SESで自社がどうでもいいと感じる理由
SESで働いていると、所属している自社に対して「どうでもいい」と感じてしまう方は少なくありません。客先常駐という働き方の特性上、自社との接点が極端に少なくなることによって、帰属意識が薄れてしまうのです。
SESで自社がどうでもいいと感じる理由として、以下の5つが挙げられます。それぞれの理由には構造的な問題が関係しており、個人の努力だけでは解決が難しい側面もあります。以下では、これらの理由について詳しく解説していきます。
- 自社との接点がほとんどない
- 自社から適切な評価を受けにくい
- 自社の存在意義が見えない
- 給与と業務量が見合わない
- キャリアパスが不透明
各理由について、詳しく解説していきます。
自社との接点がほとんどない
SESでは客先に常駐するため、自社のオフィスに行く機会がほとんどありません。同じ会社の同僚と顔を合わせることも少なく、自社の人間関係が希薄になりがちです。
毎日働いているのは客先のオフィスであり、周囲にいるのはクライアント企業の社員や他社から派遣されたエンジニアばかりという状況も珍しくありません。自社との接点が月に1回の報告メールだけという方もいます。このような環境では、自分がどこの会社に所属しているのか実感が湧かなくなることによって、帰属意識が低下してしまうのです。
さらに、自社に戻っても自分専用の席が用意されていないケースもあります。会社に行っても居場所がないと感じることで、より一層「自社はどうでもいい」という感覚が強まります。
自社から適切な評価を受けにくい
客先で働いている間、実際の業務内容や成果を自社の上司が直接見ることはありません。評価は客先からの報告や営業担当を通じた間接的な情報に基づいて行われます。
どれだけ現場で高いパフォーマンスを発揮しても、それが正しく自社に伝わるとは限りません。逆に、客先での評価が低くても自社では把握されていないこともあります。このような評価の不透明さが、「自社は自分のことを見ていない」という不信感につながります。
| 評価の問題 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 間接評価 | 客先からの報告を通じた評価のため 実態とズレが生じやすい |
| 評価基準の曖昧さ | 技術力ではなく労働時間や 契約更新の有無で評価される |
| 昇給の困難さ | 現場での成果が給与に 反映されにくい構造 |
評価されないと感じることで、自社のために頑張る意欲が失われていきます。結果として「評価してくれない自社なんてどうでもいい」という気持ちになってしまうのです。
自社の存在意義が見えない
SESで働いていると、自社が自分に対して何を提供してくれているのか分からなくなります。業務に必要な知識は客先で教わり、困ったときに助けてくれるのも客先の人という状況では、自社の存在意義を感じられません。
給与から引かれているマージンに対して、「何のための会社なのか」という疑問を抱く方も多くいます。案件のアサインや契約の管理だけなら、自分でできるのではないかと感じることもあるでしょう。自社が提供する価値が見えないことによって、会社への愛着が持てなくなります。
さらに、研修制度やキャリア支援が不十分な企業では、自社が自分の成長に貢献していないと感じやすくなります。単にマージンを抜いているだけの存在に思えてしまい、帰属意識が失われていくのです。
給与と業務量が見合わない
SESでは多重下請け構造によって、中間マージンが発生します。自分が客先で生み出している価値と実際に受け取る給与に大きな差があることを知ると、不満が募ります。
客先での契約単価が月80万円なのに、自分の手取りが20万円台という状況も珍しくありません。差額の多くは自社や間に入っている企業のマージンとして消えていきます。このような構造を理解することで、「自社は自分の労働から利益を得ているだけ」という感覚が強まります。
業務内容が高度であったり、残業が多かったりしても、給与に反映されないことも不満の原因です。頑張っても報われないと感じることで、自社への不信感が増していきます。
キャリアパスが不透明
SESでは案件ごとに現場が変わるため、長期的なキャリア形成が難しくなります。どのようなスキルを身につければ昇進できるのか、将来的にどのようなポジションを目指せるのかが見えません。
自社内での役職や管理職のポストも限られており、現場で評価されても自社での昇進は難しいという現実があります。キャリアの先が見えないことによって、「この会社にいても成長できない」と感じてしまいます。
| キャリアの課題 | SESでの実態 |
|---|---|
| スキルの偏り | 下流工程中心の業務が多く 上流工程の経験を積みにくい |
| 案件のばらつき | 会社都合のアサインで 希望するスキルが身につかない |
