「SESエンジニアとして働いている方」や「SESへの転職を検討している方」の中には、自分の年収が適正なのか気になっている方も多いでしょう。年収を調べる際、平均値だけでは一部の高所得者に引っ張られた数値になるため、実態を正確に把握できません。
中央値は、データを小さい順に並べた際の真ん中の値であり、SESエンジニアの年収の実態をより正確に反映します。自分の年収が市場の中央値と比べてどの位置にあるのかを知ることで、今後のキャリアプランを考える際の重要な判断材料となるでしょう。
この記事では、SESの年収中央値について、一般的な会社員や他のIT職種との比較、年代別・経験年数別のデータ、年収が中央値に届かない理由、そして中央値以上に年収を上げる具体的な方法について、詳しく解説します。
SESの年収中央値はどれくらいか
SESエンジニアの年収を正確に把握するには、平均値だけでなく中央値を確認することが重要です。中央値とは、データを小さい順に並べた際の真ん中の値を指し、一部の高所得者や低所得者の影響を受けにくいため、実態をより正確に反映します。
SESの年収中央値を知ることで、自分の年収が市場のどの位置にあるのか客観的に判断できます。以下では、SES全体の年収中央値、一般的な会社員との比較、他のIT職種との比較について解説します。
- SES全体の年収中央値
- 一般的な会社員の年収中央値との比較
- 他のIT職種の年収中央値との比較
それぞれの項目について、具体的な数値とともに詳しく見ていきましょう。
SES全体の年収中央値
SESエンジニア全体の年収中央値は、およそ350万円から400万円程度とされています。これは、未経験者から経験豊富なベテランまで含めた全体の数値であり、実際の年収は経験年数やスキルによって大きく変動します。
複数の求人サイトや転職エージェントのデータを総合すると、SESの年収分布は300万円から600万円の範囲に集中しており、その真ん中にあたる中央値は350万円から400万円になります。ただし、これはあくまで全体の傾向であり、所属する企業の還元率や案件の商流によっても差が生まれるでしょう。
| 年収レンジ | 該当する層 |
|---|---|
| 300万円未満 | 未経験者・新卒1年目 テスト・監視業務中心 |
| 300万円〜400万円 | 経験1年〜3年 開発補助・運用保守 |
| 400万円〜500万円 | 経験3年〜5年 設計・構築業務 |
| 500万円以上 | 経験5年以上 上流工程・マネジメント |
SESの年収中央値を理解する際は、自分の経験年数やスキルレベルと照らし合わせることで、より正確な判断ができます。中央値はあくまで目安であり、個人の努力次第で上回ることも十分に可能です。
一般的な会社員の年収中央値との比較
一般的な会社員の年収中央値と比較すると、SESエンジニアの年収は決して低いわけではありません。国税庁の民間給与実態統計調査によると、会社員全体の年収中央値は男性が356万円、女性が272万円となっています。
この数値と比較すると、SESの年収中央値である350万円から400万円は、男性会社員の中央値とほぼ同水準かやや上回る水準です。ただし、SESエンジニアの場合は専門的な技術職であるため、同年代の会社員と比べて年収の伸びしろが大きいという特徴があります。
| 比較対象 | 年収中央値 |
|---|---|
| 会社員全体(男性) | 356万円 |
| 会社員全体(女性) | 272万円 |
| SESエンジニア全体 | 350万円〜400万円 |
SESエンジニアは経験を積むことでスキルが向上し、年収も上昇しやすい職種です。一般的な会社員と比較して、キャリアの初期段階ではほぼ同水準ですが、スキルアップによって中長期的には大きな差をつけられる可能性があるでしょう。
他のIT職種の年収中央値との比較
SESエンジニアの年収中央値を他のIT職種と比較すると、やや低めの水準にあります。経済産業省の調査によると、IT人材全体の年収中央値は535万円とされており、SESの中央値である350万円から400万円とは大きな差があることがわかります。
この差が生まれる主な理由は、SESエンジニアが多重下請け構造の中で働くケースが多く、中間マージンが発生するためです。一方、SIerエンジニアや社内SEは、より上流の立場で働くことが多く、年収も高くなる傾向にあります。
| IT職種 | 年収中央値 |
|---|---|
| IT人材全体 | 535万円 |
| SIerエンジニア | 450万円〜500万円 |
| 社内SE | 500万円〜600万円 |
| SESエンジニア | 350万円〜400万円 |
ただし、これは全体の傾向であり、SESエンジニアの中にも高単価案件に参画し、高収入を得ている方は存在します。所属する企業の還元率や案件の商流、個人のスキルレベルによって、他のIT職種と同等かそれ以上の年収を実現することも可能です。
