単価連動型SESは、案件単価に応じて給与が変動する新しいタイプのSES契約形態で、スキル次第で高収入を実現できる点が魅力とされています。従来型のSESが年功序列で給与が決まるのに対し、単価連動型SESでは実力主義で報酬が決まるため、エンジニアにとって夢のある働き方と言えるでしょう。
しかし、メリットばかりに目を向けて転職すると、思わぬデメリットやリスクに直面する可能性があります。収入の不安定性、営業サポートの薄さ、ベンチャー企業が多い点など、単価連動型SES特有の課題を事前に理解しておかなければ、転職後に後悔することになりかねません。
この記事では、単価連動型SESの代表的なデメリット、従来型SESと比較して劣る点、そしてデメリットが致命的になる人の特徴について詳しく解説します。
単価連動型SESの代表的なデメリット
単価連動型SESには、高収入を実現できる魅力がある一方で、従来型のSESにはない特有のデメリットが存在します。案件単価と給与が連動するという仕組み自体が、エンジニアにとってリスクとなる側面を持っているためです。
以下の4つのデメリットがあります。
- 収入が不安定になりやすい
- 営業サポートや福利厚生が薄い
- ベンチャー企業が多く倒産リスクがある
- スキルが低いと稼げない
これらのデメリットは、単価連動型SESへの転職を検討する際に必ず考慮すべきポイントとなります。以下では、各デメリットについて詳しく見ていきましょう。
収入が不安定になりやすい
単価連動型SESでは、参画する案件の単価によって月収が大きく変動するため、収入が不安定になりやすいという問題があります。従来型のSESであれば固定給が支払われますが、単価連動型では案件単価が下がれば給与も連動して下がるため、生活設計が立てにくくなります。
収入が不安定になる主な要因は以下のとおりです。
- 案件待機期間中は給与が大幅に減少する、または無給になる
- 低単価案件に参画すると月収が20万円以下に下がることがある
- 案件の契約期間が短いと頻繁に収入が変動する
- プロジェクトの急な終了で次の案件が見つかるまで収入がゼロになる
たとえば、月単価100万円の案件に参画していた場合、還元率70%であれば月収は70万円程度となります。しかし、次の案件が月単価60万円に下がった場合、月収は42万円程度に減少し、年収ベースでは300万円以上の差が生まれることになるでしょう。このような収入の変動リスクを許容できるかどうかが、単価連動型SESに向いているかどうかの重要な判断基準です。
営業サポートや福利厚生が薄い
単価連動型SESでは、高い還元率を実現するために営業コストや福利厚生費を削減している企業が多く、従来型SESと比べてサポート体制が薄い傾向にあります。還元率60%以上を維持するためには、企業側の経費を最小限に抑える必要があるためです。
| 項目 | 従来型SES | 単価連動型SES |
|---|---|---|
| 営業サポート | 営業担当が案件フォローを実施 現場でのトラブル対応も営業が介入 |
営業サポートが薄い、または不在 エンジニア自身で交渉や調整が必要 |
| 福利厚生 | 住宅手当、家族手当などが充実 健康診断や各種保険も手厚い |
最低限の社会保険のみ 住宅手当や家族手当がない場合が多い |
| 案件紹介 | 営業が積極的に案件を紹介 エンジニアの希望を考慮して提案 |
案件は公開されているが自分で選ぶ 営業からの積極的な提案は少ない |
従来型SESであれば、営業担当がエンジニアの業務をサポートし、現場でのトラブルや契約更新の交渉なども代行してくれます。しかし、単価連動型SESでは、こうしたサポートが薄いため、エンジニア自身が営業的な動きをしなければならない場面が増えるでしょう。また、福利厚生が最低限しか用意されていないため、家族を養っているエンジニアにとっては実質的な手取りが減少するリスクもあります。
ベンチャー企業が多く倒産リスクがある
単価連動型SESを提供している企業の多くは、創業数年以内のベンチャー企業や小規模企業であり、企業としての安定性に欠ける傾向があります。新興SESと呼ばれるこれらの企業は、資本金や従業員数が少なく、経営基盤が脆弱な場合が多いためです。
ベンチャー企業が多いことによるリスクは以下のとおりです。
- 創業5年以内の企業が多く倒産リスクが高い
- 資本金が少なく財務基盤が弱い
- 大手企業との直接取引が難しく商流が深くなりがち
- 社会的信用が低く案件獲得が不安定
従来型の大手SES企業であれば、創業数十年の実績があり、大手クライアントとの直接取引も可能です。しかし、単価連動型SESのベンチャー企業では、そもそも大手企業から案件を直接受注できず、商流が深くなることで単価が下がるリスクもあります。また、企業が倒産した場合、エンジニアは突然職を失い、給与の未払いが発生する可能性もあるでしょう。ベンチャー企業で働くことのリスクを十分に理解した上で、転職を決断することが重要です。
