SESでやる気が出ない原因
SES企業で働くエンジニアの多くが、日々の業務にやる気を感じられず悩んでいます。客先常駐という働き方は、様々な現場を経験できる反面、モチベーションを維持することが難しい環境でもあります。
SESでやる気が出なくなる原因として、以下の6つが挙げられます。
- 給料が低く努力が報われない
- 成長できている実感がない
- 帰属意識が薄れやすい
- 評価基準が不透明
- 案件がコロコロ変わる
- 人間関係を一から構築する必要がある
それぞれの原因には、SES特有の働き方や雇用形態が深く関わっています。自分がどの原因に当てはまるのかを把握することで、適切な対処法を見つけやすくなるでしょう。以下では、各原因について詳しく解説していきます。
給料が低く努力が報われない
SES企業では還元率が低く、どれだけ努力してもエンジニアに支払われる給料が相場より低くなる傾向があります。クライアント企業との契約単価が月80万円であっても、還元率が50%以下の場合、エンジニアの給料は40万円程度に抑えられてしまいます。
給料面での不公平感が大きくなる要因は以下のとおりです。
- 常駐先の正社員と同じ仕事をしても給与に大きな差がある
- 契約単価が上がっても自分の給料に反映されにくい
- 残業が多くても基本給が低いため年収が上がらない
- スキルを身につけても昇給の機会が限られている
同じIT業界で働く他のエンジニアと比較すると、SESエンジニアの平均年収は400万円以下とされ、一般的なシステムエンジニアの平均年収550万円を大きく下回ります。努力が報われないと感じることは、やる気の低下に直結する大きな要因となっています。
成長できている実感がない
SES企業では下流工程の業務が多く、テストや運用保守といった単純作業ばかりを任されることが少なくありません。新しい技術に触れる機会が限られるため、エンジニアとしての成長を実感できず、やる気を失いやすくなります。
成長実感を持てない状況として、以下が挙げられます。
- 同じ機能の保守対応ばかりで新しい技術に触れられない
- 開発の上流工程に携わる機会がない
- 難易度の高い業務はベテラン社員が担当し自分には回ってこない
- プログラミングスキルを活かせる案件に配属されない
エンジニアは仕事を通じてスキルが高まっていると感じられることで、達成感ややりがいを得られます。しかし日々の業務がルーチンワークばかりでは、自分の市場価値が上がっている実感を持てず、将来への不安からやる気が低下してしまいます。
帰属意識が薄れやすい
SES企業では客先常駐が基本となるため、自社のオフィスに出社する機会がほとんどありません。入社時の研修以降、一度も自社に行かないまま退職するケースもあり、自分がどこの会社に所属しているのかという感覚が希薄になりやすいです。
帰属意識が薄れる要因として、以下が挙げられます。
- 常駐先で働くため自社の同僚と顔を合わせる機会がない
- 会社のイベントや社内ニュースが自分とは関係ないものに感じる
- 一人で現場に入る場合は相談相手もなく孤独を感じやすい
- チームで常駐しても数ヶ月で別の現場に移動してしまう
会社への帰属意識が低いと、仕事に対する責任感やモチベーションも自然と低下します。常駐先の社員でもなく、かといって自社の一員としての実感も持てないという宙ぶらりんな状態が、やる気を失う大きな要因となっています。
評価基準が不透明
SES企業では、エンジニアが客先に常駐して働くため、日々の業務内容や成果が雇用元の会社に正確に伝わりにくいという課題があります。頑張って成果を出しても、それが適切に評価されているのか分からず、やる気を維持することが難しくなります。
評価が不透明になりやすい理由として、以下が挙げられます。
- 常駐先での働きぶりを自社の上司が直接見ることができない
- クライアント側の評価が自社に十分に伝わらない
- 評価面談の頻度が少なく具体的なフィードバックがない
- 昇給や昇進の基準が明確に示されていない
評価基準が明確であれば、どのスキルを伸ばせばよいかも分かりやすくなり、目標を持って業務に取り組めます。しかし評価が不透明なままでは、自分の努力が正当に認められているのか不安になり、モチベーションが下がってしまいます。
案件がコロコロ変わる
SES企業では、プロジェクトの契約期間が終了するたびに新しい案件に配属されるため、働く環境が頻繁に入れ替わります。数ヶ月から数年おきに常駐先が変わることで、扱う技術も毎回異なり、特定の分野に特化したスキルを身につけにくいです。
案件が変わることで生じる問題として、以下が挙げられます。
- 慣れた頃に次の案件に移動しなければならない
- 扱うプログラミング言語や技術が毎回変わるため勉強のし直しになる
- 器用貧乏なエンジニアになりやすく強みを作りにくい
- 通勤経路や職場環境が変わるたびに適応する必要がある
様々な現場を経験できることはメリットでもありますが、スキルが積み重ならず、いつまでも中途半端な知識しか身につかないと感じてしまいます。結果として年収も上がらず、永遠に客先常駐を続けることになるのではという不安から、やる気が失われていきます。
人間関係を一から構築する必要がある
