SES契約を勝手に更新することの法的問題と対処法を簡単に解説

SES契約を勝手に更新することの法的問題と対処法を簡単に解説

SES契約が勝手に更新される実態

SES契約が勝手に更新される実態

SES契約で働いていると、自分の意思確認がないまま契約が更新されてしまうケースがあります。本来であれば契約更新時には本人の意思確認が必要ですが、営業担当が勝手に承諾したり、契約内容すら開示されないまま働き続けることになるエンジニアも少なくありません。

SES契約が勝手に更新される実態として、以下の3つがあります。

  • 本人への確認なしに更新される
  • 契約内容を開示してくれない
  • 営業担当が口頭で勝手に承諾する

これらの状況は本人の権利を侵害する可能性があり、法的にも問題となるケースがあります。以下では、それぞれの実態について詳しく解説していきます。

本人への確認なしに更新される

SES契約において最も多いトラブルが、エンジニア本人への確認なしに契約が更新されるケースです。契約期間が3ヶ月で設定されているにも関わらず、期間終了前に営業担当から連絡がなく、気づいたら次の契約期間に入っていたという事例が多く報告されています。

本来であれば契約更新時には本人の意思確認が必要ですが、営業担当が「問題なければそのまま継続」と判断して勝手に更新手続きを進めてしまうのです。

本来の流れ 実態
契約期間終了の1ヶ月前に営業から連絡 連絡がないまま契約が進む
本人の意思確認 確認されずに自動更新
双方の合意で契約書締結 本人が知らないまま締結済み

このような状況では、エンジニアが次の案件に移りたいと思っても、すでに契約が更新されているため抜けづらくなってしまいます。本人の意思確認なしに契約を更新することは、契約の基本原則である双方の合意を無視する行為であり、法的に問題があると言えるでしょう。

契約内容を開示してくれない

SES企業の中には、エンジニアに対して契約内容を開示しない会社も存在します。エンジニアが「契約期間はいつまでですか」「月額単価はいくらですか」と質問しても、「教えることができない」と一蹴されてしまうケースが報告されています。

契約内容が不透明なまま働かされる状況は、以下のような問題を引き起こします。

  • 契約期間がわからず退場のタイミングを計画できない
  • 適切な報酬を受け取れているか判断できない
  • 契約条件の変更に気づけない
  • 不当な条件で働かされるリスクがある

本来、労働条件は労働基準法第15条によって書面で明示することが義務付けられており、エンジニアには契約内容を知る権利があります。契約内容を開示しない行為は、労働者の権利を侵害する違法な対応と言えるでしょう。

営業担当が口頭で勝手に承諾する

SES契約では、営業担当がエンジニア本人に確認せずに、クライアント企業との間で口頭で契約更新を承諾してしまうケースがあります。クライアント企業から「来月も継続でお願いします」と言われた際に、営業担当が安易に「はい、大丈夫です」と答えてしまうのです。

営業担当が勝手に承諾する背景には、以下のような事情があります。

営業側の事情 影響
クライアントとの関係を優先 エンジニアの意向を無視してでも
契約を継続したい
次の案件が見つからない エンジニアを待機させたくないため
現状維持を選ぶ
売上確保のプレッシャー 契約終了による減収を避けるため
無理にでも継続させる

口頭での合意も法的には契約として成立する可能性がありますが、エンジニア本人の意思を無視して営業担当が勝手に承諾することは、雇用契約における信義則に反する行為です。エンジニアが「契約更新を断りたい」と営業に伝えても、「もう承諾してしまった」と言われて抜けられなくなるケースもあり、大きな問題となっています。

SES契約を勝手に更新することの法的問題

SES契約を勝手に更新することの法的問題

SES契約を本人の意思確認なしに勝手に更新することは、複数の法的問題を含んでいます。契約の基本原則である双方の合意が守られていないだけでなく、労働者の権利を侵害する行為として法律に抵触する可能性があります。

SES契約を勝手に更新することの法的問題として、以下の3つがあります。

  • 契約は双方の合意が必要
  • 民法651条による解除権
  • 労働条件の明示義務違反

これらの法的根拠を理解することで、エンジニアは自分の権利を守ることができます。以下では、それぞれの法的問題について詳しく解説していきます。

契約は双方の合意が必要

契約の基本原則として、契約は双方の当事者が合意することによって成立します。これは民法第522条に定められており、一方的な意思表示だけでは契約は成立しません。SES契約の更新においても、エンジニア本人とSES企業の双方が更新に合意する必要があります。