スキルが低いと稼げない
単価連動型SESは実力主義であるため、エンジニアとしてのスキルが低いと高単価案件に参画できず、結果的に稼げないという問題があります。従来型SESであれば年功序列で給与が上がる仕組みがありますが、単価連動型では案件単価がそのまま給与に反映されるため、スキル不足は直接的に収入減につながります。
| スキルレベル | 案件単価目安 | 月収目安(還元率70%) |
|---|---|---|
| 未経験〜初級 | 30万円〜50万円 | 21万円〜35万円 |
| 中級(実務経験3〜5年) | 60万円〜80万円 | 42万円〜56万円 |
| 上級(実務経験10年以上) | 100万円〜150万円 | 70万円〜105万円 |
上記のとおり、スキルが低い初級エンジニアの場合、案件単価が30万円〜50万円程度にとどまり、還元率70%でも月収は21万円〜35万円程度となります。これは、従来型SESで固定給として支払われる給与よりも低くなる可能性があり、生活が苦しくなるリスクがあるでしょう。未経験や初級エンジニアが単価連動型SESに転職すると、かえって年収が下がることもあるため、自分のスキルレベルを冷静に判断することが必要です。
単価連動型SESが従来型SESに劣る点
単価連動型SESは、高還元率や案件選択の自由といった魅力がある一方で、従来型SESが提供してきたサポート体制や教育制度の面では劣る部分があります。高い還元率を実現するために、企業側がコストを削減しているためです。
以下の3つの点で従来型SESより劣ります。
- 教育制度や研修が少ない
- チームでの参画機会が減る
- 案件待機時の収入保証がない
従来型SESから単価連動型SESに転職する際には、これらの違いを理解しておくことが重要です。以下では、各項目について詳しく解説します。
教育制度や研修が少ない
単価連動型SESでは、未経験者を採用して育成するコストがかからない分、教育制度や研修制度が整っていない企業が多い傾向にあります。経験者のみを採用することで、即戦力として案件に参画させることを前提としているためです。
教育制度や研修が少ないことによる影響は以下のとおりです。
- 入社後の研修期間がほとんどなく、すぐに案件参画を求められる
- スキルアップのための社内勉強会や技術研修が実施されない
- 資格取得支援制度や書籍購入補助などがない場合が多い
- 技術的な相談ができる社内の先輩エンジニアが少ない
従来型SESであれば、入社後に数週間から数カ月の研修期間が設けられ、基礎的な技術や業務の進め方を学ぶことができます。また、定期的な社内勉強会や外部研修への参加支援なども充実しており、エンジニアとしてのスキルアップを会社がサポートしてくれるでしょう。しかし、単価連動型SESではこうした教育制度がほとんどなく、自分でスキルアップの機会を見つけて学習を続けなければなりません。自己研鑽が苦手なエンジニアにとっては、成長の機会が限られてしまうリスクがあります。
チームでの参画機会が減る
単価連動型SESでは、エンジニアが単独で案件に参画するケースが多く、チームでの参画機会が従来型SESと比べて少ない傾向にあります。単独参画の方が営業コストが低く、案件獲得も容易なためです。
| 参画形態 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 単独参画 | 営業工数が少ない 案件獲得が容易 長期契約になりやすい |
現場でのフォローが受けにくい 技術的な相談相手がいない 孤立しやすい |
| チーム参画 | 先輩エンジニアのフォローがある 技術的な相談ができる チームで問題解決できる |
案件数が少ない 営業工数が増大 メンバー同士の相性問題がある |
単独参画の場合、現場で技術的な問題に直面したときに相談できる同僚がおらず、孤立しやすくなります。また、現場の状況を正確に会社に伝えることが難しく、トラブルが発生したときに適切なサポートを受けられない可能性もあるでしょう。従来型SESであれば、複数のエンジニアがチームを組んで参画するケースが多く、現場での困りごとを相談できる環境が整っています。単独で働くことに不安を感じるエンジニアにとっては、単価連動型SESの働き方は大きなデメリットとなります。
案件待機時の収入保証がない
単価連動型SESでは、案件待機期間中の収入保証がない、または最低限の給与しか支払われないケースが多く、従来型SESと比べて経済的なリスクが高くなります。案件単価に連動して給与が決まる仕組み上、案件がなければ給与も発生しないためです。
案件待機時の収入に関する問題点は以下のとおりです。
- 案件待機期間中は月収が10万円〜20万円程度に減少する
