SES契約における待機期間の最長はどれくらいか
SES契約における待機期間は、次の常駐先が決まるまでの空白期間を指し、エンジニアにとって不安な時間となります。業界全体の目安を理解しておくことで、自分の置かれた状況が正常なのか、それとも異常なのかを判断できます。
待機期間の長さについて、業界では以下の3つの基準が存在します。それぞれの期間が持つ意味を理解することによって、適切な対応を取れます。
- 業界平均は長くても1か月程度
- 3ヶ月以上は長期化のサイン
- 半年から1年は異常な状態
各期間の詳細について、以下で解説していきます。
業界平均は長くても1か月程度
SES契約における待機期間の業界平均は、長くても1か月程度とされています。多くの場合、前の案件終了が事前に分かっているため、その間に次の案件が見つかり、待機期間自体が発生しないか、発生しても数日から数週間程度で収まるケースがほとんどです。
営業力が高く取引案件が豊富な企業では、エンジニアをすぐに別案件にアサインできるため、待機は極力発生しません。極端な例では、エンジニア総稼働時間に対する待機時間の割合が1%程度という、待機がほぼ発生しない企業も存在します。
SES企業では1ヶ月前に案件期間終了がわかるため、約30日の間に次の常駐先を探します。早めに行動できれば、待機期間を防ぐことが可能で、理想的には待機期間ゼロで連続して稼働するケースも多いでしょう。
3ヶ月以上は長期化のサイン
待機期間が3ヶ月以上続く場合、長期化のサインと判断すべきです。新人や未経験エンジニアの場合、平均して待機期間が長引く傾向があり、スキル不足で案件が決まりにくいため、3ヶ月以上待機になるケースも珍しくありません。
実際に4ヶ月間も待機したという新卒社員の事例も報告されており、そのエンジニアは待機中に難関資格を取得してようやく配属が決まったというケースもあります。経験の浅い人ほど待機が長期化しやすく、企業の営業力不足や市場動向の影響も受けやすい傾向にあるでしょう。
取引先が少なかったり、案件パイプラインが弱い企業では、案件間のブランクが埋まらず、待機が頻発し長期化します。特に景気や案件需要が低迷している時期は、複数の社員が1ヶ月以上待機状態に置かれるケースもあり、3ヶ月以上の待機は会社側の問題を疑うべきレベルです。
半年から1年は異常な状態
待機期間が半年から1年にも及ぶケースは、業界でも異常であり、営業力不足など会社側の問題を強く疑うべきレベルです。このような長期待機は、取得している案件数が不足していることや、クライアント企業の開拓が進んでいないことを意味します。
待機期間が半年を超える場合、会社に営業力がないか、相場より高い金額で営業されているか、所属する会社の評判が悪い可能性が高いでしょう。何の説明もなく待機期間が半年以上続くなら、会社に問題があると判断し、早めに転職の準備を始めることが賢明です。
案件の紹介がなく、面談もないまま半年を超える状況は、エンジニアにとって大きなキャリアの停滞を招きます。長期待機が続くほど、実務を通じたスキル習得や経験蓄積の機会が減少し、市場価値の低下につながるため、速やかに行動を起こすことが大切です。
SES契約における待機期間中の給与の扱い
SES契約における待機期間中の給与は、エンジニアにとって最も気になるポイントの1つです。雇用契約が継続している限り、基本的には給与の支払い義務が発生しますが、実際の支給内容は待機方法によって大きく異なります。
待機期間中の給与について、以下の3つのパターンが存在します。それぞれの待機方法における給与の取り扱いを理解することによって、自分の権利を守れます。
- 社内待機は給与100%支給
- 自宅待機は給与60%の可能性
- 無給は違法
各パターンの詳細について、以下で解説していきます。
社内待機は給与100%支給
社内待機とは、客先案件が終了した後、一時的に自社へ戻って業務に従事している状態を指します。エンジニアは自社オフィスでの研修や社内開発業務に参加するため、労働実態があり、給与は基本的に満額支給されるのが原則です。
