SESを辞めた後の転職先
SESを辞めた後の転職先は多岐にわたります。それぞれの転職先には異なる特徴があり、自分のキャリアプランやスキルレベル、働き方の希望に応じて選択することが重要です。
SESを辞めた後の主な転職先として、以下の6つがあります。
- 自社開発企業
- 受託開発企業
- SIer
- 社内SE
- 優良SES企業
- フリーランス
それぞれの転職先には、年収面や働き方、スキルアップの機会において違いがあり、自分に合った環境を選ぶことが転職成功の鍵となります。以下では、各転職先について詳しく解説していきます。
自社開発企業
自社開発企業は、自社でサービスやプロダクトを企画・開発・運営する企業です。SESでの客先常駐とは異なり、企画段階から開発に携わることができ、ユーザーの反応を直接感じながら働ける点が大きな魅力といえます。
自社開発企業へ転職するメリットは以下のとおりです。
- 上流工程から携われるため仕事の質が向上する
- 年収が高くなる可能性がある
- 人間関係が固定され安定した環境で働ける
- 自社サービスの成長に貢献できるやりがいがある
具体的には、MIXI、サイバーエージェント、ZOZO、DMMなどの企業が自社開発企業として知られています。ただし、入社難易度が高く、一定以上の技術力や実績が求められることには注意が必要です。
受託開発企業
受託開発企業は、クライアントから直接システム開発を受注し、納品まで責任を持つ企業です。SESとは異なり、作業時間ではなく成果物に対して報酬が発生するため、プロジェクト全体を見通せる点が特徴といえます。
受託開発企業へ転職するメリットは以下のとおりです。
- 企画や設計といった上流工程から携われる
- クライアントから直接発注を受けるため年収が上がりやすい
- 多様な業界のプロジェクトに関われる
- プロジェクト管理スキルが身につく
自社開発企業ほどの大幅な年収増は見込めない場合もありますが、着実なスキルアップと収入増を両立できる環境として、SESからのキャリアアップ先として人気があります。
SIer
SIerは、クライアント企業の経営課題を解決するため、情報システムの企画・コンサルティングから設計、開発、運用・保守までを一貫して請け負う企業です。官公庁や金融機関、大手製造業などの大規模システムを担当することが多く、社会的影響力の大きい仕事に携われます。
SESからSIerへ転職するメリットは以下のとおりです。
- 要件定義や設計といった上流工程に携われる
- 年収が上がる可能性が高い
- 大規模プロジェクトでマネジメントスキルが身につく
- ITスキル以外のビジネススキルも習得できる
SIerでは技術力だけでなく、プロジェクト全体を管理する能力や顧客との折衝スキルが求められるため、エンジニアとしての幅を広げたい方に適した転職先といえます。
社内SE
社内SEは、企業の情報システムの開発・運用・管理を担当する職種です。SESのような客先常駐ではなく、自社内で腰を据えて働けるため、労働環境の安定を求める方に適しています。
SESから社内SEへ転職するメリットは以下のとおりです。
- 企画から開発、運用まで一貫して携われる
- ワークライフバランスを重視できる企業が多い
- 納期に融通が利きやすく精神的負担が少ない
- 年収が比較的高い水準に設定されている
近年では、IT技術が全ての企業にとって必要不可欠となっているため、社内SEのニーズは高まり続けています。残業が少なく、長期的に安定して働ける環境を求める方には特におすすめの転職先です。
優良SES企業
SESを辞めた後の選択肢として、より条件の良いSES企業へ転職する方法もあります。SES企業の中には、還元率が高く、案件選択の自由度があり、リモートワークが可能な優良企業も存在します。
優良SES企業へ転職するメリットは以下のとおりです。
- 案件を選択できる自由度が高い
- 一次請けの企業であれば年収が上がりやすい
- リモートワークが可能な企業もある
- SESならではの多様な案件経験を積める
SESの働き方自体は嫌いではないが、現在の企業の待遇に不満がある方にとっては、優良SES企業への転職が最適な選択肢となる場合があります。未経験からSESに入社した方が、スキルを身につけてより良いSES企業へステップアップするケースも少なくありません。
フリーランス
SESで培った技術力と実績があれば、フリーランスエンジニアとして独立する道も開けます。フリーランスは、企業に属さず自分のスキルを直接提供するため、高収入と自由な働き方を両立できる可能性があります。
フリーランスとして独立するメリットは以下のとおりです。
- 会社員時代より収入が大幅に向上する可能性がある
- 働く時間や場所を自分で選べる
- 参画するプロジェクトを自分で決められる
- 理想のライフスタイルを実現しやすい
ただし、フリーランスは案件獲得のための営業活動、契約手続き、請求業務、確定申告など、すべて自分で行わなければならないため、会社員としての安定を手放すことになります。スキルと実績次第で大きなリターンを目指せる一方、相応の責任が伴う働き方といえるでしょう。