SESの年代別・経験年数別の年収中央値
SESエンジニアの年収中央値は、年代や経験年数によって大きく変動します。若手の頃は年収が低めですが、経験を積み、スキルが向上することで年収も上昇していきます。
年代別・経験年数別の年収中央値を把握することで、自分のキャリアステージに応じた適正な年収水準を知ることができます。以下では、20代、30代、40代以降それぞれの年収中央値について詳しく解説します。
- 20代のSESエンジニアの年収中央値
- 30代のSESエンジニアの年収中央値
- 40代以降のSESエンジニアの年収中央値
各年代の年収中央値を確認し、自分のキャリアプランの参考にしてください。
20代のSESエンジニアの年収中央値
20代のSESエンジニアの年収中央値は、およそ300万円から350万円程度です。この年代は未経験からスタートする方や、経験年数が浅い方が多いため、年収は低めの水準となります。
特に新卒や未経験で入社した1年目は、年収300万円前後からスタートすることが一般的です。しかし、3年程度の実務経験を積むことで、年収350万円程度まで上昇するケースが多く見られます。
| 経験年数 | 年収中央値 |
|---|---|
| 1年目(未経験) | 280万円〜320万円 |
| 2年〜3年目 | 320万円〜370万円 |
| 4年〜5年目 | 370万円〜420万円 |
20代は年収よりもスキルの習得を優先すべき時期です。この時期に基礎的な技術力を身につけ、実務経験を積むことで、30代以降の年収アップにつながります。テストや監視業務だけでなく、設計や構築といった上流工程の経験を積むことが重要でしょう。
30代のSESエンジニアの年収中央値
30代のSESエンジニアの年収中央値は、およそ400万円から450万円程度です。この年代になると、実務経験が5年以上となり、設計や構築といった上流工程を担当するケースが増えてきます。
30代前半では年収400万円程度が中央値ですが、30代後半になると450万円程度まで上昇します。この時期は、技術力だけでなく、マネジメントスキルやコミュニケーション能力も評価されるようになり、年収の伸びに差が出やすい時期です。
| 年齢層 | 年収中央値 |
|---|---|
| 30代前半(30歳〜34歳) | 380万円〜430万円 |
| 30代後半(35歳〜39歳) | 420万円〜480万円 |
30代は、キャリアの方向性を決める重要な時期です。このタイミングで、高還元率のSES企業への転職や、より上流の工程に携われる案件への参画を検討することで、年収を大きく伸ばすことが可能になります。また、リーダーやマネジメント経験を積むことも、年収アップに直結するでしょう。
40代以降のSESエンジニアの年収中央値
40代以降のSESエンジニアの年収中央値は、およそ450万円から500万円程度です。この年代になると、豊富な実務経験とマネジメントスキルを持つベテランエンジニアとして評価されます。
ただし、40代以降のSESエンジニアは、キャリアによって年収に大きな差が生まれます。上流工程の案件に継続的に参画し、プロジェクトリーダーやマネージャーとして活躍している方は、年収600万円以上を得ているケースもあります。
| キャリアタイプ | 年収レンジ |
|---|---|
| 下流工程中心 | 400万円〜450万円 |
| 上流工程・設計構築 | 500万円〜600万円 |
| マネジメント・PM | 600万円〜700万円以上 |
一方で、テストや監視といった下流工程の案件に留まり続けた場合、年収は伸び悩む傾向にあります。40代以降で年収を維持・向上させるには、マネジメントスキルや最新技術への対応力が不可欠です。この年代でキャリアチェンジを検討する場合は、これまでの経験を活かせる社内SEやSIerへの転職も選択肢となるでしょう。
SESの年収が中央値に届かない理由
SESエンジニアの中には、年収が中央値に届かず、思うように収入が増えないと感じている方も多いでしょう。年収が中央値に届かない背景には、SES業界特有の構造的な問題が存在します。
これらの問題を理解することで、自分の年収が低い原因を特定し、改善策を講じることができます。以下では、SESの年収が中央値に届かない主な理由について解説します。
- 多重下請け構造による中間マージンの発生
- 所属企業の還元率の低さ
- 評価制度の不透明さ
- 待機期間による収入の減少
それぞれの理由について、具体的に見ていきましょう。
多重下請け構造による中間マージンの発生
SES業界が抱える最も大きな問題は、多重下請け構造です。これは、元請け企業が受注した大規模な案件を、二次請け、三次請けと複数の下層企業に再委託していくピラミッド型の構造を指します。
商流が下がるたびに中間マージンが発生し、実際に現場で働くエンジニアに支払われる単価は低くなります。たとえば、エンドクライアントが月額100万円で発注した案件でも、三次請けのSES企業に届く頃には50万円程度まで減少し、そこからさらにエンジニアへの給与として還元される額はさらに低くなるでしょう。
