SES企業で副業は禁止?法律や規定の実態、対処法などを解説

SES企業で副業は禁止?法律や規定の実態、対処法などを解説

SES企業で働くエンジニアの中には、収入を増やすために副業を検討している方も多いでしょう。しかし、自分が勤めるSES企業で副業が禁止されているのではないかと不安を感じている方もいるはずです。

実際、多くのSES企業では就業規則で副業を制限しており、無断で副業を行うと懲戒処分を受けるリスクがあります。一方、法律的には副業を禁止すること自体が違法とされるケースもあり、実態は複雑です。

この記事では、SES企業における副業禁止の実態と法的な位置づけ、副業が禁止されている場合の対処法、副業規定の確認方法、副業する際の注意点、副業がバレた場合のリスク等について詳しく解説していきます。

SESの副業禁止規定の実態

SESの副業禁止規定の実態

SES企業における副業禁止の実態は、企業によって大きく異なります。副業を完全に禁止している企業もあれば、一定の条件下で認めている企業もあり、その判断は各企業の経営方針によって決定されています。

副業禁止の実態について、以下3つの観点を考慮する必要があります。

  • 副業を禁止しているSES企業は多い
  • 副業禁止は法律的には違法
  • 雇用が発生する副業が禁止されるケースが多い

それぞれの実態を理解することによって、自社の副業規定がどのような背景で設定されているのかを把握できます。以下では各観点について詳しく解説していきます。

副業を禁止しているSES企業は多い

SES企業の多くは、就業規則で副業を禁止しています。特に中小規模のSES企業では、副業を認めていないケースが目立ちます。

副業を禁止する主な理由として、以下の点が挙げられます。

  • 本業への集中力低下を防ぐため
  • 過重労働による健康被害や業務ミスを避けるため
  • 顧客先での勤務態度や品質に悪影響が出るリスクを回避するため
  • 情報漏洩や利益相反のリスクを未然に防ぐため

一方で、厚生労働省が公表する「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、企業に対して副業を認める方向での検討を促しています。このため、最近では副業を許可制や届出制に変更するSES企業も増えつつあります。

副業禁止は法律的には違法

日本国憲法第22条では、職業選択の自由が保障されています。このため、就業規則で副業を一律に禁止することは、法律的には違憲とされる可能性があります。

労働基準法に照らし合わせると、以下の原則が適用されます。

  • 労働時間外の時間の使い方は、原則として労働者の自由
  • 本業に支障をきたさない限り、副業を制限する法的根拠は薄い
  • 企業が副業を禁止できるのは、正当な理由がある場合のみ

実際の裁判例では、企業が副業を理由に懲戒処分を行ったケースで、その処分が無効と判断された事例もあります。ただし、企業の利益を損なう副業や情報漏洩のリスクがある場合は、企業側が制限できる余地があります。

雇用が発生する副業が禁止されるケースが多い

SES企業の就業規則では、雇用契約を結ぶ副業(二重雇用)を明確に禁止しているケースが多いです。雇用契約を伴う副業は、労働時間の管理が複雑になり、過重労働につながるリスクが高いためです。

雇用が発生する副業と発生しない副業の違いは以下の通りです。

副業の種類 雇用の有無 具体例
雇用が発生する副業 あり アルバイト、パート、派遣社員
雇用が発生しない副業 なし 業務委託、個人事業、株式投資、FX、ブログ運営

雇用が発生しない副業は、事業所得や雑所得として扱われるため、会社側もバレにくく、規制の対象外となるケースがあります。副業を検討する際は、雇用が発生するかどうかを事前に確認することが重要です。

SES企業で副業が禁止されている場合の対処法

SES企業で副業が禁止されている場合の対処法

SES企業で副業が禁止されている場合でも、収入を増やす方法はいくつか存在します。法律的には副業の自由が認められているため、適切な対処法を選ぶことによって、リスクを最小限に抑えながら副業を実現できます。

