SESの粗利率の平均や計算方法を解説

SESの粗利率の平均や計算方法を解説

SESにおける粗利率

SESにおける粗利率

SES事業を運営する上で、売上だけを見ていても実質的な利益は把握できません。粗利率は売上から原価を差し引いた実質的な利益の割合を示す指標であり、SES企業の収益性を正確に測るために欠かせない概念です。

SESにおける粗利率を理解するために、以下の3つの基本知識が必要です。

  • 売上と原価の違いを理解する
  • 粗利率と営業利益率の違い
  • SESにおける原価の内訳

これらの基本概念を正しく理解することで、SES事業の収益構造を把握し、適切な経営判断につなげられます。以下では、それぞれの項目について詳しく解説していきます。

売上と原価の違いを理解する

売上とは、エンジニアをクライアント先に派遣して得られる契約金額の総額を指します。一方、原価とは、そのエンジニアを稼働させるために必要なコストの総額です。

SES事業では、月額80万円でエンジニアを派遣していても、そのエンジニアの人件費が50万円かかれば、差額の30万円が粗利となります。売上だけを見ると好調に見えても、原価が高ければ実質的な利益は少なくなるため、両者の違いを正確に把握することが重要です。

項目 説明
売上 クライアントとの契約金額の総額
エンジニア派遣で得られる月額料金
原価 エンジニアの人件費や外注費
社会保険料や交通費などの付随コスト
粗利 売上から原価を差し引いた実質的な利益
経営判断の基盤となる指標

粗利率と営業利益率の違い

粗利率と営業利益率は、どちらも企業の収益性を測る指標ですが、計算に含まれるコストの範囲が異なります。粗利率は売上から原価のみを差し引いた割合であり、営業利益率は粗利からさらに販売費や一般管理費を差し引いた割合です。

SES事業では、粗利率が高くても営業費用が多ければ営業利益率は低くなります。粗利率はエンジニア単位や案件単位での収益性を測る指標として活用し、営業利益率は会社全体の経営状況を把握する指標として使い分けることが効果的です。

指標 計算式 用途
粗利率 (売上 − 原価) ÷ 売上 × 100 エンジニア単位や案件単位の収益性を測る
直接的なコスト管理に活用
営業利益率 (粗利 − 販売費・一般管理費) ÷ 売上 × 100 会社全体の経営状況を把握
オフィス運営費や営業費用を含めた収益性を測る

SESにおける原価の内訳

SES事業における原価は、エンジニアのタイプによって構成要素が大きく異なります。自社所属のエンジニアの場合は給与に加えて社会保険料や交通費などが原価に含まれ、協力企業やフリーランスのエンジニアの場合は外注費が主な原価となります。

自社エンジニアの原価には以下のような項目が含まれます。

  • 基本給与
  • 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険)
  • 交通費
  • 福利厚生費
  • 賞与

これらの原価を正確に把握することで、エンジニア1人あたりの実質的なコストが明確になり、適切な単価設定や利益率の改善につなげられます。外注の場合は、協力企業やフリーランスへ支払う月額料金が原価の中心となります。

SESの粗利率の平均値

SESの粗利率の平均値

SES事業の粗利率は、エンジニアのタイプによって大きく異なります。自社所属のエンジニア、協力企業所属のエンジニア、フリーランスエンジニアのそれぞれで原価構造が異なるため、粗利率も変動するのです。

SESの粗利率の平均値として、以下の3つのケースがあります。

  • 自社所属エンジニアの場合
  • 協力企業所属エンジニアの場合
  • フリーランスエンジニアの場合

それぞれのケースで粗利率の水準が異なるため、SES事業を運営する際は自社のビジネスモデルに合わせた粗利率の目標設定が必要です。以下では、各ケースの平均的な粗利率について詳しく解説していきます。

自社所属エンジニアの場合

自社所属のエンジニアをクライアント先に派遣する場合、粗利率は平均40%程度とされています。ただし、この数字はエンジニアへの還元率が業界平均の60%という前提での大まかな計算値です。

