SES契約で単価60万円の手取り額はいくらか
SES契約における単価60万円の案件で、実際にエンジニアが受け取る手取り額は、所属企業の還元率によって大きく異なります。還元率とは、クライアントから企業に支払われる単価のうち、エンジニア本人に給与として還元される割合のことです。
単価60万円の案件でも、還元率が50%なら手取りは30万円、還元率が70%なら42万円となり、同じ単価でも月12万円もの差が生まれることがあります。以下では、還元率別に具体的な手取り額を解説していきます。
- 還元率50%の場合の手取り
- 還元率60%の場合の手取り
- 還元率70%以上の場合の手取り
各還元率での手取り額を把握することによって、自分の給与が適正かを判断できます。
還元率50%の場合の手取り
還元率50%のSES企業では、単価60万円に対して月額30万円が給与の原資となります。この30万円から社会保険料や所得税、住民税などが差し引かれるため、実際の手取り額は24万円前後になることが一般的です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 単価 | 60万円 |
| 還元率 | 50% |
| 総支給額 | 30万円 |
| 手取り額(概算) | 24万円 |
還元率50%は業界平均よりやや低い水準であり、企業が営業コストや待機期間の給与保証などに多くの費用を充てている場合に見られます。もし単価60万円の案件で手取りが24万円前後であれば、所属企業の還元率は50%程度と推測できます。
還元率60%の場合の手取り
還元率60%のSES企業では、単価60万円に対して月額36万円が給与の原資となります。社会保険料や税金を差し引いた後の手取り額は、28万円から29万円程度が目安です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 単価 | 60万円 |
| 還元率 | 60% |
| 総支給額 | 36万円 |
| 手取り額(概算) | 28万円〜29万円 |
還元率60%は業界の平均的な水準であり、多くの一般的なSES企業がこの範囲に該当します。単価60万円で手取りが28万円前後であれば、所属企業の還元率は60%程度であり、業界水準としては標準的な待遇といえます。
還元率70%以上の場合の手取り
還元率70%以上のSES企業では、単価60万円に対して月額42万円以上が給与の原資となります。社会保険料や税金を差し引いた後の手取り額は、33万円から35万円程度が目安です。
| 項目 | 金額(還元率70%) | 金額(還元率80%) |
|---|---|---|
| 単価 | 60万円 | 60万円 |
| 総支給額 | 42万円 | 48万円 |
| 手取り額(概算) | 33万円〜34万円 | 38万円〜39万円 |
還元率70%以上は高還元SES企業と呼ばれる水準であり、営業コストやオフィス維持費を削減することによって実現しています。単価60万円で手取りが33万円以上であれば、所属企業は高還元率を実現しており、エンジニアにとって有利な環境といえます。ただし、待機期間の給与保証や研修制度が手薄な場合もあるため、福利厚生面も確認する必要があります。
SES契約における還元率とは何か
SES契約における還元率とは、クライアント企業からSES企業に支払われる単価のうち、エンジニア本人に給与として還元される割合を示す指標です。単価が高くても還元率が低ければ手取り額は増えず、逆に単価が低くても還元率が高ければ相応の給与を得られます。
還元率を理解することは、自分の給与が適正かを判断する上で欠かせません。以下では、還元率の計算方法と相場について解説していきます。
- 還元率の計算方法
- 還元率の相場
- マージンに含まれる費用
還元率の仕組みを把握することによって、企業選びの判断材料として活用できます。
還元率の計算方法
還元率は、エンジニアに支払われる給与をクライアント企業から受け取る単価で割ることによって算出されます。計算式は「還元率 = (総支給額 + 社会保険料 + 交通費など) ÷ 単価 × 100」となります。
| 項目 | 金額例 |
|---|---|
| 単価 | 60万円 |
| 総支給額 | 30万円 |
| 社会保険料(企業負担) | 4.5万円 |
| 交通費 | 1.5万円 |
| 還元額合計 | 36万円 |
| 還元率 | 60% |
企業によって還元率の計算に含める項目が異なるため、単純に総支給額だけで判断するのではなく、社会保険料や交通費なども含めた総額で評価する必要があります。所属企業に還元率を確認する際は、計算方法についても質問することをおすすめします。
還元率の相場
SES業界における還元率の相場は、一般的に50%から60%程度とされています。この水準は、企業が営業活動や管理業務、福利厚生などに一定のコストをかけていることを前提とした相場です。
| 還元率の分類 | 還元率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 低還元 | 50%未満 | マージンが多く エンジニアへの還元が少ない |
| 標準還元 | 50%〜60% | 業界平均的な水準 一般的なSES企業に多い |