案件が変わるたびに新しい職場で一から人間関係を構築しなければならないことも、SESでやる気が失われる大きな要因です。良好な人間関係を築いた頃には次の派遣先へ移動しなければならず、常に新しい環境に適応するストレスにさらされます。
人間関係の構築が負担になる理由として、以下が挙げられます。
- 常駐先のメンバーと信頼関係を築くまでに時間がかかる
- SES社員として扱われることで疎外感を感じやすい
- 困ったことがあっても誰に相談すればよいか分からない
- 職場のストレスの約25%は人間関係によるものとされている
コミュニケーション能力が高い人でも、毎回新しい職場で関係性を築き直すのは精神的に消耗します。悩み事を相談できる相手が職場にいないと、孤独感が増し、仕事へのモチベーションも大きく低下してしまいます。
SESでやる気を出す方法
SESでやる気が出ない状況に陥っても、考え方や行動を変えることでモチベーションを回復できる可能性があります。完全に環境を変える前に、まずは自分自身でできる工夫を試してみることが大切です。
やる気を出すための方法として、以下の5つがあります。
- スキルアップの場と割り切る
- 自分の市場価値を定期的に確認する
- キャリアビジョンを明確にする
- 同じ志を持つ仲間とつながる
- 小さな成功体験を積み重ねる
これらの方法は、SESという環境を前向きに捉え直すことで、やる気を取り戻すアプローチです。全てを試す必要はなく、自分に合いそうなものから実践してみましょう。以下では、各方法について具体的に解説していきます。
スキルアップの場と割り切る
SESでやる気が出ない時は、現在の環境を将来のための修行の場と割り切って考えることが効果的です。様々な現場を経験できるSESの特性を活かし、今は自分の市場価値を高めるための期間だと捉えることで、モチベーションを維持しやすくなります。
スキルアップを最優先にする考え方として、以下が挙げられます。
- 担当案件で使用している技術を深く学習する
- 業務外で新しいプログラミング言語を習得する
- 個人開発プロジェクトに取り組む
- 技術セミナーやカンファレンスに参加する
- 資格取得に挑戦する
エンジニアは実力重視の職業であるため、ITスキルを習得できれば転職や年収UPに繋がりやすいです。現在の案件内容に不満があっても、そこで学べることを最大限吸収し、次のキャリアステップに活かすという姿勢を持つことで、やる気を保ちやすくなります。
自分の市場価値を定期的に確認する
SESで働いていると、自分のスキルや経験が正当に評価されているのか不安になることがあります。定期的に自分の市場価値を確認することで、客観的な評価を知ることができ、自信を取り戻すきっかけになります。
市場価値を確認する方法として、以下が挙げられます。
- 転職サイトのスカウト機能を活用する
- 転職エージェントに相談してみる
- 同じスキルセットを持つエンジニアの年収相場を調査する
- 技術スキルの診断サービスを利用する
実際に転職するつもりがなくても、自分の市場価値をチェックすることで、今の自分にはこれだけの価値があるという実感が得られます。また市場価値を高めるために必要なスキルが明確になれば、学習の方向性も定まり、より効率的なスキルアップが可能になるでしょう。
キャリアビジョンを明確にする
SESでやる気が出ない原因の一つは、将来の目標が曖昧なことです。明確なキャリアビジョンを持つことで、目の前の仕事が将来への一歩だと捉えられるようになり、モチベーションを維持しやすくなります。
キャリアビジョンを描く具体例として、以下が挙げられます。
- 3年後には独力で開発プロジェクトメンバーとして役割を果たす
- 5年後にはチームリーダーとしてメンバーを牽引する
- 10年後にはプロジェクトリーダーとして全体をまとめる
- 専門性を高めて高単価のスペシャリストになる
- フリーランスとして独立する
自分がどのキャリアパスを目指すのかによって、今身につけるべきスキルや経験も変わってきます。長期的な目標を持ち、それを意識しながら仕事に取り組むことが、SESでのモチベーション維持につながります。
同じ志を持つ仲間とつながる
SESエンジニアは客先常駐という働き方のため、孤独を感じやすい環境にあります。技術的な話題を共有できる仲間とつながることで、新しい知識を得られるだけでなく、モチベーションも高め合うことができます。
仲間とつながる方法として、以下が挙げられます。
- 技術コミュニティやミートアップに参加する
- SNSで同業者とつながる
- 社内の勉強会や交流会に積極的に参加する
- オンライン上の技術フォーラムで情報交換する
技術コミュニティへの参加は、同じ悩みを持つ仲間と出会える貴重な機会です。自分だけが苦労しているわけではないと知ることで、精神的な支えになることも多いでしょう。またコミュニティ活動を通じて人脈を広げることは、将来のキャリアチェンジや転職の際にも大きな助けになります。
小さな成功体験を積み重ねる
長期的なモチベーション維持には、小さな成功体験を積み重ねることが非常に効果的です。大きな目標だけを見ていると達成までの道のりが長く感じられますが、小さなステップに分解して一つずつクリアしていくことで、着実に前進している実感が得られます。
