SES企業の高還元が嘘と言われる具体的なカラクリ
高還元SES企業への転職を検討する際、「還元率80%以上」という数字に魅力を感じる方は多いでしょう。しかし、実際には還元率の計算方法が不透明で、手取り額が想定よりも大幅に少なくなるケースが後を絶ちません。
高還元が嘘と言われる理由として、以下の4つのカラクリがあります。
- 会社負担分の社会保険料が給与から引かれる
- 交通費や福利厚生費が還元率に含まれる
- 想定年収が水増しされている
- 案件待機中の給与が賞与から差し引かれる
これらのカラクリを知らずに入社すると、期待していた給与と実際の手取りが大きく異なり、後悔することになります。以下では、それぞれのカラクリについて詳しく解説していきます。
会社負担分の社会保険料が給与から引かれる
通常の企業では、社会保険料は会社と従業員が50%ずつ折半して負担します。しかし、一部の高還元SES企業では、本来会社が負担すべき社会保険料まで給与から差し引いているケースがあります。
具体的な計算例は以下のとおりです。
| 項目 | 一般的なSES企業 | 高還元SES企業（カラクリあり） |
|---|---|---|
| 契約単価 | 70万円 | 70万円 |
| 還元率 | 60% | 80% |
| 還元額 | 42万円 | 56万円 |
| 会社負担の社会保険料 | 会社が負担 | 給与から差し引き （約8万円〜10万円） |
| 実質の手取り | 約35万円 | 約38万円〜40万円 |
還元率80%と聞くと魅力的に見えますが、会社負担分の社会保険料を差し引くと、実質的な還元率は60%程度になることがあります。面接時には、還元率の計算に会社負担分の社会保険料が含まれているか必ず確認しましょう。
交通費や福利厚生費が還元率に含まれる
高還元SES企業の中には、交通費や福利厚生費を還元率に含めて計算している企業も存在します。本来、これらの経費は会社が負担すべきものですが、還元率を高く見せるために給与の一部として扱われているケースがあります。
還元率に含まれる可能性がある経費は以下のとおりです。
- 交通費（現場までの往復費用）
- 福利厚生費（ジムやマッサージなどの利用料）
- 営業サポート費（案件紹介の手数料）
- 通信費用（業務用スマートフォンやWi-Fi料金）
- 社内ツール費用（メールやSlackなどの利用料）
例えば、還元率80%で還元額が56万円と提示されていても、そこから交通費2万円、福利厚生費1万円、営業サポート費3万円が差し引かれると、実際の給与は50万円になります。求人票や面接では、還元率の内訳を詳しく確認し、どの経費が含まれているのかを明確にすることが重要です。
想定年収が水増しされている
高還元SES企業では、給与が契約単価に還元率を掛けた金額で決まる仕組みです。そのため、内定時には確定した年収ではなく、想定される契約単価をもとに算出した「想定年収」が提示されます。
想定年収の水増しが問題になる理由は以下のとおりです。
| 問題点 | 詳細 |
|---|---|
| 営業力に見合わない単価設定 | 企業の営業力や取引先の規模に対して 非現実的に高い契約単価で計算している |
| 市場相場を無視した計算 | エンジニアのスキルや経験に対して 市場相場よりも高い単価で想定している |
| 最低保証がない | 想定年収のみ提示され 最低保証年収の記載がない |
| 入社後に大幅ダウン | 実際の案件では想定より低い単価になり 年収が100万円以上下がるケースもある |
想定年収はあくまで「想定」であり、確定した金額ではありません。内定通知書には最低保証年収が明記されているか確認し、想定年収だけで判断しないよう注意しましょう。
案件待機中の給与が賞与から差し引かれる
SES企業では、プロジェクト終了後に次の案件が決まるまでの待機期間が発生することがあります。一般的なSES企業では、待機期間中も給与は100%支給されますが、一部の高還元SES企業では待機期間中の給与を賞与から差し引く仕組みを採用しています。
待機期間中の給与に関する問題点は以下のとおりです。
- 待機期間が1ヶ月発生すると賞与が40万円減額される
- 待機が長引くと年間の賞与がゼロになる可能性がある
- 待機期間は最低賃金しか支払われない企業もある
- 有給休暇を多く取得すると給与が減額される
高還元を実現するために、待機期間中の給与を削減する仕組みを導入している企業も存在します。面接時には、待機期間中の給与がどのように扱われるのか、賞与から差し引かれることがないか必ず確認しましょう。
SES企業で高還元をうたう企業に潜むリスク
高還元SES企業は給与面で魅力的に見えますが、還元率を高める代わりに他の部分でコストを削減しているケースが多く見られます。その結果、エンジニアにとって不利な状況が生まれるリスクがあります。
高還元SES企業に潜むリスクとして、以下の3つがあります。
- 待機期間中の給料が保証されない
- 営業力がなく単価が低い
- 福利厚生やサポート体制が不十分
これらのリスクを事前に把握しておくことで、転職後の後悔を防ぐことができます。以下では、それぞれのリスクについて詳しく解説していきます。
待機期間中の給料が保証されない
高還元SES企業では、案件に参画していない待機期間中の給与保証が不十分なケースが多く見られます。一般的なSES企業では待機期間中も給与は100%支給されますが、高還元SES企業では待機が収入に直結するリスクがあります。
待機期間中の給与に関する問題は以下のとおりです。
| 問題の種類 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 無給の待機期間 | 案件が決まるまで給与が一切支払われない |
| 最低賃金のみ支給 | 待機期間は月15万円〜20万円程度しか支払われない |
| 休職扱い | 待機期間は休職として給与の60%しか支払われない |
| 賞与への影響 | 待機期間が長いと賞与がゼロになる |