- 待機期間が長引くと収入がゼロになる企業もある
- 待機中のスキルアップ支援や代替業務の提供がない
- 待機期間が3カ月以上続くと生活が困窮するリスクがある
従来型SESであれば、案件待機期間中も固定給が支払われるため、収入が途絶えることはありません。また、待機中には社内業務や研修に参加することで、給与をもらいながらスキルアップができる環境が整っているでしょう。しかし、単価連動型SESでは、待機期間中の収入が大幅に減少するため、貯金が少ないエンジニアにとっては生活が成り立たなくなるリスクがあります。安定した収入を重視するエンジニアには、この点が大きなデメリットとなります。
単価連動型SESのデメリットが致命的になるエンジニアの特徴
単価連動型SESのデメリットは、すべてのエンジニアにとって同じように影響するわけではなく、個人の志向性やスキルレベル、生活状況によって致命的になる場合とそうでない場合があります。自分がどのタイプに該当するかを見極めることで、単価連動型SESに転職すべきかどうかを判断できるでしょう。
以下の3つのタイプに該当する人は、デメリットが致命的になりやすいです。
- 安定収入を重視する人
- スキルが浅い初級エンジニア
- 営業や交渉が苦手な人
これらの特徴に当てはまる場合、単価連動型SESではなく従来型SESや自社開発企業を選択した方が、キャリア形成において有利になる可能性があります。以下では、各タイプについて詳しく見ていきましょう。
安定収入を重視する人
毎月の収入が安定していることを重視する人にとって、単価連動型SESの収入変動リスクは致命的なデメリットとなります。案件単価によって給与が大きく変動するため、住宅ローンや家族の生活費など固定的な支出がある場合、生活設計が立てられなくなるためです。
安定収入を重視する人が単価連動型SESで直面するリスクは以下のとおりです。
- 住宅ローンの返済計画が立てられない
- 家族を養っている場合、収入減少が家計に直接影響する
- 貯金を切り崩して生活する期間が増える
- 将来の収入見通しが立たず不安が増大する
たとえば、月収70万円の案件から次の案件が見つからず待機期間に入った場合、月収が20万円以下に下がることがあります。住宅ローンの返済が月10万円、家族の生活費が月15万円かかる場合、貯金を取り崩さなければ生活が成り立たない状況に陥るでしょう。このようなリスクを許容できない人は、固定給が保証されている従来型SESや正社員の働き方を選択すべきです。
スキルが浅い初級エンジニア
実務経験が3年未満の初級エンジニアや、未経験からエンジニアを目指す人にとって、単価連動型SESは収入面で大きなデメリットとなります。スキルが低いと高単価案件に参画できず、結果的に従来型SESよりも年収が下がる可能性が高いためです。
| スキルレベル | 従来型SES年収 | 単価連動型SES年収 |
|---|---|---|
| 未経験〜初級 | 350万円〜450万円(固定給) | 250万円〜420万円(案件単価に依存) |
| 中級(実務経験3〜5年) | 450万円〜550万円(固定給) | 500万円〜670万円(案件単価に依存) |
| 上級(実務経験10年以上) | 550万円〜650万円(固定給) | 840万円〜1,260万円(案件単価に依存) |
上記のとおり、初級エンジニアの場合、単価連動型SESでは年収が250万円程度まで下がる可能性があります。これは従来型SESの固定給よりも低い水準であり、生活が苦しくなるリスクがあるでしょう。また、教育制度が整っていないため、スキルアップの機会も限られてしまいます。未経験や初級エンジニアは、まず従来型SESや自社開発企業で実務経験を積み、スキルを高めてから単価連動型SESに転職する方が賢明です。
営業や交渉が苦手な人
営業活動や契約交渉が苦手な人にとって、単価連動型SESは大きなストレスとなります。単価連動型SESでは、営業サポートが薄いため、エンジニア自身が案件を探し、単価交渉を行い、契約条件を調整する必要があるためです。
営業や交渉が苦手な人が直面する問題は以下のとおりです。
- 自分で案件を探して応募する必要がある
- 単価交渉で適正価格を引き出せず低単価で契約してしまう
- 契約更新時の条件交渉がうまくできず不利な契約を結ぶ
- 現場でのトラブル対応を自分で解決しなければならない
従来型SESであれば、営業担当がエンジニアに代わって案件を探し、単価交渉や契約更新の手続きをすべて代行してくれます。エンジニアは技術的な業務に集中できる環境が整っているでしょう。しかし、単価連動型SESでは、営業的なスキルも求められるため、コミュニケーションが苦手な人やビジネス交渉に不安を感じる人にとっては、大きな負担となります。技術だけに集中して働きたい人は、従来型SESの方が向いていると言えるでしょう。