出社して業務に従事するため、給与は100%支払われ、通勤交通費や各種手当も支給対象となるケースが一般的です。社内研修、技術勉強会、社内ツール開発、後輩育成、ドキュメント整備などの業務を行い、待機も仕事のうちとみなされます。
ただし、社内待機が長引き稼働率が低下した場合、評価査定に影響が出ることもある点には留意が必要です。賞与査定や昇給判断では、どれだけ現場で売上を立てたかが重視されるため、待機期間中の行動次第でキャリアに差が出ることもあるでしょう。
自宅待機は給与60%の可能性
自宅待機とは、自宅で次の案件のアサインを待つ期間で、業務指示がない限り労働実態なしと見なされます。SES企業が待機を勤務扱いとしているか、休業扱いとしているかによって、給与の支給額が異なる点に注意が必要です。
自宅待機を勤務扱いとする企業では、給与は100%支給されます。一方、自宅待機を休業扱いとする会社では、労働基準法第26条に基づき、平均賃金の60%以上の休業手当を支給することが最低ラインとなり、給与は60%以上での支給です。
ブラック企業では、この休業手当すら正しく支払われないケースが存在し、休業扱いなのに無給や手当カットといった状態に陥るリスクもあります。会社が在宅勤務とみなし、スキル学習や日報提出を義務づけている場合には、労働実態ありと判断され満額支給されることもあるため、就業規則や給与規定を確認することが重要です。
無給(給料なし)は違法
待機期間中の給与がまったく支給されない状況は、明確に労働基準法違反であり違法です。正社員で待機期間中に無給とする対応は、法律上認められておらず、すぐにでも労働基準監督署への相談や転職を検討すべきレベルといえます。
待機期間中も雇用関係が継続している限り、社会保険の加入はそのまま維持されます。健康保険、厚生年金、雇用保険などは通常どおり、会社と本人が保険料を負担し続けるため、仮に給与が減額されていても保険料控除は発生する点に留意が必要です。
契約形態が有期雇用や業務委託のような場合には、プロジェクトに参画していない期間は契約そのものが無いため給与発生しないこともありえます。フリーランス契約や完全歩合制のSESの場合、稼働がなければ収入ゼロになる点に注意が必要で、待機中に有給休暇の消化を促される場合もあるでしょう。
SES契約で待機期間が発生する原因
SES契約で待機期間が発生する背景には、明確な原因が存在します。待機期間は運が悪かっただけではなく、会社側の問題やエンジニア側の状況によって引き起こされるケースがほとんどです。
待機期間が発生する原因として、以下の3つが挙げられます。それぞれの原因を理解することによって、次の打ち手が明確になり、待機期間を短縮できます。
- 次の常駐先が決まらない
- 契約が突然終了した
- 入社直後で案件が決まらない
各原因の詳細について、以下で解説していきます。
次の常駐先が決まらない
現在の常駐先での契約終了予定が決まっているにもかかわらず、次の常駐先が決まらないケースは、待機期間が発生する最も一般的な原因です。営業担当が紹介できる配属先がない場合や、紹介を受けた配属先の面接に落ちてしまった場合には、待機期間が発生することになります。
取引先や案件数が少ないSES企業では、営業先が少ないために次の常駐先を決められず、待機期間が発生しやすくなります。エンジニアの希望やスキルと合致する案件が見つからない場合や、クライアント企業との条件交渉に時間がかかることもあり、自社または自宅で待機する現象は珍しくありません。
SES面談で不採用となると、案件が成立せず待機状態に移行します。技術スキルだけではなく、報連相の姿勢や受け答え、雰囲気といったソフトスキルも重視されるため、準備不足は即不採用につながり、待機期間を長引かせる要因となるでしょう。
契約が突然終了した
SES契約では、エンジニアの常駐期間があらかじめ定められていますが、契約期間の途中で終了する場合があります。クライアント企業のプロジェクトが予定より早期終了したり、予算の都合で契約を打ち切られたりなど、エンジニアがトラブルを起こした場合に発生するケースです。
どれだけ順調に稼働していたとしても、クライアントの都合による予算カット、方針転換、プロダクト終了などで突如プロジェクトが打ち切られるケースも珍しくありません。特に短期契約の案件や大手下請け構造の中間SESでは、こうした不確定要素がつきものです。