実際には、粗利から社会保険料や交通費などの法定福利費を差し引く必要があるため、実質的な粗利率は28%程度まで下がります。例えば、案件単価が50万円でエンジニアの給与が30万円の場合、粗利は20万円となりますが、社会保険料約4万円と交通費約1.5万円を差し引くと、実質的な粗利は14万円となります。

項目 金額(案件単価50万円の例)
案件単価(売上) 50万円
エンジニア給与 30万円(還元率60%)
粗利(給与差引後) 20万円(粗利率40%)
社会保険料 4万円
交通費 1.5万円
実質的な粗利 14万円(実質粗利率28%)

協力企業所属エンジニアの場合

協力企業所属のエンジニアを自社が営業してクライアント先に派遣する場合、粗利率は平均10%程度となります。この場合の粗利は中間マージンとしての手数料であり、自社所属エンジニアをアサインする場合ほど利益は見込めません。

粗利率は商流の深さと協力企業の希望単価によって変動します。案件単価が50万円の場合、10%にあたる5万円が自社の粗利となり、残りの45万円を協力企業に支払う形となります。

商流の深さ 粗利率の目安
エンド直案件 15%から20%程度
発注元から直接受注するため単価が高い
二次請け案件 10%から15%程度
元請けから受注するため中間マージンが発生
三次請け以降 5%から10%程度
商流が深く単価が下がるため粗利率も低下

フリーランスエンジニアの場合

フリーランスエンジニアと直接契約して自社がクライアント先に派遣する場合、粗利率は10%から30%となります。商流が発注元に近いほど案件単価が高くなるため、自社所属エンジニアよりも粗利率が高くなる可能性があります。

フリーランスとの契約では、雇用関係がないため社会保険料や交通費などの法定福利費が不要です。そのため、粗利がそのまま実質的な利益となる点が大きなメリットです。例えば、100万円の案件にアサインできてフリーランスの希望単価が70万円であれば、30万円が丸々利益となります。

案件単価 フリーランス希望単価 粗利 粗利率
70万円 60万円 10万円 14%
80万円 65万円 15万円 19%
100万円 70万円 30万円 30%

SESの粗利率を計算する方法

SESの粗利率を計算する方法

SESの粗利率を正確に計算するには、売上と原価を正しく把握することが必要です。エンジニアのタイプによって原価の内訳が異なるため、それぞれのケースで適切な計算方法を理解しておくことが重要です。

粗利率を計算する方法として、以下の3つがあります。

  • 基本的な計算式
  • 自社エンジニアの粗利率計算例
  • 外注エンジニアの粗利率計算例

それぞれの計算方法には特徴があり、自社のビジネスモデルに合わせて使い分けることで正確な粗利率を把握できます。以下では、各計算方法について具体例を交えて詳しく解説していきます。

基本的な計算式

粗利率の基本的な計算式は「(売上 − 原価) ÷ 売上 × 100」です。この式で算出される数値が、売上に対する実質的な利益の割合を示す粗利率となります。

SES事業における売上とは、クライアントと契約したエンジニアの月額単価を指します。原価は、自社エンジニアの場合は人件費や社会保険料などの合計、外注の場合は協力企業やフリーランスへ支払う金額です。

計算要素 内容
売上 クライアントとの契約単価
エンジニア1人あたりの月額料金
原価 自社エンジニア:給与+社会保険料+交通費など
外注エンジニア:協力企業やフリーランスへの支払額
粗利 売上 − 原価
粗利率 粗利 ÷ 売上 × 100

自社エンジニアの粗利率計算例

自社所属のエンジニアを派遣する場合の粗利率計算では、給与に加えて社会保険料や交通費などの付随コストを原価に含める必要があります。これらのコストを見落とすと、実際よりも高い粗利率を算出してしまい、経営判断を誤る原因となります。

具体的な計算例として、案件単価60万円、エンジニア給与36万円、社会保険料6万円、交通費1万円のケースを見てみましょう。原価の合計は43万円となるため、粗利は17万円です。粗利率は「17万円 ÷ 60万円 × 100 = 28.3%」となります。

項目 金額
売上(案件単価) 60万円
原価内訳 給与:36万円
社会保険料:6万円
交通費:1万円
合計:43万円
粗利 60万円 − 43万円 = 17万円
粗利率 17万円 ÷ 60万円 × 100 = 28.3%