小さな成功体験を作る方法として、以下が挙げられます。
- 大きな目標を細かいマイルストーンに分ける
- 日々の業務で改善できる小さなポイントを見つける
- 短期間で完了できる個人プロジェクトに取り組む
- 学んだ技術を実際に使ってみる機会を作る
- 達成したことを記録し振り返る習慣をつける
AWS認定資格の取得という大きな目標があるなら、まずはEC2の基本を理解する、S3の使い方をマスターするといった小さなステップに分けて、一つずつクリアしていきます。小さな成功体験を積み重ねることで、自分にもできるという自己効力感が高まり、さらに大きな挑戦へのモチベーションにつながります。
SESでやる気が出ない時の選択肢
様々な方法を試してもやる気が回復しない場合は、働き方そのものを見直すことも必要です。無理に今の環境で頑張り続けるよりも、自分に合った働き方を探すことが、長期的なキャリア形成において重要になります。
やる気が出ない時の選択肢として、以下の4つがあります。
- 別の案件に異動を申し出る
- 高還元SESへの転職を検討する
- 自社開発や社内SEへの転職を目指す
- SESを続けるか辞めるかを判断する
それぞれの選択肢には、メリットとデメリットがあります。自分の状況やキャリアプランに照らし合わせて、最適な選択肢を選ぶことが大切です。以下では、各選択肢について詳しく解説していきます。
別の案件に異動を申し出る
SESという働き方自体は嫌いではないけれど、現在の案件や常駐先が合わない場合は、別の案件に異動させてもらうよう会社に申し出ることが効果的です。案件を変えるだけでやる気を取り戻せる可能性があります。
異動を申し出る際のポイントとして、以下が挙げられます。
- SES自体は続けたいという意思を明確に伝える
- 現在の案件でどのような点が合わないのか具体的に説明する
- 自分が希望する技術や業務内容を整理しておく
- 営業担当やマネージャーに早めに相談する
案件が合わないだけでSESを辞めてしまう人も多いため、会社としては続ける意思を持ってくれているのであれば、極力希望に沿った対応をとろうとするはずです。人間関係や現在携わっている業務内容が原因でやる気を失っているなら、環境を変えるだけで問題が解決する可能性があります。
高還元SESへの転職を検討する
現在のSES企業で給料が低くやる気が出ない場合は、還元率の高いSES企業への転職を検討することで、モチベーションを回復できる可能性があります。還元率70%以上の高還元SESであれば、同じ客先常駐でも年収が大きく変わります。
| 企業タイプ | 還元率 | 月収例(契約単価100万円の場合) |
|---|---|---|
| 一般的なSES企業 | 40%から60% | 40万円から60万円 |
| 高還元SES企業 | 70%以上 | 70万円以上 企業によっては80万円を超えることもある |
高還元SES企業では、案件単価が高くなるほど自分の月収も上がるため、努力が結果に繋がりやすくモチベーションを保ちやすいです。SESという働き方は続けたいが給料面で不満がある場合、高還元SESへの転職は有効な選択肢となります。
自社開発や社内SEへの転職を目指す
SESでやる気が出ず、客先常駐という働き方そのものに疲れてしまった場合は、自社開発企業や社内SEへの転職を目指すことで、働き方を大きく変えられます。それぞれにメリットとデメリットがあるため、自分に合った選択をすることが重要です。
| 転職先 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 自社開発企業 | システム開発の上流工程に携われる 年収が上がる可能性が高い レベルの高いプログラミングスキルが身につく |
求められるスキルレベルが高い 汎用性の低いスキルが身につく場合もある |
| 社内SE | ワークライフバランスが整っている システム開発の上流工程に携われる 有給申請がしやすく休みも取りやすい |
プログラミングスキルが身につきにくい 社内調整が必要でコミュニケーション能力が求められる |
SESで培った経験を活かしながら、より自分に合った働き方を選ぶことで、やる気を取り戻せる可能性が高まります。転職エージェントに相談して、自分のスキルや希望に合った企業を紹介してもらうことをおすすめします。
SESを続けるか辞めるかを判断する
様々な方法を試してもやる気が回復せず、心身の健康に支障をきたしそうな場合は、SESを辞めることも視野に入れる必要があります。無理に続けることで体調を崩してしまっては本末転倒です。
SESを続けるか辞めるかを判断する基準として、以下が挙げられます。
- 給料や待遇の改善見込みがあるか
- スキルアップできる案件に配属される可能性があるか
- 会社が自分のキャリアプランを理解し支援してくれるか
- 心身の健康を保って働き続けられるか
SESを辞めた後の選択肢としては、Web系や大手SIerへの転職、社内SEへの転職、フリーランスとしての独立、異業種への転職などがあります。働きながら転職活動をすることで、選択肢があるという安心感自体が、現在の仕事へのモチベーションアップにつながることもあります。