| 退職への圧力 | 待機が長引くと自己都合退職を促される |
SESエンジニアは客先常駐で働くため、案件終了後に次の案件が決まるまでの待機は避けられません。高還元という言葉だけで判断せず、待機期間中の給与保証が100%あるか必ず確認しましょう。
営業力がなく単価が低い
高還元SES企業の中には、営業活動を簡略化することでコストを削減し、その分を還元率に回している企業があります。しかし、営業力が不足すると契約単価が低くなり、結果として高還元でも手取りが少なくなる問題が発生します。
営業力不足による問題点は以下のとおりです。
- 営業担当者がいないため商流が深い案件しか獲得できない
- 4次請け5次請けの案件が多く契約単価が30万円〜50万円程度
- 直請けや2次請けの高単価案件が少ない
- 代表や主要メンバーがSES業界未経験の素人社長
- エンジニア自身が営業活動を行わなければならない
還元率が80%でも、契約単価が40万円であれば給与は32万円にしかなりません。一方、還元率60%でも契約単価が80万円あれば給与は48万円になります。高還元という言葉だけでなく、企業の営業力と案件の質を確認することが重要です。
福利厚生やサポート体制が不十分
高還元SES企業では、エンジニアへの報酬を優先するために福利厚生やサポート体制を削減している場合があります。その結果、エンジニアが自己負担や自己責任で対応しなければならない場面が増え、負担が大きくなるリスクがあります。
福利厚生とサポート体制の不足による問題は以下のとおりです。
| 不足する項目 | 具体的な問題 |
|---|---|
| 社会保険 | 最低限の加入のみで 健康診断や年金が手薄 |
| 研修制度 | スキルアップのための 研修や資格取得支援がない |
| 営業サポート | 営業担当者がいないため 案件探しを自分で行う必要がある |
| キャリア相談 | キャリアアドバイザーがおらず 相談できる相手がいない |
| トラブル対応 | クライアントとのトラブル時に 直接交渉しなければならない |
一般的なSES企業では、営業担当者がエンジニアとクライアントの間に立って調整を行うため、問題が発生した際にもすぐに対応できる体制が整っています。しかし、高還元SES企業ではコスト削減のために営業サポートを最小限にしていることが多く、エンジニアが直接クライアントと交渉しなければならない状況が発生しやすくなります。
SES企業の高還元が嘘ではない優良企業の見極め方
高還元SES企業の中には、誠実に還元率を計算し、エンジニアを大切にする優良企業も存在します。しかし、求人票だけでは優良企業と悪質企業の区別がつきにくいため、転職前にしっかりと見極めることが重要です。
優良な高還元SES企業を見極める方法として、以下の3つがあります。
- 還元率の計算式を確認する
- 待機期間中の給与保証を確認する
- 営業力と案件の質を確認する
これらのポイントを面接時に確認することで、入社後のミスマッチを防ぎ、安心して働ける環境を選ぶことができます。以下では、それぞれの見極め方について詳しく解説していきます。
還元率の計算式を確認する
優良な高還元SES企業を見極めるためには、還元率の計算式を明確に説明できるか確認することが重要です。還元率の数字だけでなく、どのような項目が含まれているか、総支給額ベースで何%になるかを具体的に聞くことで、企業の誠実さを判断できます。
面接時に確認すべき質問は以下のとおりです。
- 還元率の計算に会社負担分の社会保険料は含まれていますか
- 交通費や福利厚生費は還元率に含まれていますか
- 営業サポート費や通信費は別途差し引かれますか
- 総支給額ベースでの実質的な還元率は何%ですか
- 給与明細のサンプルを見せていただけますか
誠実な企業であれば、これらの質問に対して明確に答えることができます。逆に、曖昧な回答をしたり、詳細な説明を避けたりする企業は注意が必要です。また、ホームページや求人票に還元率の計算式が公開されているかどうかも、企業の透明性を判断する材料になります。
待機期間中の給与保証を確認する
SESエンジニアは客先常駐で働くため、プロジェクト終了後に次の案件が決まるまでの待機期間が発生する可能性があります。優良な高還元SES企業を選ぶためには、待機期間中の給与が100%保証されているか確認することが重要です。
待機期間中の給与保証に関する確認項目は以下のとおりです。
| 確認項目 | 優良企業の基準 |
|---|---|
| 待機期間中の給与 | 給与100%支給 |
| 待機期間の平均 | 1ヶ月以内 |
| 待機期間の上限 | 最長2ヶ月程度で明確に規定 |
| 賞与への影響 | 待機期間が賞与に影響しない |
| 待機中のサポート | 営業担当が次の案件を積極的に探す |
待機期間中の給与が100%支給されない企業は、エンジニアに不利な条件を課している可能性が高いため避けるべきです。また、待機期間の平均や上限についても確認し、長期間待機させられるリスクがないか確かめましょう。
営業力と案件の質を確認する
高還元SES企業を選ぶ際には、営業力があり、高単価で質の高い案件を獲得できている企業かどうかを見極めることが重要です。営業力がない企業では、商流が深い低単価案件しか紹介されず、高還元でも手取りが少なくなる可能性があります。
営業力と案件の質を確認する方法は以下のとおりです。
- 営業担当者が何人在籍しているか確認する
- 代表や主要メンバーがSES業界での経験があるか確認する
- 直請けや2次請けの案件がどれくらいあるか確認する
- 面接時に自分のスキルに合った案件を見せてもらう
- 案件の契約単価の相場を質問する
- 取引先企業の規模や業種を確認する
営業担当者がいない企業や、代表が業界未経験の素人社長である場合は、営業力が不足している可能性が高いです。また、面接時に「私と同じスキルの人であれば、どのような案件がありますか」と質問し、その場で具体的な案件を見せてもらうことで、企業の営業力を確認できます。