外注エンジニアの粗利率計算例

協力企業所属のエンジニアやフリーランスエンジニアを派遣する場合、原価は外注先への支払額のみとなります。自社エンジニアのように社会保険料や交通費を負担する必要がないため、計算はシンプルです。

案件単価80万円でフリーランスへの支払いが65万円のケースでは、粗利は15万円となります。粗利率は「15万円 ÷ 80万円 × 100 = 18.75%」です。外注の場合は中間マージンとしての手数料が粗利となるため、粗利率は商流の深さと外注先の希望単価に大きく依存します。

項目 金額
売上(案件単価) 80万円
原価(フリーランスへの支払い) 65万円
粗利 80万円 − 65万円 = 15万円
粗利率 15万円 ÷ 80万円 × 100 = 18.75%

SESの粗利率を向上させる方法

SESの粗利率を向上させる方法

SES事業で安定した利益を確保するには、粗利率の継続的な向上が不可欠です。売上を増やすか原価を抑えることで粗利率は改善できますが、どちらか一方だけでなく両面からのアプローチが効果的です。

粗利率を向上させる方法として、以下の3つがあります。

  • 単価交渉で売上を増やす
  • 商流の浅い案件を獲得する
  • 稼働率を最適化する

それぞれの方法には特徴があり、自社の状況に応じて優先順位を決めて実行することで粗利率の改善が実現できます。以下では、各方法について具体的な実施ポイントを詳しく解説していきます。

単価交渉で売上を増やす

クライアントとの単価交渉は、原価を変えずに売上を増やせる最も直接的な方法です。エンジニアがクライアント先で長期間稼働し、契約更新が何度も行われている場合は、クライアントにとって必要な人材である証拠といえます。

単価交渉を成功させるためのポイントは以下の通りです。

  • 契約開始から9ヶ月から1年経過したタイミングで交渉する
  • エンジニアのスキルアップや成果を具体的に示す
  • クライアントとの良好な関係を日頃から構築しておく
  • 市場相場を調査して適切な値上げ幅を提示する

例えば、月額60万円の案件を65万円に値上げできれば、原価が変わらない場合は5万円がそのまま粗利の増加となります。単価が5万円上がると年間で60万円の利益増加につながるため、積極的に交渉を行うことが重要です。

商流の浅い案件を獲得する

SES業界では多重下請け構造が一般的であり、商流が深くなるほど単価が下がっていきます。発注元から直接受注するエンド直案件や、発注元から依頼を受けた元請けから受注する元請け直案件を獲得することで、高単価での契約が可能となります。

商流による単価の違いは以下のように大きな差があります。

商流の深さ 単価の目安 特徴
エンド直 80万円から120万円 発注元から直接受注するため最も高単価
中間マージンが発生しない
二次請け 60万円から90万円 元請けから受注するため中間マージンが1社分発生
それでも比較的高単価を維持できる
三次請け以降 40万円から60万円 複数社の中間マージンが発生するため単価が大幅に低下
粗利確保が困難になる

商流の浅い案件を獲得するためには、取引先の新規開拓が欠かせません。発注元企業や大手SIerとの直接取引を目指して営業活動を行い、既存の下請け構造から脱却することが粗利率向上の鍵となります。

稼働率を最適化する

エンジニアの稼働率を最適化することで、原価を抑えて粗利率を向上させられます。待機期間が発生すると売上がゼロになる一方で人件費は発生し続けるため、稼働率の低下は粗利率の大幅な悪化につながります。

稼働率を最適化するための施策は以下の通りです。

  • エンジニアのスキルを可視化して案件とのマッチング精度を高める
  • 案件終了の3ヶ月前から次の案件を探し始める
  • 複数の取引先を確保して案件の選択肢を増やす
  • 待機期間中はスキルアップ研修を実施して次の案件獲得につなげる
  • アサイン管理ツールを導入してリアルタイムで稼働状況を把握する

稼働率が95%以上を維持できれば、年間を通じて安定した粗利を確保できます。逆に、稼働率が80%を下回ると待機コストが利益を圧迫するため、早急な改善が必要です。

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