| 高還元 | 70%〜80% | 営業コストを削減 エンジニア重視の企業 |
近年では、単価連動型の給与制度を採用し、還元率70%以上を実現する高還元SES企業も増えています。転職を検討する際は、還元率が公開されている企業を選ぶことによって、給与の透明性が高い環境で働けます。ただし、高還元企業は待機期間の保証が薄い場合もあるため、自分のキャリアステージに合わせて選択する必要があります。
マージンに含まれる費用
SES企業が単価から差し引くマージンには、エンジニアの給与以外に必要な経費が含まれています。マージンは企業の利益だけではなく、事業運営に欠かせない費用を賄うために設定されています。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 営業担当の人件費 | 案件獲得や交渉を行う営業スタッフの給与 |
| 管理部門の人件費 | 経理や総務など本社スタッフの給与 |
| オフィス維持費 | 家賃や光熱費などの固定費 |
| 待機期間の給与保証 | 案件が決まらない期間の給与支払い |
| 研修費用 | エンジニアのスキルアップ支援 |
| 福利厚生費 | 健康診断や各種手当の費用 |
| 企業利益 | 事業継続のための利益 |
マージン率が高い企業でも、充実した研修制度や待機期間の給与保証があれば、長期的にはエンジニアにとってメリットになる場合があります。逆に、マージン率が低くても福利厚生が乏しければ、トータルでの待遇は不利になることもあるため、還元率だけでなく福利厚生の内容も含めて総合的に判断することが大切です。
SES契約で手取りを増やす方法
SES契約で手取り額を増やすには、還元率の高い企業への転職、単価の高い案件への参画、商流の浅い企業の選択という3つのアプローチがあります。単価60万円でも還元率によって手取りに10万円以上の差が生まれるため、現在の待遇を見直す価値は十分にあります。
手取りを増やす方法として、以下の3つが効果的です。それぞれの方法には特徴があり、自分のキャリアステージや優先順位に応じて選択することによって、より高い収入を実現できます。
- 高還元率の企業に転職する
- 単価を上げるためにスキルアップする
- 商流の浅い企業を選ぶ
各方法について、具体的な取り組み方を解説していきます。
高還元率の企業に転職する
最も即効性のある方法は、還元率70%以上の高還元SES企業に転職することです。同じ単価60万円の案件でも、還元率が50%から70%に上がれば、手取りは月8万円から10万円増加します。
| 還元率 | 総支給額 | 手取り額(概算) | 差額 |
|---|---|---|---|
| 50% | 30万円 | 24万円 | - |
| 70% | 42万円 | 33万円 | +9万円 |
| 80% | 48万円 | 38万円 | +14万円 |
高還元企業は、営業担当を置かない、オフィスを持たずフルリモートにする、などの方法でコストを削減しています。転職活動では、企業が還元率を公開しているか、単価連動型の給与制度を採用しているかを確認することが重要です。ただし、待機期間の給与保証や研修制度が手薄な場合もあるため、福利厚生の内容も合わせて確認する必要があります。
単価を上げるためにスキルアップする
単価そのものを上げることは、還元率に関係なく手取りを増やせる方法です。単価が60万円から80万円に上がれば、還元率60%の場合でも手取りは約8万円増加します。
| 単価 | 還元率60%の総支給額 | 手取り額(概算) |
|---|---|---|
| 60万円 | 36万円 | 28万円 |
| 70万円 | 42万円 | 33万円 |
| 80万円 | 48万円 | 38万円 |
単価を上げるには、AWS認定資格やGCP資格などのクラウド系資格を取得する、上流工程の経験を積む、需要の高いプログラミング言語を習得する、といった方法が効果的です。特に要件定義や基本設計といった上流工程に携わることができれば、単価80万円以上の案件にも参画できる可能性が高まります。所属企業に単価交渉を行う際は、取得した資格や新たに担当できる業務範囲を具体的に示すことが説得力を高めます。
商流の浅い企業を選ぶ
商流が深い企業では、エンドクライアントから自社までの間に複数の企業が介在するため、中間マージンが抜かれて単価が下がります。商流の浅い企業に転職することによって、同じスキルでも単価が上がる可能性があります。
| 商流 | 単価の目安 | 還元率60%の手取り(概算) |
|---|---|---|
| 元請け(プライム) | 70万円〜 | 33万円〜 |
| 2次請け | 50万円〜 | 24万円〜 |
| 3次請け以降 | 40万円〜 | 19万円〜 |
元請け企業やプライム案件を多く扱う企業では、エンドクライアントと直接契約するため中間マージンがなく、高い単価を得られます。転職活動では、企業が何次請けの案件を扱っているか、プライム案件の比率はどれくらいかを確認することが重要です。ただし、元請け企業は経験年数やスキル要件が高い場合が多いため、まずは2次請けの企業でスキルを磨いてから、元請け企業への転職を目指すというステップも有効です。