| 商流の階層 | 単価の推移例 |
|---|---|
| エンドクライアント | 月額100万円(発注額) |
| 元請け(一次請け) | 月額80万円 20%のマージンを取る |
| 二次請け | 月額65万円 さらに15万円のマージン |
| 三次請け | 月額50万円 さらに15万円のマージン |
| エンジニアへの給与 | 月額25万円〜30万円 還元率50%〜60% |
この構造が存在する限り、どれだけスキルが高くても、下流の階層に位置する企業に所属していれば年収は上がりにくくなります。年収を中央値以上に引き上げるには、より上流の階層に位置する企業への転職や、プライム案件を多く扱う企業への移籍が有効です。
所属企業の還元率の低さ
還元率とは、クライアントからSES企業に支払われる単価のうち、どれくらいの割合がエンジニアの給与として還元されるかを示す指標です。還元率が低い企業に所属していると、年収が中央値に届かない大きな原因となります。
一般的なSES企業の還元率は50%から60%程度とされていますが、営業やバックオフィスの人件費、オフィス賃料などの経費を差し引くため、エンジニアへの還元が少なくなります。一方、近年増加している高還元SES企業では、70%以上の還元率を実現しており、同じ単価でも手取りが大きく変わるでしょう。
| 企業タイプ | 還元率 | 月単価80万円の場合の年収例 |
|---|---|---|
| 一般的なSES企業 | 50%〜60% | 480万円〜576万円 |
| 高還元SES企業 | 70%〜80% | 672万円〜768万円 |
還元率の低い企業に所属し続ける限り、年収を大きく伸ばすことは困難です。転職を検討する際は、単価や案件内容だけでなく、還元率の高さも重要な判断基準となります。ただし、還元率だけで判断せず、福利厚生や案件紹介のサポート体制なども総合的に評価することが大切です。
評価制度の不透明さ
SESエンジニアは客先に常駐して働くため、所属企業の上司や管理者が日常的な働きぶりを直接確認できません。その結果、現場での高い評価が自社での昇給や昇格に正しく反映されにくいという問題があります。
クライアント先で高い評価を受けていても、所属企業の評価制度が不透明であれば、年収が上がらないケースが多く見られます。特に、評価基準が明確でない企業や、年功序列が色濃く残る企業では、実力や成果が給与に反映されにくいでしょう。
| 評価制度のタイプ | 特徴 |
|---|---|
| 不透明な評価制度 | 評価基準が曖昧 上司の主観で決まる 昇給のタイミングが不明確 |
| 透明な評価制度 | 評価基準が明確 スキルシートや資格が反映 定期的なフィードバックあり |
評価制度が不透明な企業に所属している場合、自分の市場価値を客観的に把握し、転職を検討することも一つの選択肢です。近年では、単価評価制度や透明性の高い評価制度を導入するSES企業も増えており、実力に応じた適正な年収を得られる環境が整いつつあります。
待機期間による収入の減少
SESエンジニアには、一つのプロジェクトが終了してから次のプロジェクトに参画するまでの待機期間が発生することがあります。待機期間中の給与は、労働基準法で定められた平均賃金の60%以上を支払うことが義務付けられていますが、満額支給されないケースも多いです。
待機期間が長引けば長引くほど、月々の収入が減少し、年収が中央値を下回る原因となります。特に、案件獲得力の弱い企業や、営業サポートが不十分な企業に所属している場合、待機期間が長くなりやすい傾向にあるでしょう。
| 待機期間中の給与パターン | 内容 |
|---|---|
| 満額支給 | 通常の給与と同額を支給 企業側の負担が大きい |
| 60%支給 | 平均賃金の60%を支給 法律上の最低ライン |
| 無給 | 違法行為 労働基準法違反 |
待機期間のリスクを減らすには、案件獲得力の高い企業に所属することが重要です。また、自分自身でも市場価値を高めるためにスキルアップを続け、次の案件がすぐに決まるような人材になることが、年収を安定させるための鍵となります。
SESの年収を中央値以上に上げる方法
SESエンジニアとして年収を中央値以上に引き上げるには、戦略的なキャリア形成が必要です。現在の年収が中央値に届いていない方でも、適切な方法を実践することで年収アップは十分に可能です。
年収を上げるための方法は複数あり、自分の状況やキャリアプランに合わせて選択することが重要です。以下では、SESの年収を中央値以上に上げる具体的な方法について解説します。
- 還元率の高いSES企業への転職
- 上流工程の案件への参画
- 市場価値の高いスキルの習得
- マネジメント経験の獲得
これらの方法を組み合わせることで、より効果的に年収を引き上げることができるでしょう。