双方の合意が必要な理由は以下の通りです。

  • 契約自由の原則により契約を結ぶかどうかは当事者の自由
  • 一方的な契約の押し付けは契約の公平性を損なう
  • 労働者の職業選択の自由を保障するため
  • 契約内容に対する納得と責任の所在を明確にするため

SES企業が本人の意思確認なしに契約を更新した場合、その契約は本人の合意がないため無効となる可能性があります。特に、本人が明確に更新を拒否していたにも関わらず強引に更新された場合は、契約の有効性自体が争われることになるでしょう。

民法651条による解除権

SES契約は準委任契約であり、民法第651条によって各当事者がいつでも契約を解除できる権利が保障されています。この規定は、エンジニア側からもSES企業側からも、いつでも契約を終了させることができることを意味しています。

民法651条の内容は以下の通りです。

条文 内容
民法第651条第1項 委任は、各当事者がいつでも
その解除をすることができる
民法第651条第2項 相手方に不利な時期に解除した場合
損害賠償の対象となることがある
ただしやむを得ない事由があれば除く

この法律により、エンジニアは契約期間の途中であっても契約を解除する権利を持っています。したがって、SES企業が勝手に契約を更新したとしても、エンジニアは民法651条に基づいて契約を解除することが可能です。ただし、円満に退場するためには1ヶ月前に通知するなど、相手方への配慮も必要になります。

労働条件の明示義務違反

労働基準法第15条では、使用者は労働契約の締結に際して賃金や労働時間などの労働条件を書面で明示することが義務付けられています。SES契約においても、契約期間や業務内容、報酬などの条件をエンジニアに対して明示しなければなりません。

労働条件の明示義務に違反する行為として、以下のようなケースがあります。

  • 契約書をエンジニアに渡さない
  • 契約内容の開示を拒否する
  • 口頭でしか条件を伝えない
  • 契約更新時に新しい契約書を交わさない

労働条件を明示しない行為は労働基準法違反となり、30万円以下の罰金が科される可能性があります。また、エンジニアが契約内容を知らないまま働かされることは、不当な労働条件で働かされるリスクを高め、労働者の権利を著しく侵害する行為と言えるでしょう。

SES契約が勝手に更新された場合の対処法

SES契約が勝手に更新された場合の対処法

SES契約が自分の知らないうちに勝手に更新されてしまった場合でも、適切な対処を行うことで状況を改善することができます。泣き寝入りする必要はなく、法的な権利を行使して自分の意思を明確に伝えることが重要です。

SES契約が勝手に更新された場合の対処法として、以下の3つがあります。

  • 所属会社に契約内容の開示を求める
  • 契約更新を断る意思を明確に伝える
  • 労働基準監督署に相談する

これらの対処法を段階的に実行することで、不当な契約更新から自分の身を守ることができます。以下では、それぞれの対処法について詳しく解説していきます。

所属会社に契約内容の開示を求める

まず最初に行うべきことは、所属しているSES企業に対して契約内容の開示を求めることです。労働基準法第15条により、労働者には労働条件を書面で明示してもらう権利があります。契約期間、業務内容、報酬などの詳細を確認しましょう。

契約内容の開示を求める際のポイントは以下の通りです。

確認すべき項目 理由
契約期間 いつまで契約が続くのか把握する
契約更新の条件 自動更新かどうか確認する
業務内容 契約と実際の業務が一致しているか確認
報酬額 適正な報酬を受け取っているか判断

開示を求める際は、口頭ではなくメールや書面など記録が残る形で依頼することをおすすめします。もし会社が開示を拒否した場合は、労働基準法違反となるため、その事実を記録に残しておくことが重要です。開示された契約内容を確認し、自分が合意していない条件で更新されていないか必ずチェックしましょう。

契約更新を断る意思を明確に伝える

契約が勝手に更新されてしまった場合でも、民法651条に基づいて契約を解除する権利があります。所属会社の営業担当または上司に対して、契約更新を断る意思を明確に伝えましょう。曖昧な表現ではなく、はっきりと「契約を更新しない」と伝えることが重要です。

契約更新を断る際の伝え方として、以下のポイントを押さえましょう。

  • メールや書面など記録が残る形で伝える
  • 感情的にならず事実を淡々と述べる
  • 断る理由を具体的に説明する
  • 1ヶ月前には伝えて円満な退場を目指す

営業担当が「すでにクライアントと契約してしまった」と引き留めようとするかもしれませんが、本人の合意がない契約は無効となる可能性があります。強い意志を持って断ることが大切です。また、引き継ぎ業務は誠実に行い、クライアントや後任者に迷惑をかけないよう配慮することで、円満に契約を終了させることができるでしょう。

