Webデザイナーとしてのキャリアをスタートさせたい方の中には、SES企業への就職を検討している方も多いでしょう。特に未経験者向けの求人では「未経験OK」「研修あり」といった魅力的な文言が並び、SESでWebデザインの経験を積もうと考える方もいるかもしれません。
しかし、SES企業でWebデザイナーとして実務経験を積むことは、実際には多くのリスクを伴います。デザインとは全く関係のない業務に派遣されたり、収入が低かったり、スキルアップの機会が限られていたりするケースが少なくありません。
この記事では、WebデザイナーがSESで経験を積むことについて、メリットとデメリットを詳しく解説し、SES以外で確実にスキルを身につける方法も紹介していきます。
WebデザイナーがSESで経験を積むデメリット
WebデザイナーがSESで経験を積むことには、多くのデメリットが存在します。特に未経験者がSESに就職すると、Webデザインの実務経験を積めないまま時間を無駄にしてしまうリスクが高いです。
SESで経験を積む主なデメリットは、以下の6つです。
- デザインと無関係な仕事に派遣される
- コールセンターや事務作業をさせられる
- 収入が一般社員より低い
- 職場環境が頻繁に変わる
- 自社との交流が少ない
- 暇な時間が多くスキルが身につかない
これらのデメリットは、Webデザイナーとしてのキャリア形成に大きな影響を与えます。それぞれの項目について、詳しく解説していきます。
デザインと無関係な仕事に派遣される
SESの最大のデメリットは、Webデザインとは全く関係のない業務に派遣される可能性があることです。特に未経験者の場合、デザイン案件ではなく、まったく別の職種に配置されることが多く報告されています。
デザインと無関係な仕事の例は以下のとおりです。
- 家電量販店での販売スタッフ
- 携帯ショップでの接客業務
- PCキッティング(初期設定)作業
- ヘルプデスクでの電話対応
これらの業務では、Webデザインのスキルを活かすことも、実務経験を積むこともできません。SES企業は、クライアント企業に人材を派遣することで利益を得るため、業務内容よりも派遣することを優先する傾向があります。
コールセンターや事務作業をさせられる
Webデザイナーとして採用されても、コールセンターや一般事務などの単純作業に従事させられるケースがあります。これは、SES企業がデザイン案件を確保できない場合に、別の案件に無理やりアサインすることで発生します。
コールセンターや事務作業の例は以下のとおりです。
- テクニカルサポートの電話対応
- 顧客からの問い合わせ対応
- データ入力やExcelでの集計作業
- 書類整理や資料作成などの庶務
このような業務に長期間従事すると、Webデザイナーとしてのスキルが全く向上しません。実務経験としても評価されにくく、次の転職活動でも不利になってしまいます。
収入が一般社員より低い
SESのWebデザイナーは、制作会社や事業会社の正社員と比較して、収入が低い傾向にあります。SES企業はクライアント企業から受け取る報酬の一部を中間マージンとして差し引くため、デザイナーに支払われる給与が少なくなります。
SESと一般企業の収入差を以下の表にまとめました。
| 雇用形態 | 未経験時の年収目安 |
|---|---|
| 一般企業の正社員 | 300万円から350万円 |
| SESのWebデザイナー | 240万円から300万円 |
クライアント企業が月額80万円でSES企業に支払っていても、中間マージンを差し引かれた結果、デザイナー本人には月20万円程度しか支払われないケースもあります。収入面で不満を感じて転職を考えるSESデザイナーは非常に多いです。
職場環境が頻繁に変わる
SESでは、プロジェクトが終了するたびに常駐先が変わります。短い場合は3ヶ月程度で別の企業に移ることもあり、職場環境の変化に適応し続ける必要があります。
職場環境の変化で影響を受けることは以下のとおりです。
- 通勤時間や交通手段が変わる
- オフィスの雰囲気や文化に適応する必要がある
- 新しい人間関係を毎回構築しなければならない
- 企業ごとに異なるツールやシステムを覚える
環境の変化をポジティブに捉えられる人には問題ありませんが、安定した環境で働きたい人にとってはストレスの原因になります。常に新しい環境に適応し続けることは、精神的にも負担が大きいです。
自社との交流が少ない
SESのWebデザイナーは、ほとんどの時間をクライアント企業で過ごすため、自社の社員と顔を合わせる機会がほとんどありません。自社との交流は、月に一度の定例会や年に数回の懇親会程度に限られます。
自社との交流が少ないことで生じる問題は以下のとおりです。
- 会社への帰属意識が薄れる
- 相談できる相手がいない
- キャリアの方向性を見失いやすい
- 孤独感を感じやすい