還元率の高いSES企業への転職
年収を中央値以上に引き上げる最も直接的な方法は、還元率の高いSES企業への転職です。還元率が70%以上の企業に移ることで、同じ単価で働いても手取りが大きく増加します。
近年、エンジニアファーストを掲げる高還元SES企業が増加しており、還元率80%や90%を実現する企業も登場しています。これらの企業は、営業活動やバックオフィスのコストを削減し、その分をエンジニアに還元する仕組みを構築しているのが特徴です。
| 還元率による年収の違い | 月単価60万円 | 月単価80万円 |
|---|---|---|
| 還元率50%(一般的) | 年収360万円 | 年収480万円 |
| 還元率70%(高還元) | 年収504万円 | 年収672万円 |
| 還元率80%(最高水準) | 年収576万円 | 年収768万円 |
ただし、高還元を謳う企業を選ぶ際は注意が必要です。還元率の計算方法が企業によって異なるため、福利厚生や待機期間中の給与保証、案件紹介のサポート体制なども総合的に確認しましょう。表面的な数値だけでなく、実質的な手取り額や働きやすさも重視することが大切です。
上流工程の案件への参画
上流工程の案件に参画することで、単価が上がり、年収も増加します。要件定義や設計といった上流工程は、下流工程のテストや監視業務と比べて単価が高く設定されるため、同じ時間働いても収入に大きな差が生まれるでしょう。
上流工程の案件に参画するには、技術力だけでなく、コミュニケーション能力や業務理解力も求められます。クライアントの要望を正確にヒアリングし、システム設計に落とし込む能力が必要になるため、下流工程での経験を積んだ上で段階的にステップアップすることが重要です。
| 工程 | 単価レンジ(月額) |
|---|---|
| テスト・監視(下流) | 30万円〜45万円 |
| 開発・構築(中流) | 45万円〜65万円 |
| 設計(上流) | 65万円〜85万円 |
| 要件定義・PM(最上流) | 85万円〜120万円以上 |
上流工程の案件を獲得するには、所属企業の営業力も重要です。プライム案件や一次請け案件を多く扱う企業に所属することで、上流工程に携わる機会が増えます。また、自分から積極的に上流工程への参画を希望し、スキルアップの意欲を示すことも効果的でしょう。
市場価値の高いスキルの習得
市場価値の高いスキルを習得することで、単価が上がり、年収を中央値以上に引き上げることができます。特に、需要が高く供給が少ない技術分野では、高単価案件が豊富に存在します。
近年では、クラウド技術やAI・機械学習、データサイエンス、セキュリティといった分野のスキルを持つエンジニアの需要が急増しています。また、GoやRuby、Swiftといった比較的新しいプログラミング言語のスキルも高く評価されるでしょう。
| 高単価スキル | 特徴 |
|---|---|
| クラウド(AWS/Azure/GCP) | クラウド移行案件が増加中 認定資格の取得で単価アップ |
| AI・機械学習 | PythonやTensorFlowのスキル データ分析能力も重要 |
| セキュリティ | セキュリティ診断やペネトレーション 高度な専門知識が必要 |
| モダンな言語(Go/Rust) | マイクロサービスやコンテナ技術 最新トレンドに対応 |
スキルアップのためには、業務時間外での自己学習が不可欠です。オンライン学習サービスや技術書、勉強会への参加などを通じて、継続的に新しい技術を習得しましょう。また、資格取得も客観的なスキル証明となり、転職時や案件獲得時に有利に働きます。
マネジメント経験の獲得
マネジメント経験を積むことで、エンジニアとしての単価が大きく上昇します。プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャーとして、チームをまとめ、プロジェクト全体を管理する役割を担うことで、年収を中央値以上に引き上げることが可能です。
マネジメント職は、技術力だけでなく、コミュニケーション能力や問題解決能力、スケジュール管理能力などが求められます。まずは小規模チームのリーダーから経験を積み、徐々に規模の大きなプロジェクトのマネジメントに挑戦することが推奨されるでしょう。
| 役割 | 単価レンジ(月額) |
|---|---|
| 一般エンジニア | 45万円〜65万円 |
| リーダー(2〜5名) | 65万円〜85万円 |
| プロジェクトリーダー(5〜10名) | 85万円〜105万円 |
| プロジェクトマネージャー(10名以上) | 105万円〜150万円以上 |
マネジメント経験は、将来的にITコンサルタントやCTOといった高年収の職種へのキャリアパスにもつながります。技術一筋で進むスペシャリストの道も選択肢ですが、マネジメントスキルを身につけることで、キャリアの幅が大きく広がり、年収の上限も高くなるでしょう。