| 昇進の機会 | 管理職ポストが少なく 現場評価が昇進に直結しない |
将来への不安を抱えながら働き続けることは、精神的な負担になります。自社がキャリア支援を提供してくれないと感じることで、「どうでもいい」という気持ちが強まるのです。
SESで自社がどうでもいいと感じたときの対処法
自社に対して「どうでもいい」と感じてしまったとき、その気持ちを放置するのは望ましくありません。モチベーションの低下は仕事のパフォーマンスにも影響し、結果的にキャリアにマイナスの影響を与える可能性があります。
SESで自社がどうでもいいと感じたときの対処法として、以下の4つが考えられます。それぞれの方法には異なるアプローチがあり、自分の状況や目指すキャリアに合わせて選択することができます。以下では、これらの対処法について詳しく解説していきます。
- 自社の担当者に現状を相談する
- 優良なSES企業へ転職する
- 自社開発やSIerへ転職する
- 自己投資でスキルアップを図る
各対処法について、詳しく解説していきます。
自社の担当者に現状を相談する
まず試すべきは、自社の営業担当や上司に現状を相談することです。自社との接点が少ないことや、評価に対する不安、キャリアパスへの疑問などを率直に伝えましょう。
優良なSES企業であれば、定期的な面談制度や相談窓口を設けています。現場の状況や今後のキャリア希望を共有することによって、次の案件アサイン時に配慮してもらえる可能性があります。スキルアップにつながる案件や、希望する技術領域の案件を紹介してもらえるかもしれません。
| 相談内容 | 期待できる対応 |
|---|---|
| 現場環境の問題 | 契約更新時の案件変更 クライアントへの環境改善要請 |
| スキルアップの希望 | 希望技術を使う案件の紹介 社内研修の提供 |
| 評価への不満 | 評価基準の説明 フィードバック機会の増加 |
ただし、相談しても改善が見られない場合や、そもそも相談する仕組みが整っていない企業の場合は、他の選択肢を検討する必要があります。自分の状況を改善するための行動を起こすことが重要です。
優良なSES企業へ転職する
すべてのSES企業が同じではありません。社員を大切にし、キャリア支援や教育制度が充実している優良なSES企業も存在します。そのような企業への転職を検討するのも一つの方法です。
優良なSES企業では、定期的な面談や技術研修、資格取得支援などが整備されています。チームでの案件参画を基本としている企業もあり、一人常駐による孤独感を軽減できます。また、商流の上位に位置する一次請け企業であれば、給与水準も高く、上流工程に携わる機会も増えるでしょう。
転職先を選ぶ際は、研修制度の充実度、社員の年齢層の幅広さ、口コミサイトでの評価などを確認しましょう。面接では、評価制度やキャリアパスについて具体的に質問することも大切です。
自社開発やSIerへ転職する
客先常駐という働き方そのものが合わないと感じる場合は、自社開発企業やSIerへの転職を検討しましょう。働き方や環境が大きく変わることによって、帰属意識の問題を根本的に解決できます。
自社開発企業では、自社のプロダクトやサービスの開発に携わります。チームで同じ目標に向かって働くため、仲間意識や達成感を得やすくなります。企画から運用まで一貫して関われることで、プロダクト全体を見通すスキルも身につきます。ユーザーからの反応が直接届くため、やりがいを感じやすい環境です。
| 転職先 | 特徴 |
|---|---|
| 自社開発企業 | 自社プロダクトの開発に専念 チームでの一体感が得られる 上流工程に携わりやすい |
| SIer企業 | チーム単位での案件参画 幅広い業界の経験が可能 マネジメント経験を積める |
| 社内SE | 自社システムの構築・保守 経営課題に直接関われる 安定した勤務環境 |
SIerでは、クライアントからシステム開発を請け負いますが、基本的にチーム単位で案件に参画します。SESのような一人常駐は少なく、自社の仲間と一緒に働けます。プロジェクト管理やチームマネジメントの経験も積めるため、キャリアアップにもつながりやすいでしょう。
自己投資でスキルアップを図る
すぐに転職するのが難しい場合や、まずは市場価値を高めたい場合は、自己投資によるスキルアップを優先しましょう。技術力を高めることで、将来の選択肢が広がります。
業務後の時間を活用して、オンライン学習サービスや技術書で新しい知識を習得できます。資格取得にチャレンジすることも有効です。基本情報技術者試験やCCNA、AWS認定などの資格は、転職活動でも評価されやすくなります。個人開発でポートフォリオを作成すれば、自社開発企業への転職時にアピール材料になります。
自己投資は、自社への依存度を下げる効果もあります。「この会社にいなくても、自分はやっていける」という自信を持つことによって、精神的な余裕が生まれます。自社がどうでもいいと感じながらも、自分自身のキャリアは大切にする姿勢が重要です。