常駐先での業務に集中するあまり、自分がどの会社に所属しているのか分からなくなることもあります。また、業務上の悩みや不安を相談できる相手が近くにいないため、精神的に孤立しやすい環境です。
暇な時間が多くスキルが身につかない
SESでは、プロジェクトの進行状況によって暇な時間が発生しやすいです。次の案件が決まらない待機期間や、常駐先で放置されて仕事がない状態が続くことがあります。
暇な時間が発生する主な理由は以下のとおりです。
- プロジェクトが早期に終了して次の案件待ちになる
- 常駐先で業務を与えられず放置される
- スキル不足で任せられる仕事がない
- 繁忙期と閑散期の差が激しい
Webデザイナーは実務を通じてスキルを磨いていくため、暇な時間が多いとスキルアップの機会を失います。客先常駐の環境では、勉強や自己研鑽にも制限があり、ただ時間が過ぎるのを待つだけになってしまいます。
WebデザイナーがSESで経験を積むメリット
WebデザイナーがSESで経験を積むことには、デメリットだけでなくメリットも存在します。環境の変化をポジティブに捉えられる人や、多様な経験を積みたい人にとっては、SESが適している場合もあります。
SESで経験を積む主なメリットは、以下の6つです。
- 多様な案件に携わることができる
- 現場の雰囲気を味わえる
- 人脈やコネを作りやすい
- 正社員として雇用される
- 孤独な環境でメンタルが強くなる
- 幅広いデザインスキルが身につく
これらのメリットは、人によっては大きな価値を持ちます。それぞれの項目について、詳しく解説していきます。
多様な案件に携わることができる
SESでは、プロジェクトごとに異なる業種や規模の企業で働くため、多様な案件に携わることができます。一つの会社に所属しているだけでは経験できない、幅広い業界のWebデザインに関わることができます。
SESで経験できる案件の例は以下のとおりです。
- 大手企業のコーポレートサイト制作
- スタートアップ企業のサービスサイト制作
- ECサイトのデザインリニューアル
- 業界特化型のWebメディア制作
様々な業界や規模の案件に関わることで、Webデザイナーとしての引き出しが増えます。特定の業界に偏らず、幅広い経験を積みたい人にとっては、SESの働き方が合っている可能性があります。
現場の雰囲気を味わえる
SESでは、クライアント企業のオフィスで実際に働くため、その企業の雰囲気や文化を直接体験できます。受託制作会社では味わえない、事業会社の現場の空気を感じながら仕事ができます。
現場の雰囲気を味わうメリットは以下のとおりです。
- 企業ごとの働き方の違いを学べる
- 様々な企業文化に触れられる
- 有名企業の社員と同じ空間で働ける
- 業界の最新トレンドを肌で感じられる
大手企業の最新オフィスで働いたり、成長中のスタートアップ企業の熱気を感じたりと、企業ごとに異なる雰囲気を体験できます。このような経験は、自分の価値観や働き方を見つめ直すきっかけにもなります。
人脈やコネを作りやすい
SESでは、プロジェクトごとに異なる企業で働くため、多くの人と出会う機会があります。クライアント企業の社員やエンジニア、デザイナーなどと関わることで、幅広い人脈を構築できます。
SESで人脈を広げるメリットは以下のとおりです。
- 様々な企業の人と知り合える
- フリーランス独立時に案件を紹介してもらえる
- 転職活動で有利になる
- 業界の情報交換ができる
実際に、SESで常駐していたWebデザイナーがフリーランスに独立する際、常駐先のクライアントから直接契約の話を持ちかけられるケースもあります。人脈を広げたい人にとっては、SESは有効な選択肢の一つです。
正社員として雇用される
SESは、派遣とは異なり、SES企業の正社員として雇用されます。登録型派遣のように契約が途切れることはなく、安定した雇用形態で働くことができます。
正社員として雇用されるメリットは以下のとおりです。
- 社会保険に加入できる
- 雇用が安定している
- ボーナスや福利厚生を受けられる
- キャリアの空白期間ができない
現在アルバイトやパート、フリーターで働いている人にとっては、正社員雇用という点だけでもメリットがあります。ただし、SES企業によっては待遇が悪い場合もあるため、企業選びは慎重に行う必要があります。
孤独な環境でメンタルが強くなる
SESでは、常に新しい環境で働くため、精神的な強さが求められます。知らない人ばかりの環境で働くことで、コミュニケーション能力やメンタルの強さが鍛えられます。
孤独な環境で得られる成長は以下のとおりです。
- 初対面の人とすぐに打ち解けられるようになる
- ストレス耐性が向上する
- どんな環境でも適応できる柔軟性が身につく
- 自立心が育つ
常にアウェーの環境で働くことは、精神的に負荷がかかりますが、その分社会人として必要なスキルが磨かれます。ただし、人見知りの人やメンタルが弱い人には、SESの環境は向いていません。