副業が禁止されている場合の対処法として、以下の3つがあります。

  • 雇用が発生しない副業を選ぶ
  • 副業OKの企業に転職する
  • 会社と個別に交渉する

それぞれの対処法には特徴があり、自分の状況や目標に応じて選択することによって、副業を実現できるでしょう。以下では各対処法について詳しく解説していきます。

雇用が発生しない副業を選ぶ

雇用が発生しない副業は、SES企業の就業規則で禁止されていないケースが多く、比較的安全に始められる副業です。業務委託や個人事業として収入を得る形態であれば、会社にバレにくいというメリットもあります。

雇用が発生しない副業の代表例は以下の通りです。

  • プログラミング案件の業務委託(週1〜2日の受託開発など)
  • 技術ブログの運営とアフィリエイト収入
  • 株式投資やFXなどの資産運用
  • 自作ゲームやアプリの販売
  • SES営業代行の成果報酬型業務

これらの副業は、自分のスキルや時間を活用して収入を得られるため、SESエンジニアとの相性も良好です。ただし、確定申告や住民税の申告が必要になる場合があるため、税金の取り扱いには注意が必要です。

副業OKの企業に転職する

副業を本格的に取り組みたい場合は、副業を認めているSES企業に転職するのも有効な選択肢です。2023年時点で、企業の副業容認率は約60.9%に達しており、副業OKの企業を見つけることは比較的容易になっています。

副業OKの企業に転職するメリットは以下の通りです。

  • 副業がバレるリスクを気にせず安心して取り組める
  • 会社に申請することによって、税金の処理もスムーズに行える
  • 副業で得たスキルを本業に活かすことも可能
  • 将来的にフリーランスへの転身も視野に入れやすい

転職する際は、求人情報の「副業可」「副業OK」などの記載を確認し、面接時に副業に関する具体的なルールを質問しておくことが重要です。転職エージェントを活用すれば、副業可能な企業を効率的に探すことができます。

会社と個別に交渉する

就業規則で副業が禁止されていても、会社と個別に労働契約を結ぶことによって、副業が認められるケースがあります。特に、本業に支障をきたさない趣味程度の副業であれば、事情を説明することによって許可される可能性があります。

会社と交渉する際のポイントは以下の通りです。

  • 副業が本業に与える影響がないことを明確に説明する
  • 副業の内容や時間、収入見込みを具体的に示す
  • 情報漏洩や利益相反が発生しないことを保証する
  • 副業を通じて得たスキルを本業に還元する意思を伝える

交渉が成功すれば、書面で副業許可を得ることによって、安心して副業に取り組めます。ただし、交渉が決裂した場合や、会社との関係が悪化するリスクもあるため、慎重に判断することが必要です。

SESの副業規定を確認する方法

SESの副業規定を確認する方法

副業を始める前に、自分が勤めるSES企業の副業規定を正確に把握することが最も重要です。副業規定を確認せずに副業を始めると、懲戒処分を受けるリスクがあります。

副業規定を確認する方法として、以下の3つがあります。

  • 就業規則や給与規定を確認する
  • 常駐先との契約書を確認する
  • 経理担当者や総務部に問い合わせる

複数の確認方法を組み合わせることによって、見落としを防ぎ、正確な情報を把握できます。以下では各確認方法について詳しく解説していきます。

就業規則や給与規定を確認する

SES企業の副業に関するルールは、就業規則や給与規定に明記されています。これらの公式文書を確認することによって、副業が禁止されているのか、条件付きで認められているのかを把握できます。

確認すべき主な項目は以下の通りです。

  • 副業が全面的に禁止されているか、条件付きで許可されているか
  • 雇用契約を結ぶ副業のみが禁止されているか
  • 副業をする場合の申請手続きや届出の必要性
  • 副業に関する時間制限(月36時間以内など)の有無
  • 禁止される副業の種類(競合他社での業務、情報漏洩のリスクがある業務など)

社内ポータルサイトや人事システムからアクセスできる場合が多いため、まずはこれらの公式文書を確認しましょう。文書が見つからない場合は、人事部や総務部に問い合わせることが必要です。

常駐先との契約書を確認する

SES契約では、自社の就業規則だけでなく、常駐先企業との契約書にも副業に関する制限が記載されている場合があります。常駐先との契約内容を確認することによって、副業で発生するトラブルを未然に防げます。

