SES契約を初めて締結する企業や担当者にとって、どのような手順で進めれば良いのか、どのタイミングでどのような書類が必要になるのかは、非常に重要な関心事です。契約の流れを正しく理解していないと、必要な書類の準備が遅れたり、法的なリスクを見落としたりする可能性があります。
特にSES契約は準委任契約の一種であり、派遣契約や請負契約とは異なる特性を持つため、指揮命令権の所在や契約書類の内容を正確に把握しておく必要があるでしょう。契約締結後のトラブルを防ぐためにも、事前に全体の流れを理解しておくことが大切です。
この記事では、SES契約の流れについて、エンジニア人材の提案から面談、契約書の締結、そして業務開始までの各ステップを具体的に詳しく解説していきます。
SES契約の流れ
SES契約を締結するには、複数のステップを順番に進めていく必要があります。エンジニアの提案から実際の業務開始まで、通常2週間から4週間程度の期間を要するため、余裕を持ったスケジュール管理が求められるでしょう。
SES契約の流れは、以下の4つのステップで構成されています。
- エンジニア人材の提案
- 面談の実施
- 契約書の締結
- 稼働開始
それぞれのステップには固有の目的があり、どれか1つでも疎かにすると、契約後にミスマッチが発生したり、法的なトラブルに発展したりするリスクが高まります。各ステップで何を確認し、どのような準備をすべきかを正確に把握しておくことで、スムーズな契約締結と業務開始を実現できるでしょう。
それでは各項目について、詳しく解説していきます。
エンジニア人材の提案
SES契約の流れは、SES企業がクライアント企業に対してエンジニア人材を提案することから始まります。この段階では、クライアント企業が求めるスキルや経験を持ったエンジニアを選定し、提案書や経歴書を提出することが重要です。
エンジニア人材の提案で必要な情報は、以下のとおりです。
- エンジニアの保有スキルと実務経験年数
- 過去に携わったプロジェクトの内容と役割
- 使用可能なプログラミング言語や開発ツール
- 資格の取得状況や研修受講歴
- 希望する月額単価や稼働可能な時間帯
- リモートワークの可否
クライアント企業は提案された経歴書を確認し、自社のプロジェクトに適した人材かどうかを判断します。この時点で、クライアント企業が求める開発言語やフレームワークの経験が不足している場合や、予算と単価が合わない場合は、別の人材を提案し直すことになるでしょう。
提案の精度を高めるためには、事前にクライアント企業の開発環境や使用技術、プロジェクトの規模や期間について詳しくヒアリングしておくことが重要です。初回の提案で適切な人材を提示できれば、その後の契約締結までの時間を大幅に短縮できます。
面談の実施
クライアント企業が提案された人材に興味を示した場合、次のステップとして面談を実施します。面談は、エンジニアとクライアント企業の担当者が直接対話する機会であり、書類だけでは伝わらない人柄やコミュニケーション能力を確認する重要な場です。
面談で確認される主な事項は、以下のとおりです。
| 確認事項 | 確認内容 |
|---|---|
| 技術スキル | 使用する開発言語やフレームワークの習熟度、過去のプロジェクトでの実装経験 |
| 業務範囲 | 担当する工程(設計、実装、テスト、保守など)と責任範囲 |
| 稼働条件 | 週の稼働日数、1日の作業時間、リモートワークの可否 |
| 契約期間 | プロジェクトの開始日と終了予定日、延長の可能性 |
| 報酬条件 | 月額単価または時間単価、精算幅の設定、支払いサイクル |
面談の実施形式は、対面とオンラインのどちらでも可能ですが、近年はリモートワークの普及に伴い、オンライン面談が主流となっています。面談回数は1回で完了することが多いですが、プロジェクトの規模や重要度によっては、2回以上実施されるケースもあるでしょう。
面談後、クライアント企業がエンジニアに対してオファーを出す意向を示し、エンジニア側も条件に合意すれば、次のステップである契約締結に進むことになります。双方の合意が得られない場合は、条件の再調整または別の人材の提案を検討する必要があります。
契約書の締結
面談でオファーがもらえたら、SES契約を締結するための契約書を準備します。SES契約では、複数の契約書類を準備し、法的に有効な契約を結ぶ必要があるため、漏れのないように確認することが重要です。
SES契約締結時に必要な契約書は、以下の3種類です。
- 業務委託基本契約書
- 機密保持契約書(NDA)
- 個別契約書(注文書・注文請書)
業務委託基本契約書は、クライアント企業とSES企業の間で継続的な取引を行う際に締結する契約書であり、両社の基本的な取り決めが記載されています。この契約書には、指揮命令権の所在、報酬の支払い方法、契約期間と更新に関する規定、契約解除の条件、損害賠償責任の範囲、知的財産権の帰属などが明記されるでしょう。
機密保持契約書(NDA)は、業務遂行の過程で知り得た機密情報を第三者に漏洩しないことを約束する契約書です。SES契約では、エンジニアがクライアント企業の機密情報にアクセスする機会が多いため、情報漏洩を防ぐ目的で必ず締結されます。
個別契約書は、具体的なプロジェクトごとに締結する契約書であり、注文書と注文請書の形式で作成されることが一般的です。プロジェクト名、業務内容の詳細、エンジニアの氏名、契約期間、稼働場所、報酬額と精算幅、支払い条件などが記載されるでしょう。
これらの契約書は、それぞれ異なる目的を持ち、すべて揃って初めて法的に完全な契約が成立します。1つでも欠けると、契約内容が不明確になり、後々のトラブルの原因となる可能性が高まるため、契約締結前に内容を十分に確認しておくことが重要です。
稼働開始
契約書の締結が完了したら、エンジニアが実際に業務を開始するための準備を進めます。稼働開始日は、エンジニアの現在の案件の終了時期や、クライアント企業のプロジェクトの開始スケジュールを考慮して調整する必要があるでしょう。
稼働開始前に準備すべき項目は、以下のとおりです。
| 準備項目 | 内容 |
|---|---|
| 稼働開始日の確定 | エンジニアとクライアント企業の双方のスケジュールを調整 |
| PC・周辺機器 | 開発用PC、ディスプレイ、キーボード、マウス、ヘッドセット |
| ネットワーク環境 | 社内LANへの接続、VPN設定、Wi-Fiアクセス |
| アカウント発行 | メールアドレス、社内システムのログインID、開発環境へのアクセス権 |
| 作業スペース | 専用デスクまたは共用スペースの確保、ロッカーの割り当て |
| セキュリティ対策 | 入館証の発行、セキュリティ研修の実施、ウイルス対策ソフトの設定 |
リモートワークで業務を行う場合は、オンライン会議ツールやプロジェクト管理ツールへのアクセス権を事前に付与しておく必要があります。また、SES契約では指揮命令権がSES企業側にあるため、クライアント企業が直接エンジニアに業務指示を出さないよう、社内で周知徹底しておくことが偽装請負を防ぐ上で重要でしょう。
業務開始後、SES企業はエンジニアに対して定期的にフォローを行う責任があります。エンジニアが業務上の悩みや問題を抱えていないか、クライアント企業との関係は良好かなどを確認し、必要に応じてサポートを提供することが求められます。
フォローの頻度は、稼働開始直後は週1回程度、その後は月1回から2回程度が一般的です。定期的なフォローを通じて、エンジニアが安心して業務に取り組める環境を維持し、長期的な協力関係を築くことが、SES企業にとって重要な役割となるでしょう。