良い条件の企業に転職したりする際に、スキル不足でキャリアアップが難しくなるリスクがあります。
意思決定に関われない
SESの二次請けや三次請けでは、プロジェクトの方針や技術選定などの重要な意思決定に関われず、上位企業の指示に従って業務を進めるだけになります。クライアント企業とも直接やり取りできないため、仕事のやりがいを感じにくい環境です。
意思決定に関われないことの影響は、以下の通りです。
- 自分の提案やアイデアをプロジェクトに反映できない
- 技術的な判断を自分で下せない
- 仕様変更や改善提案が上位企業で却下される
- プロジェクトの全体像が見えず達成感を得にくい
指示されたタスクをこなすだけの働き方が続くと、エンジニアとしての成長が停滞します。自律的に考えて行動する力が身につかず、長期的にはキャリアの選択肢が狭まることにつながるでしょう。