常駐先との契約書で確認すべき項目は以下の通りです。

  • 秘密保持義務に関する条項(機密情報の取り扱いルール)
  • 競業避止義務に関する条項(競合する業務の禁止)
  • 副業を理由とした契約解除の可能性
  • 常駐先での勤務時間外の活動に関する制限

契約書は入社時や案件参画時に交付されるため、保管している契約書を見直しましょう。契約書が手元にない場合は、自社の営業担当者や管理部門に問い合わせて、写しを取得することが必要です。

経理担当者や総務部に問い合わせる

就業規則や契約書を読んでも副業規定が不明確な場合は、経理担当者や総務部に直接問い合わせることが最も確実です。公式な回答を得ることによって、後々のトラブルを避けることができます。

問い合わせる際に確認すべき内容は以下の通りです。

  • 副業申請の手続き方法と必要な書類
  • 副業が認められる条件や制限事項
  • 確定申告や住民税の申告方法
  • 副業収入が発生した場合の社内での取り扱い
  • 副業がバレた場合の処分内容

問い合わせる際は、メールや書面で記録を残すことによって、後から「言った・言わない」のトラブルを防げます。口頭での回答だけでなく、必ず文書での確認を求めることが重要です。

SESで副業する際の注意点

SESで副業する際の注意点

副業を始める際は、本業との両立やリスク管理を徹底する必要があります。無計画に副業を始めると、本業に支障をきたしたり、会社とのトラブルに発展したりする可能性があります。

副業する際の注意点として、以下の4つがあります。

  • 本業に支障をきたさない
  • 情報漏洩を避ける
  • 利益相反にならないようにする
  • 確定申告と住民税の申告を行う

これらの注意点を守ることによって、安全に副業を続けることができます。以下では各注意点について詳しく解説していきます。

本業に支障をきたさない

副業を行う上で最も重要なのは、本業に悪影響を与えないことです。過度な副業によって睡眠不足や体調不良に陥ると、本業でのパフォーマンスが低下し、常駐先やSES企業から信頼を失うリスクがあります。

本業に支障をきたさないための対策は以下の通りです。

  • 副業に充てる時間を週10時間以内に制限する
  • 土日祝日や平日の業務終了後のみ副業を行う
  • 休息日を必ず確保し、疲労を蓄積させない
  • 副業案件の納期に余裕を持たせ、無理なスケジュールを避ける
  • 本業の繁忙期には副業を一時停止する

副業で収入を増やすことは魅力的ですが、本業を疎かにすれば、最終的には自分の評価やキャリアに悪影響を及ぼします。常に本業を最優先にし、副業はあくまで補助的な位置づけとして考えることが重要です。

情報漏洩を避ける

SESエンジニアは、常駐先やSES企業の機密情報に触れる機会が多いため、情報漏洩には細心の注意を払う必要があります。副業で意図せず情報を漏らしてしまうと、損害賠償請求や懲戒解雇の対象になる可能性があります。

情報漏洩を避けるための対策は以下の通りです。

  • 技術ブログやSNSで自社や常駐先の具体的なプロジェクト内容を公開しない
  • 副業先に対して本業で得た技術やノウハウを安易に提供しない
  • 秘密保持契約(NDA)の内容を十分に理解し、遵守する
  • 副業で作成するコードやドキュメントに本業の情報を含めない
  • 副業で使用するパソコンやアカウントを本業と明確に分ける

特に、技術ブログやSNSでの情報発信は、意図せず機密情報を公開してしまうリスクが高いため、投稿前に内容を慎重に確認することが必要です。情報漏洩が発覚した場合、会社だけでなく常駐先からも損害賠償を請求される可能性があるため、細心の注意を払いましょう。

利益相反にならないようにする

利益相反とは、副業によって自社の利益を損ない、競合他社や取引先の利益に貢献してしまう行為を指します。SES企業で得たスキルやノウハウを競合他社での副業に活用すると、利益相反と判断され、懲戒処分の対象になる可能性があります。

利益相反にならないための対策は以下の通りです。

  • 競合他社からの副業依頼は断る
  • 常駐先の取引先や下請け企業から個人的に案件を受注しない
  • 副業先が自社や常駐先と直接的な競争関係にないか確認する
  • 自社が提供するサービスと同種のサービスを副業で提供しない