SESを辞めてよかったと感じる理由
SESを辞めた多くのエンジニアが、転職後に「辞めてよかった」と実感しています。客先常駐という働き方から解放され、より良い労働環境や待遇を得ることで、キャリアと生活の両面で満足度が向上するケースが多く見られます。
SESを辞めてよかったと感じる主な理由として、以下の3つがあります。
- 年収が上がった
- 労働環境が安定した
- スキルアップできる環境になった
これらの理由は、多くの転職成功者が共通して挙げるポイントであり、SESからの転職を検討している方にとって重要な判断材料となるでしょう。以下では、それぞれの理由について詳しく解説していきます。
年収が上がった
SESから転職した場合、エンジニアの多くが年収アップに成功しています。SESは多重下請け構造の中で働くことが多く、クライアントが支払う単価から複数の企業がマージンを取るため、エンジニア本人の手取りが低くなりがちです。
SES時代と比較して年収が上がる理由は以下のとおりです。
- 自社開発やSIerでは中間マージンが少ない
- 上流工程に携わることで市場価値が高まる
- 評価制度が明確で適切な評価を受けられる
- 賞与や福利厚生が充実している企業が多い
実際の事例では、SES時代は月収25万円前後だったエンジニアが、転職後に年収80万円以上アップし、固定給とボーナスで生活が安定したケースも報告されています。年収面での改善は、SESを辞めてよかったと感じる最も大きな理由の一つといえます。
労働環境が安定した
SESの客先常駐という働き方は、プロジェクトが変わる度に勤務地、業務内容、人間関係がリセットされるため、労働環境が不安定になりがちです。この自分ではコントロールできない変化の連続が、知らず知らずのうちにストレスとして蓄積されていきます。
転職後に労働環境が安定する理由は以下のとおりです。
- 同じチームメンバーと長期的に働ける
- 毎回人間関係を構築する必要がなくなる
- 自社への帰属意識が芽生え精神的に安定する
- 働く場所や環境の変化によるストレスが減る
自社開発企業や社内SEへ転職すると、腰を据えてひとつの環境で働けるようになり、心理的安全性が高まります。この環境の安定こそが、多くの人が「SESを辞めてよかった」と感じる大きな要因となっています。
スキルアップできる環境になった
SESでは配属先によって業務内容が限定され、テスト業務や保守運用など下流工程に偏ることが多く、技術力を高める機会が限られてしまいます。しかし、転職後は上流工程に携われる機会が増え、市場価値を高められる環境に身を置けるようになります。
転職後にスキルアップできる理由は以下のとおりです。
- 要件定義や設計といった上流工程に携われる
- 企画から運用まで一貫した経験を積める
- 資格取得支援制度がある企業が多い
- 最新技術に触れる機会が増える
実際の事例では、SES時代はテスト業務ばかりでスキルが伸びなかったエンジニアが、受託開発企業に転職してから設計・開発・運用まで幅広く携われるようになり、AWS認定資格を取得するなど大きく成長したケースも報告されています。
SESを辞める手順
SESを辞める際には、客先常駐という特殊な働き方の性質上、通常の退職とは異なる注意点があります。SES企業、常駐先企業、そして自分自身の三者間の契約関係を理解したうえで、適切な手順を踏むことがトラブル回避につながります。
SESを辞める際の手順として、以下の4つがあります。
- 就業規則の確認
- 転職先を見つける
- 退職を申し出る
- 引継ぎを行う
これらの手順を順番に進めることで、円満退職を実現し、次のキャリアへスムーズに移行できます。以下では、各手順について詳しく解説していきます。
就業規則の確認
円満退職に向けた最初のステップは、所属するSES企業の就業規則または雇用契約書の内容を正確に把握することです。退職の申し出をするべき期限や契約期間などが明記されているため、まずはその内容を確認しましょう。
就業規則で確認すべきポイントは以下のとおりです。
- 退職の申し出をする期限(1ヶ月前、2ヶ月前など)
- 雇用契約の種類(無期雇用か有期雇用か)
- 契約期間(プロジェクト単位の契約がある場合)
- 退職時の手続きや必要書類
法律上は、期間の定めのない雇用契約の場合、2週間前の申し出で退職可能とされています。しかし、円滑な引継ぎを行い不要なトラブルを避けるためにも、会社のルールに従って遅くとも1ヶ月から2ヶ月前には退職の意思を伝えるのが望ましいといえます。
転職先を見つける
退職の申し出は、必ず転職先から内定を得た後に行うのが鉄則です。先に退職すると、収入が途絶えることへの焦りや履歴書の空白期間への不安から、冷静な判断が難しくなり、本来の希望とは異なる企業に妥協して入社してしまうリスクがあります。
在職中に転職活動を進めるメリットは以下のとおりです。
- 収入が途絶えず精神的に余裕を持てる
- 納得できる企業をじっくり選べる
- 退職後の空白期間を作らずに済む
