SESは日本だけ?海外との違いを簡単に解説

SESは日本だけ?海外との違いを簡単に解説

SESという働き方は日本で広く普及していますが、「これは日本だけの働き方なのか」「海外にも同じような形態があるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。実際、SES型の客先常駐という働き方は、日本特有またはそれに近い形態であり、海外ではほとんど見られません。

しかし、なぜ日本だけにSESが多いのか、海外ではどのような働き方が主流なのか、具体的な理由を理解している方は少ないです。日本の雇用制度やIT業界の構造が、SESという働き方を生み出した背景には、いくつかの明確な要因があります。

この記事では、SESが日本だけに多い理由を詳しく解説し、海外の状況についても具体的に説明していきます。

SESが日本だけに多い理由

SESが日本だけに多い理由

SESが日本だけに多い背景には、日本特有の雇用制度やIT業界の構造が深く関わっています。海外では一般的ではないこの働き方が、日本で広く普及している理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 日本の雇用制度がSESを生み出した
  • 多重下請け構造が定着している
  • IT業界の人材不足が慢性化している

それぞれの理由は、日本の労働市場やIT業界の特性と密接に結びついており、SESという働き方が定着する土壌を作り出しています。これらの要因を理解することで、なぜ日本でSESが主流となったのかが明確になるでしょう。

それでは各項目について、詳しく解説していきます。

日本の雇用制度がSESを生み出した

日本では正社員の解雇が法律で厳しく制限されており、企業は一度雇用した社員を簡単に解雇できません。厚生労働省が定める労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と認められない解雇は無効とされています。

この厳格な雇用保護により、企業はプロジェクトの終了時にエンジニアを解雇することが困難です。そのため、自社で正社員を大量に抱えるリスクを避け、必要な時に必要な人材を外部から調達するSESという形態が発展しました。

海外、特にアメリカでは雇用の流動性が高く、プロジェクト単位で採用と解雇を繰り返すことが一般的です。日本の解雇規制の厳しさが、SESという日本独自の働き方を生み出した最大の要因の1つと言えるでしょう。

多重下請け構造が定着している

日本のIT業界では、大手企業が案件を受注し、それを二次請け、三次請けと下請け企業に委託する多重下請け構造が定着しています。この構造では、各企業が中間マージンを取るため、実際に作業するエンジニアの取り分が少なくなる問題があります。

多重下請け構造が生まれた背景には、以下の理由があります。

  • 大手企業が自社でエンジニアを抱えるリスクを避けたいため
  • 案件の規模が大きく、1社だけでは対応できないため
  • 特定の技術分野に特化した企業に業務を委託する必要があるため

この構造の中で、SES企業はエンジニアを客先に常駐させることで、下請けとしての役割を果たしています。海外では、このような多重下請け構造ではなく、プロジェクト単位でフリーランスや直接雇用のエンジニアが参画する形態が主流です。

IT業界の人材不足が慢性化している

日本のIT業界では、エンジニアの需要に対して供給が追いついておらず、慢性的な人材不足が続いています。経済産業省の調査によると、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足すると予測されています。

この人材不足により、企業は自社で育成する時間やコストをかけられず、即戦力となるエンジニアを外部から調達する必要に迫られています。SESは、この需要に応える形で急速に拡大してきました。

項目 日本 海外(アメリカ)
人材調達方法 SES企業から客先常駐 直接雇用またはフリーランス
雇用形態 SES企業の正社員 プロジェクト単位の契約
人材不足への対応 外部委託(SES) 高報酬での直接採用

海外では、人材不足に対して報酬を上げることで優秀なエンジニアを直接採用する傾向が強いです。日本では、SESという形態を通じて人材不足を補っているため、この働き方が定着しているのです。

SESは海外にも存在するのか

SESは海外にも存在するのか

SESのような客先常駐型の働き方は、日本以外の国ではほとんど見られません。海外では、プロジェクト単位での直接雇用やフリーランスとしての参画が一般的であり、日本のような長期的な客先常駐という形態は主流ではないのです。海外の状況として、以下の3つの地域について解説します。

  • アメリカではSES型の働き方はほぼない
  • ヨーロッパでもSES型の働き方は少ない
  • 中国では類似の形態が一部存在する

それぞれの地域では、IT業界の構造や雇用慣習が日本とは大きく異なります。これらの違いを理解することで、なぜSESが日本特有の働き方なのかがより明確になるでしょう。

それでは各項目について、詳しく解説していきます。

アメリカではSES型の働き方はほぼない

アメリカのIT業界では、SESのような客先常駐型の働き方はほとんど存在しません。エンジニアは企業に直接雇用されるか、フリーランスとして独立して働くことが一般的です。

アメリカでSES型の働き方がない主な理由は、以下の通りです。

  • 雇用の流動性が高く、プロジェクト終了後の解雇が容易
  • 自社開発が主流で、外部委託の文化が少ない
  • エンジニアの報酬が高く、直接雇用のメリットが大きい
  • フリーランス市場が発達しており、個人で契約を結ぶ文化がある

アメリカでは、企業がプロジェクトごとにエンジニアを直接採用し、プロジェクト終了後は契約を終了するという形態が一般的です。日本のように、SES企業が間に入って長期的に客先に常駐させる必要がないため、SES型のビジネスモデルは成立しません。

ヨーロッパでもSES型の働き方は少ない

ヨーロッパでも、アメリカと同様にSES型の客先常駐という働き方は一般的ではありません。ヨーロッパでは、契約社員やフリーランスとしての働き方が主流であり、日本のような派遣や客先常駐の文化は限定的です。

地域 主な働き方 SES型の有無
日本 SES企業の正社員として客先常駐 広く普及
アメリカ 直接雇用またはフリーランス ほぼない
ヨーロッパ 契約社員またはフリーランス 少ない
中国 直接雇用が主流、一部で外注利用 一部存在

ヨーロッパでは、労働者の権利保護が強い一方で、契約形態の柔軟性も認められています。そのため、プロジェクト単位での契約社員としての雇用や、フリーランスとしての参画が一般的であり、日本のように企業間で人材を貸し出すSES型のビジネスモデルは発展していません。

中国では類似の形態が一部存在する

中国では、日本のSESに完全に一致する形態ではありませんが、外部からエンジニアを調達して客先に派遣する「外包(ワイバオ)」という働き方が一部存在します。これは、日本のSESに近い形態と言えるでしょう。

中国で外包が存在する理由として、以下が挙げられます。

  • 急速なIT業界の成長により、人材不足が発生している
  • 大手企業がコスト削減のために外部委託を活用している
  • 地方都市から都市部への労働力の移動が活発である

ただし、中国でも直接雇用が主流であり、外包は日本ほど広く普及しているわけではありません。また、中国では技術力の高いエンジニアほど、外資系企業や大手IT企業への直接雇用を希望する傾向が強いため、外包で働くエンジニアは相対的に技術レベルが低いと見なされることもあります。

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