労働基準監督署に相談する

所属会社に対して契約内容の開示を求めても応じてもらえない場合や、契約更新を断っているのに強引に引き留められる場合は、労働基準監督署に相談することを検討しましょう。労働基準監督署は労働者の権利を守るための公的機関であり、無料で相談することができます。

労働基準監督署に相談することで得られる効果は以下の通りです。

相談内容 期待できる効果
契約内容の不開示 労働基準法違反として会社に指導が入る
不当な引き留め 適切な対処法のアドバイスを受けられる
労働条件の不一致 是正勧告により改善される可能性がある

労働基準監督署に相談する際は、これまでのやり取りの記録(メールや書面)を持参すると、状況を正確に伝えやすくなります。また、相談内容は匿名で行うこともできるため、会社にバレることを心配する必要はありません。どうしても会社が対応してくれない場合の最終手段として、労働基準監督署への相談を検討してください。

SES契約の更新を適切に断る方法

SES契約の更新を適切に断る方法

SES契約の更新を断りたい場合、適切な手順を踏むことで円満に退場することができます。勝手に更新されてしまう前に、自分から主体的に契約更新の可否を判断し、必要であれば断る意思を伝えることが重要です。

SES契約の更新を適切に断る方法として、以下の3つがあります。

  • 1ヶ月前に営業へ伝える
  • 契約更新のタイミングで断る
  • 書面で記録を残す

これらの方法を実践することで、トラブルを避けながらスムーズに契約を終了させることができます。以下では、それぞれの方法について詳しく解説していきます。

1ヶ月前に営業へ伝える

SES業界では、契約更新を断る場合は1ヶ月前に伝えるという暗黙のルールがあります。これは法律で定められているわけではありませんが、クライアント企業が後任者を探す時間や、引き継ぎ業務を行う期間を確保するために必要な期間とされています。

1ヶ月前に伝えるべき理由は以下の通りです。

  • クライアント企業が代替要員を探す時間を確保できる
  • 業務の引き継ぎを丁寧に行える
  • 所属会社が次の案件を準備できる
  • 円満退場により今後のキャリアに影響しない

営業担当に伝える際は、感情的にならず冷静に事実を伝えることが重要です。契約更新を断る理由を具体的に説明し、「スキルアップのため」「次のキャリアを考えて」など前向きな理由を添えると、営業担当も理解しやすくなるでしょう。早めに伝えることで、営業担当もクライアント企業との調整がしやすくなり、スムーズに契約を終了させることができます。

契約更新のタイミングで断る

SES契約は通常1ヶ月から3ヶ月の期間で締結されており、期間満了時に双方の合意によって更新されます。契約更新のタイミングで断ることは、最も自然で円満な退場方法と言えるでしょう。契約期間の途中で抜けるよりも、クライアント企業への影響も少なく済みます。

契約更新のタイミングで断る際のポイントは以下の通りです。

タイミング 対応方法
契約終了1ヶ月前 営業担当に更新しない意思を伝える
契約終了2週間前 クライアントへの挨拶と
引き継ぎ準備を開始
契約終了日 引き継ぎ完了と貸与物の返却を済ませる

契約更新のタイミングで断る場合、民法651条の「相手方に不利な時期の解除」には該当しないため、損害賠償を請求されるリスクもほとんどありません。また、クライアント企業も契約期間が終了することを前提としているため、途中退場よりも受け入れやすい状況と言えます。計画的に契約終了のタイミングを見計らって、スムーズに次のステップに進みましょう。

書面で記録を残す

契約更新を断る意思を伝える際は、口頭だけでなく必ず書面やメールなど記録が残る形で伝えることが重要です。口頭だけでは「言った・言わない」のトラブルに発展する可能性があり、後から「そんな話は聞いていない」と言われてしまうリスクがあります。

書面で記録を残すべき理由は以下の通りです。

  • 自分が契約更新を断ったことの証拠になる
  • 後日トラブルになった際の証明資料となる
  • 会社側も正式な手続きとして認識しやすい
  • 労働基準監督署に相談する際の資料になる

メールで伝える場合は、件名に「契約更新辞退のご連絡」などと明記し、本文には契約更新を断る意思、理由、希望する最終勤務日を明確に記載しましょう。送信したメールは必ず保存しておき、できれば送信済みメールのスクリーンショットも撮っておくと安心です。書面で記録を残すことで、万が一トラブルになった場合でも自分の正当性を証明することができます。

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