突然契約終了が発生してしまうと、営業担当が次の常駐先を探すことすら間に合わなくなり、待機期間が生じることになります。突発終了の場合、営業担当にも準備期間がなく、エンジニアは一時的に待機へ移行せざるを得ない状況に陥るでしょう。
入社直後で案件が決まらない
SESでは常駐先と面談をおこない、双方が問題なければ現場が決まります。そのため入社後は自宅や社内で待機し、面談が入れば対応する流れとなり、入社してからエンジニアのスキルや希望を聞いて常駐先の候補を探すのが一般的です。
新卒や未経験エンジニアは、入社後は研修を受けながら面談に参加します。ただし研修期間中に常駐先が決まらないと待機となってしまい、新人や未経験エンジニアの場合、平均して待機期間が長引く傾向があり、スキル不足で案件が決まりにくいため、3ヶ月以上待機になるケースも珍しくありません。
技術スキルが案件の要求レベルに達していない場合、そもそもアサインできる案件自体が存在しないため、営業担当も紹介ができず待機が続く事態になります。近年はクラウドやモダン開発のニーズが増しており、一昔前の技術しか触っていないと候補に挙がることすら難しくなり、待機期間が長期化する要因となるでしょう。
SES契約で待機期間中に何をするべきか
SES契約における待機期間は、次の案件に向けた準備期間として捉えることが重要です。この期間を有効活用するかどうかで、今後のキャリアに大きな差が生まれるため、積極的に行動することが求められます。
待機期間中にすべきこととして、以下の3つが挙げられます。それぞれの取り組みを実践することによって、次の案件獲得の可能性が高まり、キャリアアップにもつながります。
- スキルアップのための学習
- 資格取得の準備
- 職務経歴書の更新
各取り組みの詳細について、以下で解説していきます。
スキルアップのための学習
待機期間中は、まとまった時間が取れる貴重な機会であるため、スキルアップのための学習に充てることが最も効果的です。現場では忙しくて触れられなかった新しい言語やフレームワークを学ぶことで、次の案件獲得の可能性が高まり、市場価値の向上にもつながります。
オンライン教材や技術書で勉強したり、小規模な個人開発プロジェクトを立ち上げて手を動かすことで、スキルアップと実績作りにつながります。給与をもらいながら勉強できる貴重な機会と捉えれば、待機期間も非常に有意義な時間となるでしょう。
クラウドやモダンフロント、IaC技術など、次案件で需要の高い技術領域を狙うことが推奨されます。1日1コミットをGitHubに残すことで、学習ログが成長証明となり、社内Slackや社内ツールに進捗を共有すれば、営業担当や上司の目にも止まりやすく、待機期間中もしっかり自己研鑽しているという評価につながるでしょう。
資格取得の準備
待機期間中に、IT関連資格の勉強を進めることも有意義な取り組みです。基本情報技術者や応用情報技術者などの国家資格、またAWS認定やOracle資格などのベンダー資格に挑戦することで、知識の体系化と客観的なスキル証明が得られます。
資格が全てではありませんが、取得しておけば現場面談で高く評価される場合もあり、実際に待機中に難関資格を取得し、そのアピールが次の案件獲得の決め手となったケースも報告されています。履歴書に記載できるIT資格が取れれば、案件に決まりやすくなるため、案件待機期間も短縮されやすいでしょう。
短期で取得しやすいAWS CLFやLinuC Lv1などの資格が人気です。社内待機のときにスキルアップの勉強に取り組むことで、次の案件への準備が整い、待機期間を成長のブースト期間として活用できます。
職務経歴書の更新
SES契約における待機期間中は、職務経歴書の見直しや修正を行うことが重要です。案件待機中は定期的にSES面談があるため、職務経歴書を準備しておく必要があり、職務経歴書の質を高めておくことで、案件に決まりやすくなります。
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