SESにおける労働者派遣事業許可番号の意味
SES企業への就職や転職を検討する際、企業の公式サイトや求人票に「労働者派遣事業許可番号」が記載されているのを見て、不安を感じる方は少なくありません。SES企業なのに派遣の許可番号があることは、必ずしも派遣社員として働くことを意味するわけではありませんが、企業の事業内容や契約形態を理解する上で重要な情報となります。
労働者派遣事業許可番号とSESの関係について、以下の3つの観点から理解することができます。
- 労働者派遣事業許可番号とは何か
- SES企業で労働者派遣事業許可番号が必要なケース
- 許可番号があっても正社員雇用は可能
各観点について詳しく解説していきます。
労働者派遣事業許可番号とは何か
労働者派遣事業許可番号とは、労働者派遣法に基づいて厚生労働省から労働者派遣事業を行うことを許可された事業者に与えられる番号のことです。この番号は、事業者が正式に登録され法律に従って適切に事業を運営していることを示す重要な証明となります。
許可番号の形式は以下のようになっています。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| 表記例 | 派13-312755 |
| 最初の数字 | 都道府県労働局を示す番号 13は東京都を意味する |
| 後半の数字 | 事業者ごとに割り当てられる固有の番号 |
日本で労働者派遣事業を行うには厚生労働省に申請して許可を受ける必要があり、無許可で派遣事業を行った場合は1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されます。許可番号は派遣する労働者の契約書や企業の公式サイトに明記することが求められており、利用者や派遣労働者に対して正式な派遣事業者であることを証明する役割を果たします。
SES企業で労働者派遣事業許可番号が必要なケース
SES契約と労働者派遣契約は法律上異なる契約形態ですが、多くのSES企業が労働者派遣事業許可番号を取得しています。これはSES事業だけでなく派遣事業も行っている、または契約形態を柔軟に選択できるようにしているためです。
SES企業が労働者派遣事業許可番号を取得する主な理由は以下のとおりです。
- 複数の契約形態に対応するため
- クライアントのニーズに応じて派遣契約も提供するため
- 偽装請負を指摘された際の言い訳として利用するため
- 事業の幅を広げて収益機会を増やすため
厚生労働省の調査によれば、エンジニアに客先常駐をさせているIT企業の割合は9割に上ります。SES契約では指揮命令権が派遣元企業にあるのに対し、労働者派遣契約では指揮命令権が派遣先企業にあるという違いがありますが、実態としては両者の境界が曖昧なケースも存在するため、多くのSES企業が両方の許可を持つことで柔軟な対応を可能にしています。
許可番号があっても正社員雇用は可能
労働者派遣事業許可番号を持つSES企業に就職しても、必ずしも派遣社員として働くわけではありません。正社員として雇用契約を結び、客先常駐する形態も一般的に存在します。
雇用形態と契約形態の関係は以下のように整理できます。
| 雇用形態 | 働き方 |
|---|---|
| 正社員雇用 | SES企業と正社員として雇用契約を結ぶ 客先常駐するがSES企業の社員のまま |
| 派遣社員 | 派遣元企業と雇用契約を結ぶ 派遣先企業の指揮命令下で働く |
| 無期雇用派遣 | 派遣元企業と期間の定めのない雇用契約 派遣先企業で働くが派遣元の社員 |
求人票や採用時の契約書に「正社員」と明記されている場合は、労働者派遣事業許可番号があっても正社員として雇用されることになります。ただし契約内容によってはSES契約か派遣契約かで働き方が変わるため、入社前に雇用形態と契約形態の両方を確認することが重要です。実際にはSES契約として正社員雇用されたにもかかわらず、現場で派遣先企業から直接指示を受ける偽装請負が横行しているケースもあるため、入社後も現場の実態を注意深く確認する必要があります。
SES企業で労働者派遣事業許可番号を確認する方法
SES企業への就職や取引を検討する際には、その企業が労働者派遣事業許可番号を持っているかどうかを確認することで、事業内容や契約形態をより正確に把握できます。許可番号の確認は複数の方法で行うことができ、それぞれの方法には特徴があります。
労働者派遣事業許可番号を確認する方法として、以下の3つの手段があります。
- 厚生労働省の人材サービス総合サイトで検索する
- 企業の公式サイトで確認する
- 許可番号の見方と意味
各方法について詳しく解説していきます。
厚生労働省の人材サービス総合サイトで検索する
厚生労働省が提供する人材サービス総合サイトは、労働者派遣事業の許可を取得している全ての企業を検索できる公式データベースです。大手企業から零細企業まで、許可を持つ全事業者が登録されているため、最も信頼性の高い確認方法となります。
人材サービス総合サイトでの検索方法は以下のとおりです。
- 厚生労働省の人材サービス総合サイトにアクセス
- 労働者派遣事業所検索のページを開く
- 企業名または許可番号で検索
- 検索結果から該当企業の詳細情報を確認
このサイトでは企業名や許可番号だけでなく、所在地や事業内容からも検索が可能です。検索結果には許可番号、許可年月日、有効期間などの詳細情報が表示されるため、企業が現在も有効な許可を持っているかを確認できます。サイトは毎週日曜日の22時から翌朝8時まで定期メンテナンスが行われるため、この時間帯以外にアクセスすることをおすすめします。
企業の公式サイトで確認する
多くのSES企業は、自社の公式サイトに労働者派遣事業許可番号を掲載しています。企業概要やニュースリリース、会社沿革のページに記載されていることが一般的で、簡単に確認できる方法の一つです。
企業の公式サイトで確認する際のポイントは以下のとおりです。
| 確認場所 | 内容 |
|---|---|
| 企業概要ページ | 会社の基本情報とともに 許可番号が記載されていることが多い |
| ニュースリリース | 許可番号取得のお知らせとして 取得日や番号が公開される |
| 会社沿革 | 事業の歴史の中で 許可取得年月日が記載される |
| フッター部分 | ページ最下部に 許可番号が小さく記載される場合がある |
企業の公式サイトに許可番号が記載されていない場合は、労働者派遣事業の許可を持っていない可能性があります。ただしSES事業を行う企業は必ずしも派遣事業の許可が必要ではないため、許可番号がないからといって違法とは限りません。SES契約として請負や準委任の形態で事業を行っている企業も存在するため、許可番号の有無だけでなく事業内容や契約形態を総合的に確認することが重要です。
許可番号の見方と意味
労働者派遣事業許可番号には一定のルールがあり、番号を読み解くことで企業の所在地や許可取得時期を推測できます。番号の構造を理解することで、企業の事業実態をより深く把握することが可能です。
許可番号の構造と読み方は以下のように整理できます。
| 番号の構成要素 | 意味 |
|---|---|
| 派 | 労働者派遣事業であることを示す |
| 都道府県番号 | 01から47までの数字で都道府県を示す 例:13は東京都、27は大阪府 |
| 事業者番号 | ハイフンの後の6桁の数字 許可された順番に付与される固有番号 |
例えば「派13-312755」という許可番号の場合、13が東京都を示し312755が事業者固有の番号であることがわかります。許可番号は一度交付されると企業が存続する限り変わりませんが、本社移転や代表者変更などで更新が必要な場合があります。また有効期間は許可年月日から3年間または5年間と定められており、期限が切れる前に更新申請を行う必要があります。許可番号を確認する際は番号だけでなく有効期間も併せて確認することで、企業が現在も適切に事業を運営しているかを判断できるでしょう。