- 現職を続けながら比較検討できる
転職エージェントを活用することで、非公開求人の紹介や書類添削、面接対策、年収交渉の代行など、専門的なサポートを受けられます。時間的にも精神的にも余裕を持って活動するために、在職中から転職活動を始めることを強くおすすめします。
退職を申し出る
内定を確保し入社日も決まったら、SES企業の直属の上司にアポイントを取り、退職の意思を伝えます。この際、重要なのは常駐先の責任者ではなく、雇用契約を結んでいる自社の上司または人事に伝えることです。
退職を申し出る際のポイントは以下のとおりです。
- 対面またはオンライン会議で直接伝える
- メールではなく口頭で丁寧に伝える
- 退職理由は前向きな内容にする
- 希望退職日を明確に伝える
SESの働き方は自社への帰属意識が薄れがちですが、契約関係を正しく理解し、伝える相手を間違えないよう注意が必要です。感情的にならず、感謝の意と共に退職の意思と希望退職日を明確に伝えることで、円満な退職につながります。
引継ぎを行う
退職が正式に決まったら、常駐先および自社の業務について適切な引継ぎを行う必要があります。SESの現場ではドキュメントが整備されていないケースも多いため、自分で業務内容を整理し、次の担当者が困らないようにマニュアルや手順書を残すことが重要です。
引継ぎで対応すべきポイントは以下のとおりです。
- 業務内容を文書化しマニュアルを作成する
- 顧客とのやりとりの履歴を整理する
- トラブル対応の履歴や注意点をまとめる
- 後任者への説明時間を十分に確保する
円滑な引継ぎは、退職後の印象にも大きく影響します。最後まで誠実に対応することで、業界内での評判が良くなり、将来的に転職先からの推薦やオファーにつながる可能性もあります。丁寧に対応するよう心がけましょう。
SESを辞めた後の注意点
SESを辞めた後は、新しい環境でのスタートとなるため、いくつかの注意点を押さえておくことが重要です。転職先での適応や、退職時の手続きに関する留意事項を事前に把握しておくことで、スムーズなキャリア移行が実現できます。
SESを辞めた後の注意点として、以下の3つがあります。
- 退職後の社会保険手続きを忘れずに行う
- 転職先での期待値調整を行う
- 前職の守秘義務を守る
これらの注意点を理解し適切に対応することで、退職後のトラブルを避け、新しい職場での良好なスタートを切ることができます。以下では、各注意点について詳しく解説していきます。
退職後の社会保険手続きを忘れずに行う
SESを辞めた後、転職先への入社までに期間が空く場合は、健康保険や年金の切り替え手続きを自分で行う必要があります。手続きを怠ると、医療費が全額自己負担になったり、年金の未納期間が発生したりするリスクがあります。
退職後に必要な社会保険手続きは以下のとおりです。
| 手続き項目 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 国民健康保険への加入 または任意継続の手続き |
退職日の翌日から14日以内 |
| 年金 | 国民年金への切り替え手続き | 退職日の翌日から14日以内 |
| 雇用保険 | 失業保険の申請 (必要な場合のみ) |
退職後できるだけ早く |
これらの手続きは市区町村の役所やハローワークで行います。必要書類は事前に確認し、期限内に確実に手続きを完了させることが重要です。
転職先での期待値調整を行う
SESから転職した場合、新しい職場の文化や働き方に慣れるまで時間がかかる場合があります。特に自社開発企業や社内SEに転職した場合、SES時代とは異なる責任範囲やコミュニケーションスタイルに戸惑うこともあるでしょう。
転職先での期待値調整で意識すべきポイントは以下のとおりです。
- 上司や同僚に自分のスキルレベルを正直に伝える
- できることとできないことを明確にする
- わからないことは積極的に質問する
- 新しい環境に適応するための学習時間を確保する
SES時代の経験をアピールしつつも、新しい環境では謙虚な姿勢で学ぶ意欲を示すことが、円滑な立ち上がりにつながります。最初の3ヶ月は特に重要な期間となるため、積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築していきましょう。
前職の守秘義務を守る
SESを辞めた後も、前職や常駐先で知り得た情報については守秘義務が継続します。技術情報、顧客情報、業務上のノウハウなどを新しい職場で安易に話すことは、法的問題に発展するリスクがあります。
守秘義務で注意すべきポイントは以下のとおりです。
- 前職のクライアント名や案件内容を具体的に話さない
- 技術的なノウハウを無断で持ち出さない
- 前職の同僚や関係者の個人情報を漏らさない
- SNSなどで前職に関する情報を発信しない
転職先で前職の経験を活かすことは重要ですが、具体的な企業名や個別のプロジェクト内容には触れず、一般的な技術や手法として説明するよう心がけましょう。守秘義務違反は損害賠償請求の対象となる可能性もあるため、慎重な対応が必要です。