例えば、SES企業の営業担当者が副業でSES営業代行を行い、自社の顧客を引き抜くような行為は、明確な利益相反に該当します。また、常駐先から直接個人的に案件を受注する行為も、自社の売上を奪う行為として問題視されます。

確定申告と住民税の申告を行う

副業で一定の収入を得た場合、確定申告と住民税の申告が法律で義務付けられています。申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるため、税金の取り扱いには十分な注意が必要です。

確定申告と住民税の申告に関するルールは以下の通りです。

申告の種類 申告が必要な条件 申告期間
確定申告 副業の所得が年間20万円以上の場合 毎年2月16日から3月15日まで
住民税の申告 副業の所得が1円以上の場合 市区町村によって異なる

副業がアルバイトやパートなどの給与所得の場合、年末調整によって会社に副業がバレる可能性が高くなります。一方、業務委託や個人事業として得た所得は、確定申告時に住民税の納付方法を「普通徴収」に設定することによって、会社にバレにくくなります。

SESで副業がバレた場合のリスクとペナルティ

SESで副業がバレた場合のリスクとペナルティ

副業が会社にバレた場合、どのようなリスクやペナルティを受けるのかを事前に理解しておくことが重要です。バレた際の対応を想定しておくことによって、冷静に対処できます。

副業がバレた場合のリスクとペナルティとして、以下の3つがあります。

  • 注意や警告を受ける
  • 減給や降格処分を受ける
  • 懲戒解雇される可能性がある

バレた際の処分内容は、副業の内容や会社の規定によって大きく異なります。以下では各リスクとペナルティについて詳しく解説していきます。

注意や警告を受ける

副業が初めてバレた場合、多くのケースでは口頭での注意や警告で済むことが多いです。会社側は副業の内容や時間、収入などについてヒアリングを行い、今後の対応について指示を出します。

注意や警告を受ける際の流れは以下の通りです。

  • 上司や人事部から別室に呼び出される
  • 副業の詳細についてヒアリングを受ける(副業の種類、収入額、時間など)
  • 就業規則違反であることを指摘される
  • 今後副業を続ける場合の対応について指示を受ける(副業停止、申請手続きなど)
  • 書面での警告書が交付される場合もある

初回の注意や警告であれば、副業を停止することによって、処分を免れるケースが多いです。ただし、注意を受けた後も副業を続けた場合、次回以降はより重い処分が課される可能性が高くなります。

減給や降格処分を受ける

副業が2回目以降にバレた場合や、副業の内容が会社に大きな損害を与えた場合は、減給や降格処分を受けるリスクがあります。特に、情報漏洩や利益相反が認められた場合は、厳しい処分が下されることが多いです。

減給や降格処分を受ける可能性が高いケースは以下の通りです。

  • 過去に副業について注意や警告を受けたにもかかわらず、継続していた場合
  • 副業によって本業のパフォーマンスが著しく低下し、常駐先から苦情が出た場合
  • 競合他社での副業や利益相反が認められた場合
  • 副業の収入が高額で、会社への申告を怠っていた場合

減給処分の場合、月給の10%から30%程度が減額されることが一般的です。降格処分の場合、役職や等級が下がり、それに伴って給与も減少します。これらの処分は就業規則に基づいて行われるため、異議を申し立てることは困難です。

懲戒解雇される可能性がある

副業の内容が会社の規則に重大に違反している場合や、会社に多大な損害を与えた場合は、懲戒解雇される可能性があります。ただし、日本の法律では労働者の権利が強く保護されているため、副業だけを理由とした解雇は違法と判断されるケースも多いです。

懲戒解雇される可能性が高いケースは以下の通りです。

  • 技術ブログやSNSで会社や常駐先の機密情報を漏洩した場合
  • 常駐先から直接案件を受注し、会社の売上を奪った場合
  • 副業が原因で常駐先に大きな損害を与え、契約解除に至った場合
  • 競合他社で副業を行い、会社の利益を著しく損なった場合

懲戒解雇は労働者にとって最も重い処分であり、退職金が支給されない場合や、転職活動で不利になる可能性があります。ただし、副業そのものが理由で解雇されるケースは少なく、情報漏洩や利益相反などの重大な違反行為が伴う場合に限られます。

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