幅広いデザインスキルが身につく
SESでは、案件ごとに求められるスキルが異なるため、幅広いデザインスキルを身につけることができます。一つの企業で同じ業務を繰り返すよりも、多様な経験を通じてスキルアップできる可能性があります。
SESで身につくスキルの例は以下のとおりです。
- 様々なデザインツールの使用経験
- 異なる業界のデザイン手法
- HTMLやCSSなどのコーディングスキル
- プロジェクト管理やディレクションスキル
案件ごとに使用するツールや手法が変わるため、常に新しい知識を吸収する必要があります。飽き性な人や、様々なスキルを身につけたい人にとっては、SESの働き方が合っている可能性があります。
WebデザイナーがSES以外で経験を積む方法
SESにはデメリットが多いため、Webデザイナーとしてのキャリアをスタートさせるなら、SES以外の方法で経験を積むことをおすすめします。未経験からでも、適切な方法を選べば、確実にスキルを身につけて就職することができます。
SES以外で経験を積む方法は、以下の5つです。
- Webデザインスクールで学ぶ
- 副業で案件を受注する
- Web制作会社に就職する
- 事業会社に就職する
- 転職エージェントを活用する
これらの方法は、SESよりも確実にWebデザインの実務経験を積むことができます。それぞれの項目について、詳しく解説していきます。
Webデザインスクールで学ぶ
未経験からWebデザイナーを目指すなら、まずWebデザインスクールでスキルを身につけることが重要です。スクールで基礎から応用まで学ぶことで、就職活動で有利になります。
Webデザインスクールで学ぶメリットは以下のとおりです。
- 基礎から体系的に学べる
- ポートフォリオ作成のサポートを受けられる
- 就職支援や転職サポートがある
- 現役デザイナーから指導を受けられる
スクールで2〜3ヶ月しっかり学べば、未経験でもWeb制作会社や事業会社に就職できるレベルのスキルを習得できます。独学よりも効率的で、挫折しにくい点もスクールの大きなメリットです。
副業で案件を受注する
Webデザインの基礎スキルを身につけたら、副業で実際の案件を受注することをおすすめします。実務経験を積みながら収入も得られるため、就職活動でも高く評価されます。
副業で案件を受注するメリットは以下のとおりです。
- 実務経験を積める
- 月5万円から10万円程度の副収入が得られる
- ポートフォリオに実績を追加できる
- クライアントとのやり取りを経験できる
クラウドソーシングサイトや知人からの紹介で案件を受注し、実際にWebサイトやバナーを制作することで、スキルが大きく向上します。副業での実績は、転職活動でも強力なアピールポイントになります。
Web制作会社に就職する
未経験からWebデザイナーを目指すなら、Web制作会社への就職が最もおすすめです。制作会社では、様々な案件に携わりながら、先輩デザイナーから指導を受けてスキルを磨くことができます。
Web制作会社に就職するメリットは以下のとおりです。
- 確実にWebデザインの実務経験を積める
- 先輩デザイナーから直接指導を受けられる
- 様々なクライアントの案件に関われる
- キャリアアップの道筋が明確
制作会社では、デザインだけでなくコーディングやディレクションのスキルも身につけることができます。SESと違い、デザイン以外の業務に飛ばされる心配もありません。
事業会社に就職する
事業会社のWebデザイナーとして就職するのも、有力な選択肢の一つです。事業会社では、自社サービスのデザインに携わるため、一つのプロジェクトを長期的に担当できます。
事業会社に就職するメリットは以下のとおりです。
- 安定した環境で働ける
- 一つのサービスを深く理解できる
- ユーザーの反応を直接見られる
- 給与水準が高い傾向がある
事業会社では、制作会社のように多様な案件に関わることはできませんが、一つのサービスのデザインを突き詰めることができます。安定志向の人や、特定の業界に興味がある人には、事業会社への就職が向いています。
転職エージェントを活用する
SES以外の企業に就職するには、転職エージェントの活用が効果的です。エージェントはWeb業界に詳しく、未経験OKの求人も多数取り扱っているため、効率的に転職活動を進められます。
転職エージェントを活用するメリットは以下のとおりです。
- 非公開求人に応募できる
- 面接対策や履歴書添削のサポートを受けられる
- 企業の内部情報を教えてもらえる
- SES企業を避けられる
エージェントに相談すれば、SES企業を避けて、確実にWebデザインの実務経験を積める企業を紹介してもらえます。無料で利用できるため、転職活動を始める際は、必ず登録しておくことをおすすめします。