SESのメリットと自社開発のデメリット
SESで自社がどうでもいいと感じるとき、自社開発企業への転職を考える方は多くいます。しかし、自社開発にもデメリットは存在しますし、SESにも見落とされがちなメリットがあります。
働き方を選択する際は、それぞれの特徴を理解した上で判断することが大切です。以下の3つの観点から、SESのメリットと自社開発のデメリットを見ていきましょう。冷静に両者を比較することによって、自分に合った働き方を見つけやすくなります。
- SESのメリット
- 自社開発のデメリット
- 自分に合った働き方を選ぶ
各観点について、詳しく解説していきます。
SESのメリット
SESには、他の働き方にはない独自のメリットがあります。特に、キャリア初期のエンジニアや、多様な経験を積みたい方にとっては魅力的な環境です。
最も大きなメリットは、様々な現場を経験できることです。金融系、Web系、ゲーム系など、異なる業界のシステム開発に携わることによって、幅広い技術知識と対応力を養えます。使用する言語や開発手法も案件ごとに変わるため、短期間で多様なスキルを身につけられます。自分に合った技術領域や業界を見つけやすいのも利点です。
| SESのメリット | 具体的な内容 |
|---|---|
| 多様な経験 | 様々な業界や技術に触れられる 短期間で幅広いスキルが身につく |
| 残業の少なさ | 契約で労働時間が規定されている プライベート時間を確保しやすい |
| 未経験の受け入れ | 研修制度が充実している企業が多い ポテンシャル採用が積極的 |
| 責任の軽さ | プロジェクト全体の責任は負わない 技術習得に集中できる |
残業時間が比較的少ないのもSESの特徴です。契約で労働時間が定められているため、過度な残業を強いられることは少なくなります。ワークライフバランスを重視する方には適した環境といえるでしょう。未経験からエンジニアを目指す場合も、SESは入りやすい選択肢です。研修制度や資格取得支援が整っている企業が多く、実務経験を積む最初のステップとして機能します。
自社開発のデメリット
自社開発企業にも、見落とされがちなデメリットが存在します。理想化されがちな自社開発ですが、実際に働いてみると課題に直面することもあります。
最も大きなデメリットは、事業領域やプロダクトが固定されることです。同じサービスを長期間担当することになるため、技術スタックも固定化されやすくなります。レガシーなコードベースを抱えている場合、最新技術に触れる機会が限られることもあります。結果として、転職市場で評価されるスキルセットから遅れてしまう可能性があります。
プロジェクトが炎上した場合も、簡単には逃げられません。自社のプロダクトである以上、最後まで責任を持って対応する必要があります。深夜の障害対応や休日出勤が発生することもあり、SESより残業が多くなるケースも珍しくありません。プレッシャーの大きさは、人によっては精神的な負担になります。
| 自社開発のデメリット | 具体的な内容 |
|---|---|
| 技術の固定化 | 同じプロダクトを長期間担当 レガシー技術から抜け出せない |
| 炎上リスク | プロジェクトから逃げられない 深夜対応や休日出勤が発生 |
| 未経験の門戸 | 即戦力が求められる 教育コストを負担しにくい |
| 事業リスク | サービス終了で異動や転職 弱小事業は予算も少ない |
未経験者にとっては、自社開発企業への入社ハードルが高いのも課題です。事業推進が最優先のため、教育コストを負担できる企業は限られています。即戦力を求められることが多く、実務経験がないと採用されにくいのが現実です。入社後も、自走力が求められるため、手厚いサポートは期待できません。
自分に合った働き方を選ぶ
SESと自社開発のどちらが優れているかという問いには、明確な答えはありません。それぞれにメリットとデメリットがあり、自分の価値観やキャリアプランに合った選択をすることが重要です。
幅広い経験を積みたい方や、ワークライフバランスを重視する方には、SESが適している可能性があります。一方で、一つのプロダクトに深く関わりたい方や、チームでの一体感を求める方には、自社開発が向いているでしょう。自分が仕事に何を求めるのか、5年後にどうなっていたいのかを考えることで、選択肢が明確になります。
また、キャリアは固定的なものではありません。SESで経験を積んでから自社開発に転職する、あるいはその逆のキャリアパスもあります。今の選択が永遠に続くわけではないため、現時点で自分に合った環境を選び、必要に応じて軌道修正していけば良いのです。自社がどうでもいいと感じながら働き続けるのではなく、自分にとって意味のある選択をしましょう。